第20話 <誕生日パーティー!>
夜、家族揃って誕生日パーティーが開かれた。
他の貴族はこういう日に他の貴族を呼んで大きなパーティーにするみたいだけど、我が家はそうしない。でも、普段屋敷で働いてくれているメイドさんや騎士の人たちと一緒に楽しむんだ!
料理はすべてペルスティア産の食材を使っている。海鮮に野菜にお肉! なんでもあれの我が家は最高だね!
オレンジジュースを片手に歩く。今夜のもう一人の主役とお話ししようかな。
「ねぇイリヤ。楽しんでる?」
「もちろんです。リリはどうですか?」
「最高。うちの関係者しかいないと気楽なもんだねぇ」
変に着飾ったり、礼儀なんかに気を配らなくて良いから楽なのよ。
クスクスと笑うイリヤ。だってさぁ、いろいろ気をつけようとしたら肩こるじゃない。
さて、そろそろプレゼントでも渡そうかな。ちょっといたずらっぽくね。
「イリヤ嬢。渡したいものがあります」
「ふぇ!? どうしたんですいきなり!」
いつか使うかもと思ってふざけて練習した低音ボイス。驚くイリヤの目の前でネックレスを箱から取り出す。
「誕生日プレゼントです。イリヤを想って選びました。どうぞ受け取ってください」
「リリ様……! ありがとうございます……ッ!」
私がイリヤの首にネックレスをかけてあげると、大きな拍手が巻き起こった。これ、指輪とかなら結婚の流れよね。
なんだか私も照れてきちゃう。そっと顔を背けると、イリヤも小さな箱を取り出した。
何やら見覚えがあるわね。これ、私がネックレスを買ったあの店のマーク……。
イリヤが箱を開けた。出てきたのは、大きなダイヤがはめられた美しい指輪。
「私からも誕生日プレゼントです。いつもお世話になってます」
「すごい……! でもこれ、高くなかった? 嬉しいけど、無理してないの?」
「冒険者としてリリ様に付いて稼いだお金とアルフレッド様からのお給金があるので問題ありませんでした。それに、私が稼いだお金はリリ様のために使いたかったので」
イリヤが私の手を取った。お父さんとグラハムさんの温かな視線を受けながら指輪を着けてくれる。……左手の薬指に。
この指に着けた指輪が意味するのは、「あなたを愛しています」というのがこの国での意味。日本のように永遠の愛ではないけど、ニュアンスはほとんど一緒ね。
指で煌めくダイヤをシャンデリアにかざして、イリヤに飛びついちゃう。ほんと、イリヤだーいすき!
その後、ジュースを飲みながらしばらく談笑する。すると、お母さんとお姉様がやって来た。
「リリ。イリヤちゃん。少しお話があるの」
「はい」
「なに? それって今夜話すつもりだったもの?」
「ええ。今ここで皆に聞いてもらうわ。リリへのお説教はその後部屋でじっくりとね」
「うぐっ! それはご勘弁……」
黒い笑顔を残してお母さんが全員の注目を集めた。
「少し聞いてちょうだいね。リリとイリヤちゃんはもうすぐ国立学校に入学することになる。そこでしばらくこの屋敷を離れるわけだけど、入れ違いで私がこの屋敷に帰ってくるわ!」
「え?」
「そういうことよ。リリとイリヤちゃんはエスナと一緒に暮らすの。ちゃんと向こうでもメイドさんを雇っているから安心なさいな」
「いや、そういうことじゃ……」
「これはもう決定よ。さぁ、パーティーの続きを楽しんで!」
マジですか。お母さんと私たち入れ違いになるんだ。
まぁ、私たちが入学したらお父さんが一人寂しく屋敷に残るもんね。だからお母さんが屋敷にいるのは分かるけど。
なんか、お母さんと一緒に過ごす時間がほとんどないな。ちょっと寂しいかも……。
……いや、待って? 私の素行を思い返すと……お母さんが一緒だと毎日小言が煩いのでは……。
寂しいけれど、うん。夫婦仲よくごゆっくり! 弟でも妹でもできるといいね!
「リリが何を考えているのか、なんとなく分かってしまいますね」
「リリは単純だからね。すぐ顔に出るんだよ」
小さな声で言ってくるイリヤとお姉様。事実だけど、うるさいよ。
その後も楽しく続く誕生日パーティー。さて、今日から私も十六歳です。
冒険者としての活動制限の一部が解禁されるし、学校も始まる。他にもいろいろと楽しみが尽きない予感!
さぁさぁ、盛り上がって参りましたー! 私はこれからも変わらず通常運転で走って行きます!
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