朝から新入り!?

あれから俺は前よりも言葉遣いを意識して生活をしてみたものの……


「お、お、お前……! なんで俺の弁当食ってんだよ! 今から学校行くっつってんのに! お前は今日のポテチなしだ!」


「うぁーん、あたしキス魔だからそんなこと言われたら死んじゃいますよぉ~」


この通りだ。

お前はキス魔の中でもメンタルが強いやつじゃなかったのか?

にしても俺はこいつ以外のキス魔には出会ったことがないからどんなもんかは知らない。


「はいはい、今日のところは許してやってもいい。これからそんなに俺の弁当が食いたいと言うなら俺が毎日作ってってやるから」


「え! それは嬉しいな~! ベツニアンタノリョウリガオイシイカラタベタイトカイッテナイシ!」


俺は冗談のつもりだが……。

どうもこいつには冗談が伝わらないようだ。


「ほほう、お前がそんなに俺の料理が食べたいなら仕方ないなぁ……」


俺は鼻の下を擦る動作をしてわざとからかうように言ってみた。


「もぉーっ! あんたはなんで聞いていなくていい所まで聞いているのよー! バカねっ! ふんっ!」


俺の料理が美味しくて食べたい発言をあっさり認めてくれた。

やはり、からかってみてしまえばこいつの可愛いところは沢山見れるものだ。


すると、開けていた部屋の窓からなにかが飛んできた。



〝チュッ〟



これはもしかしてショコラと同類のやつが新入りしに来たのではと瞬間察知した。

だが、やはり……


「は……?」


声を出して驚いてしまうのには変わりない。


「き、貴様は……!」


けれども今回はショコラも驚く。

やっとこいつも俺の気持ちがよくわかっただろう。

そう感心していると……


「あら~! ショコラさん最近見ないと思ったらこんなところにいたんですか!」


こいつが驚いている理由は俺と違っていることに気づいた。


「もしかしてお前ら知り合いなのか……?」


「知り合いと言ってもただの幼なじみだ!」

「ショコラさんとは幼い頃からの親友です!」


2人の声が揃った。

けれども言っていることがそれぞれバラバラだ。そこには触れないでおこう。


「で、お前は誰だ?」


「お、お前なんてへぇぇぇぇ………」


!?

ショコラの知り合いと思われる少女はふにゃふにゃとして倒れ込んだ。


「あんた! この子はあたしのように強いキス魔では無いのよ。もう少し言葉を考えなさい。」


「す、すまん……」


「それはあたしじゃなくてこの子に言ってやれ」


「驚かせちまってごめんな。もっかい聞き直すぞ。君の名前を教えてくれ」


「私の……名前はシフォン……です!」


シフォンちゃんは頬をほんのりピンクに染めて、ふわふわとしたミルクティーのような色の髪を指でくるくるとさせている。

これは可愛い。

正直俺は小悪魔よりも悪魔よりも天使の方がこのシフォンちゃんには似合うのでは?と思った。

それよりキス魔はみんな美味しそうな名前をしてんのか?


「失礼だがシフォンちゃん今日俺の夢に出てきたか?」


「いいえ、出てきませんでしたよ!」


シフォンが何事も無いかのような表情でそれを言った。

ショコラから聞いた事と話が食い違ってるぞ……?


「シフォン……? あなたどういうこと?」


どうやらショコラも分からないようだ。


「わ、わたしっ! 実は……。ショコラさんよりも先にカンタさんの夢に出てきたことがあったのですよ。ですが……、恥ずかしくてなかなかお顔合わせが出来なくて……気づいたら13年もの月日が経っていて……」


お、俺流石に3歳の頃の夢なんて覚えてないぞ……。

でもそういうことなら納得だ。


「ふっ、シフォンらしいわね」


「そして、私は13年間雑草食をしていたのでお腹がペコペコです……」


「よしっ、弁当の残りのおかずでも食べてけ」


「あんたは相変わらず、嫌な男ね。可愛い子にだけ優しくしてっ」


残念だがお前も充分かわいいぞ。

世間的に見ても超美女だぞ?


「別にそんなことはねーぞ! 俺もお前が菓子を盗み食いしなければもっと優しくしてやるぞ?」


「あらら、ショコラちゃん盗み食いなんていけませんよ!」


「あっちの世界でだってさほど変わらなかったじゃない! あたしは、そういう人だっ!」


まるで姉妹のような2人の会話に少々癒されていたらもう、8時20分だった。


「やっべぇ! あと10分しかねぇ! 俺、学校行ってくる! じゃあな!」







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