マルコポーロの異世界見聞録

第1話プロローグ 終わりと始まりの日

ヴェネツィア共和国の商人として冒険家でもあった私(マルコ・ポーロ)が、西暦1271年から24年間にわたってアジアをめぐった全行程、約15000kmの旅の記録した書物「東方見聞録」をご存じの方は多いであろう。


あなた達の国、日本を黄金の国、ジバングと呼びヨーロッパにその存在を知らしめたのも私、マルコポーロである。


東方見聞録を執筆後、私は故郷のヴェネツィアで家族と余生を過ごし天国へと飛びだった。


死の直前、不思議と私はあの冒険の前のようなウキウキとした気分を感じていた。


直観が私に死が新たな冒険の始まりであることを告げていたのである。

そしてそれは、正しかった。

気付けば私は「異世界」なるものに飛ばされていた。

冒険好きの私はそこでも「異世界見聞録」なるものを執筆した後、その世界の静かな村で余生を過ごして静かに老衰で逝った。


「異世界」での冒険に満足した私は今世ではもう冒険を望んでいなかった。

なので今世では恵まれた国、日本でニートをやっている。

暇を持て余している私の趣味はネット小説を読むことである。

しかし最近のネット小説はどうだ?

偽の異世界物ばかりじゃないか。

しかもそのどれもがチートだのハーレムなど、自分達のご都合主義の甘ったれた異世界ばかりである。


はっきり言おう。「君のための異世界」など、どこにもない。

君だけが無敵な世界など存在しないし、君だけが女にモテモテの世界など存在しない。


異世界に存在する人々は、私達の生きるこの世界と変わらない「今を必死で生き抜く人々。」である。

彼らは転生者を喜ばせるために生きているわけではないし、モンスターもあなたの経験値のために存在しているわけではない。


もしも貴方が「異世界」を現実逃避の一つとして考えているなら、これから私が綴る「異世界見聞録~日本語改訂版」を読んでもらえればきっと考えを改めるだろう。


筆者の冒険談を通じて、異世界の住人達の確かな息遣いと、彼らの生き生きとした日々の営みを感じてもらえれば、それは筆者にとってこれ以上ない幸せである。


                         by マルコポーロ(現ニート)







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