第18章 13 ばれた話

 亮平はアルコールを買いに行ってまだ戻って来ないし…多分すぐ電話終わるよね‥。


ピッ


スマホをタップして電話に出た。


「もしもし」


『あ~良かった!出てくれて!出てくれなかったらどうしようかと思った』


いきなり電話口で井上君の大きな声が聞こえてきた。


「何、それ。大袈裟だね~」


クスクス笑いながら言った。


『あれ?何か機嫌よさそうだね。って言うか加藤さん、ひょっとして今外出先なのかい?』


「うん、そうだよ。実家近くのスーパー銭湯に来てるの」


『え?そうだったんだ。ひょっとして誰かと来てるの?』


「あ、うん。それはね…」


コトン


言いかけた時、目の前のテーブルに私が注文したグレープフルーツサワーが置かれている。目の前には亮平が立っていた。


「あ、ありがとう。」


「何、電話中だったか」


亮平が座りながら尋ねる。


「う、うん」


そしてすぐに通話口に出た


「ごめんね。話し中に」


『あ、いや。こっちこそごめん。電話切ろうか』


井上君が申し訳なさそうに言う。


「それじゃ後で掛けなおすよ」


チラリと亮平をみると、お酒を飲んでいた亮平と目が合った。


「別に俺の事は気にせずに電話してろよ」


「でも…」


「ああ。構わないさ。もしかして俺の前で話せない相手なのか?」


亮平はグビッとアルコールを飲む。


「うう…そ、それは…」


でもここで切ったら変に誤解されてしまうかも。


「わ、分ったよ…もしもし、ごめんね。」


『加藤さん。誰といるの?ひょっとしてまずい相手なのかっ?!』


井上君が何やら勘違いし始めた。


「そんな事無いよ。亮平…だから」


するとスマホ越しから大きな声が響き渡った。


『え?加藤さん。亮平って…ひょっとして幼馴染のっ?!』


井上君の電話の声があまりに大きくて亮平の耳にまで届いたようだ。


「ん?その声…男か?」


「あ、う・ん…そうだよ…」


「鈴音!お前…またかよ。誰だ?貸せ!」


いきなり亮平は私からスマホを奪うと電話に出てしまった。


「もしもし?…ああ、そうだよ。お前、鈴音の同僚の井上か?まだ鈴音につきまとってるのか?え?何だって?新年会の話し?本当にそれだけか?伝えるならメールで十分だっただろう?本当は鈴音と話がしたかったんじゃないのか?」


ああ…何て事だろう。亮平が電話で井上君と口論を始めてしまった。

こんなことになるなら井上君の電話、無視して置けば良かった。それにしても何故亮平は井上君に対して敵意をむき出しにするのだろう。


「ちょ、ちょっと返してよ!私のスマホ!」


けれど、私の言葉が耳に入らないのか亮平は井上君と話をしている。


「全くお前たちの職場一体どうなってるんだよ。太田って男も鈴音に告白して来るし…え?何だって?ああ、本当の話だ」


ああっ!亮平はとんでもないことを井上君に言ってしまった!もう我慢できない!


「ちょっと!返してよ!私のスマホッ!」


私は立ち上がって亮平の席に行くと無理矢理スマホを奪い返した。


「ば、馬鹿!まだ話し中…!」


「いい加減にしてよ!この電話は私のなんだから!」


思わず大きな声で言い…周里から注目されていることに気付いた。うう…恥ずかしい。だけど、電話に出なくちゃ…。


「もしもし…」


震えながらスマホに耳を当てる。


『か…加藤さん…』


井上君の声が震えている。


「う、うん。ごめんね~電話勝手に奪われちゃって…」


亮平を睨みながら言う。だけど亮平は不機嫌そうにこっちを見ながらアルコールを飲んでいる。いやいや、むしろ不機嫌になっていいのは私の方でしょ?


『あ、あのさ…』


「な、何かな?」


ああ…嫌な予感がする…。


『今、加藤さんの幼馴染の男から聞いたんだけど‥‥こ、告白って?』


やっぱり恐れていたことを井上君が尋ねて来た。


「あ、あの…そ、それは…」


『太田って…太田先輩の事だよねっ?!』


「う、うん…」


どうしよう、井上君に知られてしまった。


私はスマホを握りしめたまま、凍り付いてしまった―。






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