ベストゲノム!
渋谷かな
第2話 ベストゲノム
「桜ちゃん、俺と俺と付き合って。」
男と女がいる。
「嫌よ。」
恋の話をしている。
「どうして?」
「だって、一郎くんの遺伝子が弱いんだもの。」
女が男を選ぶ基準は、顔でも、お金でも、学歴でもなく、遺伝子だった。
「ガーン!」
ショックを受ける男。
(遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い! 遺伝子が弱い!)
走馬灯のように男の脳みそを駆け巡る。
「よし! 俺は遺伝子を強くするぜ!」
しかし、前向きな男の欲望はショックを乗り越えた。
「そして、桜ちゃんをゲットだぜ!」
これが今時の小学1年生の会話である。
「俺はベストゲノムになってみせる!」
主人公、佐藤一郎。7才の小学一年生。彼の使命は大好きな同級生の鈴木桜ちゃんをゲットすることだった。
「私が欲しいのは最高の遺伝子! 最高の遺伝子を持った彼氏をゲットすることよ!」
ヒロイン、鈴木桜。7才の小学一年生。一郎の同級生である。彼女の使命はより素敵な彼氏を手に入れることだった。
学校の教室。
「最高の遺伝子! ベストゲノム! 色々なことを経験して楽しく強くなろう!」
これが最近よく宣伝されているコマーシャル。
「ゲノム?」
危機なれないゲノムという言葉を聞いても一郎は分からない。
「遺伝子のことだよ。これから君たちは色々なことを経験して、遺伝子を大きく成長するんだよ。たどり着く先はベストゲノムだ。略してベスゲノ。」
担任の伊藤先生が遺伝子人生を説明する。
「今日の授業は、スライム。透明でプヨプヨしてるんだ。遺伝子レベルは1。」
授業でチュートリアルする。
「分かりやすく説明するためにプレオープン・ベスゲノバトルだ。ルールは簡単、魔王を倒した人の勝ち。実際にみんなに遺伝子バトルをやってもらおう。」
「おお!」
遊びと思うと小学一年生たちは喜ぶ。
モンスターの説明。
スライム・・・プヨプヨしていて敵の攻撃を受けにくい。
ゴブリン・・・たまに痛恨の一撃がでる。
ウルフ・・・・スピードが速い。
カラス・・・・空が飛べる。
ナメクジ・・・べとべとしていて気持ち悪い。
コウモリ・・・空が飛べる。
ゴースト・・・敵の攻撃を受けにくい。
魔法使い・・・魔法が使える。
さそり・・・・毒がある。
がいこつ・・・不死。
一つ目目玉・・敵の動きを止める。
魔王サンタ・・二回攻撃、魔法を使える。よくプレゼントをくれる。
「魔王サタンのゲノムレベルが10とした場合。10体のモンスターの遺伝子を集めれば自分の初期レベル1を足すとゲノレベが11になる。すると魔王より強くなり倒せるという訳だ。」
伊藤先生はベスゲノバトルの説明を続ける。
「それぞれのベスゲノには特殊能力がある。例えばスライムはプヨプヨしていて敵の攻撃を受けにくいなどだ。たくさんのベスゲノモンスターと僕とお友達になってください。そして自分の遺伝子を強くして、明るい未来を手に入れてください。」
ベストゲノムは人生を豊かにする可能性を秘めている。
重要視される遺伝子教育は小学校の必修科目になった。ベストゲノムは普及させるためにマイナンバーカードでアカウントを管理することになった。これで大人も子供もお年寄りも、誰でも自分の遺伝子レベルや、遺伝子ステータスを見ることができるようになった。遺伝子が分かれば病気の早期発見や貧困に補助金の支援などが行いやすくなった。
「勉強すれば自分が賢くなり、体を動かせば自分が強くなるよ。」
生きる人間の能力・性能の数値化である。
「自分の成長を実感できるベスゲノ・システム!」
2021年 文部科学省肝いりの政策である。
「みんなも最高の遺伝子、ベストゲノムを手に入れよう!」
ベスゲノ・スタート!
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