異世界転生、承ります
一枝 唯
第1話 転生体験キャンペーン
は?――と、僕は口を大きく開けた。
「いま、何て?」
「転生体験キャンペーン」
律儀にも、上司はにっこりと繰り返してくれた。
「いまや一億総転生時代! あなたも転生してみませんか? でも、転生先に馴染めるか心配……そんなあなたに!」
さっと上司は僕に手を差し伸べた。僕はため息をついて、続ける。
「……転生体験キャンペーン」
「その通り! 判ってるねえ、タクト君」
「本気なんですか? 体験かつキャンペーンってことは、格安でプランを用意するんでしょ? ひとりの転生先を決めて、それが軌道に乗るまでフォローするのにどんだけの費用がかかると思って」
「だからだよ、タクト君。アフターフォローの手間を減らすんだ。序盤にヒロインを用意したり、活躍の場を作ったりしなくてもいい。少し観光してもらって、そこでOKが取れればあとは放り出してよし、NGならそのまま接触を断って、さっさと次の客を放り込む」
これならお手軽だ、と上司はやはりニコニコしている。僕は額を押さえた。
「うちは、アフターフォローまでバッチリっていうのが売りじゃなかったんですか!?」
「正直、アフターフォローは旨みがないんだよ。競合他社も増えたしなあ。だいたい、転生が完了すれば契約の記憶はなくなるんだし、うちの悪評を立てることもできんだろ」
「いやいやいや、この業界がそういう風潮になりつつあるのは判ってますけど、そこは企業倫理って言うか!」
「タクト君」
笑みを絶やさないまま、上司は僕の肩をぽんと叩いた。
「アフターフォローの廃止。体験キャンペーンの開始。これはもう決まったことなんだよ」
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