瑞希童話

瑞希 涼

第1話、カレーの反乱

むかし、むかしのことじゃった


ある一軒の飯屋でな

勃発が起きたのじゃ

「オラのお陰でこの店が成り立ってんじゃ!

明日からはな、この店をカレー専門店にするのじゃ!!!」

他のモノも驚いた

いきなりのことじゃったからな


カレーは前々から不服に思っていた

(なんでオラは人気あるのに麺類と同じ位置なんじゃ?)

オラは人気ある、老若男女にな

人間は皆オラのこと好いてるだよ

子供は牛乳を少し入れて甘くするし

大人は色んなもの入れるだよ

まさかオラも

チョコレートやコーヒー入れられるとは想像もつかなかったけど

深み、隠し味と色んな姿に変えられる

そんな自分のお陰でこの店は成り立っている

それなのに自分は他の麺類と同列にされている

我慢できない

自分は他よりも優遇されて

しかるべき働きをしているのに!


カレーが自己主張をしてきた

他の誰よりも自分が一番人気あるのだから

当然の理由だと力説した


「カレーはん、何をそんなにいきり立ってはるんや?」

とぼけた顔したきつねうどんはん

カレーさんにのんびり言ってきた

「そうじゃよ、カレーさん、

どうしたんじゃ?お前さんだけじゃ大将も困るじゃろうに」

天麩羅そばさんも、のんびりした口調であるが

あきらかに迷惑そうに言ってきた

「うっさい、うっさい、お前ら麺類は単品では出番ないじゃろが!

必ず他のオカズか飯がセットじゃろ1

オラは単品で、ぶっちぎり人気なんじゃよ!文句を言うな!」


はてさて、飯屋の大将は困った

今更、この店をカレー専門店にしても

はたしてニーズがあるかどうか不安じゃった

そして、この飯屋の常連客はあきらかに肉体労働者ばかり

昼飯は不足した塩分を補充しに濃い味付けが好まれるし

昼からビールをひっかけていくお客さんも多い

夜は圧倒的に飯よりもビール飲んでいくお客さんが多かった

カレーが人気あるのは昼間だけ

夜の営業ではカレーだけが人気あるわけではなかった

だからこの店を定食屋からカレー専門店には出来ぬ話しであった


「あのな、カレーさん、

わしもこの店を定食屋からカレー専門店にするのは無理があると思うぞ」

店主は人気メニューのカレーさんに遠慮しながら静かに答えた


店主のその言葉を聞いたカレーさんはブチ切れた


「おおそうかい!そうかい!じゃ明日からオラは出ないぞ!

覚悟しとけよ、親父!!!」


さて親父は困った

確かにうちの店の人気メニューはカレー

昼間のお客さんもカレー好きな人が多い

そこでカレーに出ない宣言されたら困る

だけどカレー専門店にするわけにもいかん

この店の土地柄は肉体労働者ばかり

誰がシャレオツな専門店なんかで飯食うかいな、、



「おい、田舎もんのカレーどんよ、

お前さん、何いきがってんだよ」

「なんだど!!、誰がオラのこと田舎もんって言っただ!!」

「俺だよ」カツ丼さんが静かに答えた


カツ丼はこの定食屋でカレーと共に労働者の注文が多い人気メニュー

「オラは洋食ぞ!!お前はダサい丼もんやろうが!!」

「バーカ、俺の本体は洋食のトンカツだよ。ランチにもなるし、丼にも化けるし

お前さんとのコラボでオメーを引き立たせることも出来んだよ」

「ぐぬぬぬ…」カレーさんは悔しがった

「それによ、オメーは和風出汁で麺類にも化けることが出来るだぜ、

オメーは洋食と言っても正真正銘な、

じゃがいもゴロゴロのメイドインジャパンカレーなんだよ 笑」


カレーさんは泣きながら敗北を認めた


翌日、またカレーさんの声が聞こえてきた


「オラが上だよ!!」

今度はカツカレーの立ち位置争い

カレーがカツの上にかかるべきだと

カレーさんは上位を主張する

それを聞いたトンカツさん

静かに答えた

カレーとトンカツを一緒の皿にのせるのは肥臭い田舎もんの発想

都会ではライスの上にトンカツを乗せて

カレーは別皿で提供すると答える

そこですかさず、きつねうどんはんがチャチャ入れる

「ほほほ、そうやで、カレーうどんも蕎麦もな

カレールーは和風出汁に混ぜられて上から麺が入るんやで 笑」


「うっさい!!!!」


カレーさん

今日も泣いたり怒ったりと

忙しい1日になりそうじゃ




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