第19章 12 誰っ?!
発出勤から何日かが経過して、今日は1月10日。同期の内輪だけの新年会の日だった。そして午後8時、私達は新宿南口からほど近い無国籍居酒屋に集合していた。
「「「「「かんぱ〜い!!」」」」
テーブル席に座った私と井上君、真理ちゃんに佐々木君の仲良し同期でグラスに注いだ生ビールをカチンと鳴らした。
ゴクッ
ゴクッ
ゴクッ
お酒大好きな佐々木くんがビールをまるで水のように飲む。
「ぷは〜っ!最っ高!」
そしてドンと勢いよくグラスを置く。
「相変わらずすごいね〜佐々木くんは」
佐々木くんの向かい側に座った真理ちゃんが感心したように言う。
「まあ、別にいいさ。こういう場合を考えて2時間飲み放題コースにしたんだから。佐々木、好きなだけ飲めよ?ただし、酔っ払っても解放してやれないからな?」
井上君はポンと佐々木君の肩に手を置くと言った。
「チェッ。つれない奴だな〜。それなら片岡さんか加藤さんに…」
佐々木くんが言いかける、真理ちゃんは慌てて手をふる。
「駄目!駄目だよ!私はっ!彼氏と今同棲中なんだからっ!」
「ええっ?!片岡さんは同棲してたのかっ?!」
「マ、マジかよっ!」
井上君と佐々木くんが驚きの声をあげる。
「うん、そうだよ〜今ラブラブ中なんだから私は無理だよ」
真理ちゃんの言葉に佐々木くんが私を見た。
「よし、ならいざとなったら加藤さんに…」
「え?わ、私?」
驚いて自分を指さした。すると井上君が何故か大声を上げる。
「うわ〜っ!!待て待てっ!分かった、佐々木!さっきのは冗談だ!俺が責任もってお前を介抱してやるからっ!」
「よーし、言ったな?それじゃ遠慮しないで飲むか!すみませーんっ!」
佐々木くんは手を上げて店員さんを呼んだ。
「お待たせいたしました」
すぐに割烹着を着た若い男の子がやってきた。
「お待たせ致しました!」
「え〜と、生ビールジョッキに日本酒1本お願いします!」
佐々木くんは元気よくオーダーする。
「あ、ついでに皆も何か頼めば?」
井上くんがドリンクメニューを差し出してきた。
「えっと…それじゃ、ゆずレモンサワーをお願いします」
店員さんの顔を見て注文すると、何故かその店員さんは私を見て目を見開いた。
「あ…」
「え?」
「お姉さん…あの時の…」
「え?」
すると他の3人も私と店員さんを交互に見ながら言う。
「何々?ひょっとして加藤さんの弟さん?」
佐々木くんが尋ねてくる。
「ううん、私には弟は…」
「え〜ひょっとして年下のボーイフレンドなの?」
真理ちゃんはもう酔っているのだろうか?とんでもない事を言ってきた。
「な、な、何だって〜っ!!」
井上君は大声で喚く。
「ちょ、ちょっとまってってばっ!」
私は皆の騒ぎを落ち着かせながら、困りきっている店員さんを見た。目のくりっとした中々かっこいい男の子だけど…それでも全く心当たりがない。
「あの…ごめんなさい。何処かで会ったことありましたっけ…?」
すると、一瞬店員さんは悲しげな顔を見せると言った。
「す、すみません。僕の勘違いだったみたいです。もう一度オーダーお願いできますか?」
「俺は生ビールジョッキと日本酒1本」
と佐々木くん。
「えっと俺はウーロンハイ」
「私はカルピスサワーね」
井上君の後に真理ちゃんが言う。
「それじゃ私はゆずレモンサワーをお願いします」
メニューを見ながら言うと、何やら視線を感じてそちらを振り向くと店員の男のは私をじっと凝視している。
「あ、あの…?」
すると男の子は一瞬顔を真っ赤にさせると慌てたように言った。
「あ!は、はい!オーダー承りました!それでは少々お待ち下さい!」
そして逃げるように去って行った。
「「「…」」」
店員の男の子が去ると3人の視線が一斉に私に集中する。
「加藤さん、今の少年は誰?」
佐々木くんが尋ねてきた。
「ひょっとして年下の彼氏…?」
真理ちゃんが面白そうに尋ねてくる。
「そ、そんな嘘だろっ?!」
井上君が情けない声を上げている。
「だ、だから!本当に知らない男の子なんだってばっ!」
その後、暫くの間私は3人の質問攻撃にあってしまった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます