第44話 <イリヤが暴走です!>
あー、疲れた。
思った以上にあの馬鹿相手に魔力を使ってしまったみたい。
でも、ここまで大きく消耗することはないと思うんだけどね。
多分だけど、あいつ何か特別な力があるんじゃないかな。そうじゃないとゲイルアッパー以外は実は少し加減していた私がここまで魔力を減らすなんてあり得ないもん。
きっと勇者専用の特殊能力だろうね。こんなだるい思いをするなら二度と戦いたくないしもう問題とか起こさないことを祈るばかりだ。
「あ。リリ様お帰りなさいませ! リリ様宛にお荷物が届いていますよ!」
「荷物? どれどれ……」
リコレットさんに渡された小包を確認してみる。
おっ。ペルスティアの冒険者ギルドからの贈り物だ。
えーと……金等級の冒険者に日頃の苦労を労うために贈り物。
ギルドってこんなことまでやってるんだ。ビックリ。
中身は……甘い香り。
「チョコレートなんだ」
「リリ? それは?」
「ああイリヤ。これ、ペルスティアから送られてきたチョコレートだよ」
箱を覗き込んできたイリヤに渡してあげる。
箱から察するに高級チョコだから今食べたいけど、ご飯の前だし……なによりお風呂入りたいっ!
「ごめんイリヤ。それ、私の部屋に置いてきてくれない? あと、悪いんだけど着替えも持ってきてもらえると助かる」
「分かりました」
「あっ、そのチョコ先に食べてもいいからね! 感想聞かせてよ」
イリヤにいろいろとお願いして私は一足先にお風呂へ。
途中、リリスがふわふわと私の頭の上に着地して丸くなったから、抱き抱えてお風呂に連れていくことにした。私自ら洗ってあげようぞ!
お風呂場に行ってリリスを解放してやる。
リリスは、小さく鳴いた後に浴室に繋がる扉を開けた。自分専用の桶まで持ってさっさと入っていく。
イリヤを待とうかと思ったけど、私も入ろうかな。早くあったかいお湯に気持ちよく浸かりたいし。
服を脱いで洗濯用の籠に放り込む。
と、下着も脱いで裸になったところでお風呂場の扉が開いた。
「あ、イリヤやっと……来た……んだ……?」
なんか、ちょっとフラフラしているイリヤ。
顔も少し赤いし、もしかして風邪を引いた? でも、そんな風邪引くようなことイリヤはしていないように思ったのだけど。
てか、イリヤさん? 私の気のせいかもしれないけど、私の服をクンクンしてませんか?
「おーい。イリヤ大丈夫?」
「あ、リーリぃ」
服を畳んで置くと、甘えたように抱きついてきたんですけど!?
え? え!? ほんと何が!?
「イリヤどうしたの!?」
「にへへぇ……大好きですよリリぃ」
驚く私を無視して唇に柔らかいものが押しつけられる。
イリヤにキスされたんだと遅れて理解し、急に私まで恥ずかしくなってくる。
……って!
「甘い味に……この症状……あのチョコさてはお酒入ってたわね!?」
アルコール入りチョコで酔っ払う人なんて初めて見たかも。
これはイリヤが弱いのか、止まらなくてたくさん食べちゃったのか。
どちらにせよ、このままだと私の貞操の危機な気がする! どうにか落ち着いてもらわないと……。
でも、イリヤの暴走は止まらない。
キスだけで飽き足らず、置いていたタオルの上に押し倒された。
唇をずっと押しつけられ、優しい手つきで胸を揉まれちゃう。なんか、触り方がいやらしいから変な声が出そう……っ。
頭がふわふわしてくる。口の中を丁寧に舐められて体を密着されて、敏感な部分を刺激される。
「ちょっ! イリヤぁ……それ以上は……!」
「好き。大好きですリリ……っ」
ようやくイリヤが顔を離してくれた。
と、思ったら終わりなんかじゃなかった。イリヤの顔は段々と蕩け、私の下腹部のさらに下に向かっていく。
それはさすがにダメだ! そこはベッドの上でしてほしい!
でも、イリヤの吐息がおへそに吹きかけられて……
「す……」
「す?」
「“スリープ・アウト”ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
強制催眠魔法スリープ・アウト。
イリヤには悪いけど、この魔法でしばらく眠ってもらうことにするね!
至近距離から魔法の直撃を受けたイリヤは一瞬で眠りに落ちた。
あっぶなーい。このままだといろいろと大変なことになるところだった。
この先を期待していなかったといえば嘘になるけど、さすがに場面を考えないと大惨事になる。
額の汗を拭って一息つくと、どこからか視線を感じた。
「みゃっ!」
「……覗き見してたんだ。助けてくれても良かったんじゃないの?」
「みゃあ~……みゃあっ」
頭を掻くような仕草を見せて、リリスがお湯に飛び込んだ。
飼い主に似るとはよく言ったものね。リリスが私そっくりになってる。
さて、イリヤはどうしましょうか。このままここに寝かせておくのも悪いし、ベッドに運んであげないと。
でもねぇ、私今は裸だから外に出たくないし、もう一度服を着るのも面倒だし……。
うーん……仕方ない! バスタオルを体に巻けば問題ないでしょう!
さっさとタオルを巻いて、イリヤを抱きかかえて部屋に戻らないとね。
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