第16章 7 幼馴染の会話
「亮平?もしかして…泣いてるの?」
『は?な、何で俺が…』
しかし、そこで亮平が口を閉ざしてしまった。
「亮平?」
『そうだな。情けないけど…少しだけ泣いた』
「え?どうして…どうして亮平が泣くのよ…?」
亮平には全く関係無い話なのに?すると亮平が言った。
『お前のさっきの‥真っ青な顔が…交通事故に遭った直後の顔と重なって…怖くなったんだ。もしかして絶望して命を絶つんじゃないかって…』
「そ、そんな事しないよ…だってもし自殺でもしたりしたら…直人さんが責任を感じてしまうかもしれないでしょう?」
『ば…馬鹿!鈴音、お前こんな時なのにまだそんな‥川口の事擁護するのか?!恋人であるお前の連絡を1週間も絶っておきながら自分は別の女と会っている…そんな酷い裏切りに遭っているって言うのに?!』
亮平の言葉は…私の傷付いた心をより深くえぐっていくようだ。
「やめて!亮平っ!」
『す、鈴音…?』
「お願い、やめて…」
私は声を震わせて懇願した。
「まだ直人さんが私を裏切ったかどうかなんて…分らないでしょう?確かに今は音信普通の状態だけど‥ひょとしたらまた連絡がくるかもしれないじゃない?」
私は自分に言い聞かせるように必死になって言う。
『だけど…』
「あ、明日…!」
『え?明日?明日がどうした?』
「明日…仕事から帰ったら直人さんのマンションを訪ねてみようと思うの…」
『そうか。明日だな?よし、分った。俺も明日付き添うからな』
「え…?でもそれじゃ亮平に悪いよ。だって明日も普通に仕事がある日でしょう?」
『鈴音。お前を放っておけるはずないだろう?そもそもお前と川口が交際するきっかけを与えてしまったのは…外ならぬ俺なんだから。俺のせいでお前を辛い目に遭わせてしまったからな。責任は取るつもりだ』
「分った…よ」
そこまで亮平に言いきられれば、私は断る術も無かった。
『それで?お前…明日は何時に仕事が終わるんだ?』
「明日は遅番だから‥20時半にはなるかもしれない。帰宅できるのは21時半頃になるかもしれないかな?」
『分った、それじゃ21時半に川口のマンション前で待ってるよ』
亮平が返事をする。だけど…そんな時間に直人さんのマンションを訪ねたら迷惑じゃないだろうか…?そこまで考えて私は再び目頭が熱くなってきた。馬鹿だな、私って…直人さんと恋人同士の頃は彼の所へ行くのに、時間の事なんか一切考慮していなかったのに、音信不通になって見知らぬ女性と一緒に映っている写真を見ただけで、まだ決定的な別れすら告げられていないのに、もうまるで赤の他人になってしまったかのように気を使ってビクビクしている自分がいる。
『おい?鈴音?どうした?何故急に黙るんだ?お前…ひょっとしてそんな遅い時間に川口のマンションを訪ねるの迷惑だと思ってないか?』
「え…?どうして分ったの?」
『どれだけ長い付き合いだと思ってるんだよ。お前の考えなんか御見通しさ』
「そっか…御見通しか…」
すると亮平が言った。
『いいか?鈴音はまだ川口から何も話を聞かされていないんだろう?と言う事は現段階でまだお前と川口は恋人同士なんだからな?だから遠慮する事無いぞ?合鍵だって預かってるんだし』
「うん、分った…よ」
『よし、それじゃそろそろ電話切るけど…仮に川口から連絡あったら必ず俺に連絡入れろよ?分ったか?』
「うん、分ったよ」
『それじゃあな』
「ん、お休み」
私は電話を切った。
「直人さん…」
怖いけど…どうか、どうか直人さんから連絡が来ますように…!私は祈った。
けれど…結局川口さんから連絡が来ることは無かった。
翌日の亮平と約束した時間になっても―。
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