第20章 11 結婚話の後に見る夢は…

「キャッ!」


ゴブッ!


気付けばお湯の中に潜っていた。


「ゴホッ、ゴホッ!」


慌ててお湯の中から顔を出し、激しく咳き込んだ。


「あ、危なかった…」


肩で息をしながら安堵のため息をつく私。


「まさか…湯船の中で寝てしまうなんて…」


改めてお湯から肩を出すと、バスタブの壁に寄りかかった。まだ心臓がドキドキしている。


「はぁ…参ったなぁ…」


雫の垂れる天井を見上げながらポツリと呟いた。結局、直人さんの弟さんからは何故直人さんが突然社長に就任したのか、川口家電はその後どうなったのか…等の話しは一切聞く事が出来なかった。何故なら彼の休憩時間が終わってしまい、仕事に戻ってしまったからだ。でも…知りたくは無かった。今頃直人さんの話を聞いた所で…もうどうしようもないのだから。話が途中で終わって良かったと思っている。


「私…もうあのファミレスに行くの…やめようかな…」


そして再びため息をついた―。




****


 濡れた髪の毛をバスタオルで拭いながら部屋に戻るとスマホがチカチカ点滅している。


「あれ?誰からかな?」


何気なくスマホをタップすると真理ちゃんからだった。留守番電話が入っている。早速センターに問い合わせしてみる事にした。するとガイダンスの後に真理ちゃんの声が聞こえてくる。


『ヤッホー。鈴音~元気にしてる?ねぇ聞いてよっ!私ね~とうとう同棲中の彼からプロポーズして貰っちゃった!あまりにも嬉しくて思わずあちこち電話掛けちゃってるんだ。鈴音、結婚前にパジャマパーティーしない?連絡待ってるね』


「真理ちゃん…」


メッセージを聞き終えた私は自分の事では無くてもドキドキしていた。


「え~…あの真理ちゃんが…ついに結婚…?いやいや、でも待って…まだ私達24歳なのにもう結婚…?あ、でも結婚は早い方がいいのかな~…」


そこまで言ってふと、思った。ひょっとすると私と直人さんも…あんな事が無ければ今年には結婚出来ていたのかな…?


「あ、それよりも電話電話…」


私は真理ちゃんの電話番号をタップした―。




****


「じゃあ、またね〜」


『うん、またね!』


真理ちゃんとの電話を切ると、早速卓上カレンダーを手に取った。真理ちゃんは入籍だけして、秋頃に式を挙げるという話だった。そしてパジャマパーティーは2月1日で、私の住む部屋でお泊り会をすることに決定した。


「2週間後か…お酒とか色々用意しないとね」


時計を見ると深夜の0時を過ぎていた。


「うわっ!こんな時間だったんだ…遅くまで電話しちゃってたけど…彼氏さんに何も言われなかったかなぁ…フワアアア…」


ブツブツ言っているうちに欠伸が出てしまった。ああ…眠くなってきちゃった。もう今夜は寝て、明日の朝早く起きて洗濯を回そう。

そしてスマホのアラームを6時にセットすると、部屋の電気を消してベッドに潜り込み、私はすぐに眠りに付いてしまった―。




 私は夢を見ていた。


 真っ白な教会には大きなベルが取り付けられて、祝福のベルが鳴り響いている。すると何処からともなく一斉に鳩が飛び立ち、式に参加した人達がウェディングドレスを来た私と、腕を組んでいる彼にブライダルシャワーを投げかけている。そして私は真っ白なスーツを着た彼を見上げて微笑む。


その相手は…。



ピピピピピ…ッ!


突然夢の中でスマホのアラームが鳴り響き、私はパチリと目が覚めた。


「ゆ、夢…」


まさか、自分の結婚式の夢を見てしまうなんて…。それにしても相手は…。


「所詮…夢…だよね…?」


私はポツリと呟いた―。

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