隣り合う神様

直弥

1

 人なんて勝手なもんで、日照が続けば雨を降らせろ。長雨が続けば日を出せと、神さんたちも困るってもんですよ。


「いつまでも脳天気に日を出してるつもりだ陽愛ひより。江戸の奴らを干瓢にでもするつもりか?」


雨天うてんこそ油売ってないで仕事したら?それとも雨を降らす力がないから助けて欲しくてお願いにでも来たのかしら?」


 さらに人は困ったもんで、お天道さんを導く神さんと雨を鎮める神さん二つを隣同士なら相乗効果が生まれるとかなんとか。


手前勝手に人が祀っちまったが、二人の神さんは性格も正反対。仲が悪いこと悪いこと。


「違う! 雨乞いの声が煩くてゆっくり昼寝が出来ないからだ!」


「やっぱり怠けてるんじゃない。私に難癖つける前にやることやってよ!」


 二人の神さんが言い合いをはじまると、お天道さんがこれでもかと日を注ぎ、そのすぐ後に稲妻が走り江戸の町をものすごい勢いで濡らしはじめた。


これのなにが、てーへんか? 喧嘩するとお互い加減てもんがない。


 ときには、へそを曲げた陽愛が酷い日照をもたらす。その逆もしかり、今回は雨天の怒りでこの突然の雷雨。


 江戸の町にやっと降り出した雨に歓喜してた人々も、そのうちに顔が曇り出す。


 江戸の町人達は雨天神社の神さんが陽愛神社の神さんと喧嘩したと囁き二つの境内を参りに行く。


――早く仲直りしてください。


 そうすりゃ、神さんたちも登った血が降りてくるってね。ただ、人は知らないことがあったんだ。


 江戸の天気を毎日、神さんたちが決めているわけじゃないってこと。神さんは人が困っている時にちょっと手を貸してくれる存在だってことを。

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