第15章 17 2人の初めての休日

 その後、私達は一緒に駅まで手を繋いで歩いてレンタルショップへ行った。そして2人で話し合って、SFXのファンタジー映画のDVDを借りた。そして帰りはスーパーによってお昼と夜の分の食材に飲み物を買って、2人でまた手を繋いで川口さんのマンションへ帰って行った。



「映画を見ながら食事が出来るように今から何か作るよ」


マンションに帰ると早々に川口さんがキッチンへと立った。


「ねえ、私が今度は作ろうか?」


キッチンに入って行った川口さんを追って尋ねてみた。


「え?作ってくれるの?食事」


川口さんが目を見開いて私を見る。


「う、うん。これでも私も1人暮らししているから。でも…あんまり凝った料理は出来ないけど…」


「そんな事ないさ。鈴音が作ってくれるものならどんな料理でも俺は嬉しいよ」


川口さんは笑顔で言った。


「そ、そう?でも本当にあまり期待しないでね…。エプロンあるかな?」


「ああ、俺ので良ければあるよ」


そう言って川口さんは台所のフックに引っ掛けてあったエプロンを貸してくれたのだけど…。はっきり言ってぶかぶかだった。私は背が低いのに、川口さんはとても背が高い。だから借りたエプロンを付けてみると。くるぶしまで届いてしまったけれども無いよりはましかな。


「それじゃ、用意するから待ってて?」


「何か俺も手伝おうか?」


川口さんが声を掛けてきたけど、丁寧にお断りして早速調理を開始した。それにお昼のメニューは決まっている。ランチはサンドイッチにする予定だったから。

早速買って来たサンドイッチ用のパンを取り出して、私は料理を始めた―。



1時間後―


「よし、完成っと」


出来上がったサンドイッチにぴっちりラップをすると冷蔵庫へしまった。


「何?出来たの?」


エプロンを外していると、川口さんがキッチンへやってきた。


「うん、出来たよ。見てみる?」


冷蔵庫を開けようとしたとき、川口さんが言った。


「う~ん…いや、やめておくよ。食べる時に楽しみに取っておきたいからね。それより、こっち来てごらんよ」


「え?」


川口さんに手を引かれ部屋に行くとテーブルの前のパソコンが置いてある場所に座らされた。そして私の背後に川口さんが座る。まるで背後から抱きしめられるような格好に思わず顔が赤くなってしまった。


「ほら、これ見てごらんよ」


川口さんの息遣いを感じながら、PC画面を見てみるとそこには高尾山のHPが表示されていた。


「え…?高尾山?」


「そう、もしかして行ってみたいのかなと思って調べてみたんだ。今度俺と休みを合わせて2人で一緒に行ってみないか?」


私の背後からカチカチとマウスを操作して、次々と高尾山の案内のHPを表示させていく。


「・・・・」


私はそれを黙って見ていたけど、ポツリと言った。


「高尾山もいいけど…ディズニーランドに先に行きたいな…」


だって、そこはお姉ちゃんと亮平が初めてデートした場所だから…。私は行きたくても遠慮して行けなかった場所…。私は今まで一度も行ったことが無い場所で2人はどんな景色を見たのか、私も知りたい…。


「鈴音っ!」


すると突然背後から川口さんが抱きしめて来て、私は一気に現実に引き戻された。


「び、びっくりした。な、何?」


慌てて振り向くと、そこには笑顔で私を見ている川口さんの顔があった。


「嬉しいよ。鈴音の方から自分の行きたい場所を言ってくれるなんて。それじゃ恋人同士になった最初の記念するべきデート場所はディズーランドにしよう?」


「う、うん。そうだね」


そして再び川口さんの顔が近付き…私達はキスをした―。




 その後、借りてきた映画を一緒に観ながら私が作ったサンドイッチを2人で食べた。川口さんはすごく美味しいと言って、とても喜んでくれた。

借りてきた映画はシリーズもので2部作品となっていた。映画はとても面白くて、終わった頃には午後の5時を過ぎていた。

夜御飯は川口さんがナスとラザニアのグラタンを作ってくれて、2人で1本の缶ビールを飲みながら美味しく頂いた―。



夜8時―


「本当に帰っちゃうのか…」


川口さんがため息をつきながら私と一緒にマンションを出た。


「うん、仕方が無いよ。明日は仕事なんだし…それにいくら薬を飲んでいるって言ってもお医者さんからは早めに寝たほうがいいって言われてるから…」


エレベーターに乗ると私は言った。


「まあ…先生にそう言われているなら仕方が無いよな…」


川口さんは納得したようにため息をつく。


チーン


エレベータが到着し、私達はマンションの外へ出ると川口さんが突然抱きしめて来ると言った。


「鈴音…」


「何?」


「俺と一緒に暮らす事…前向きに考えて貰えないかな…」


川口さんが切なげな声で言う。


「うん、考えておくよ…」


こんなに私の事を思ってくれているのだから…同棲するのも悪くないかも。何より大切にしてくれるし。


「ありがとう。お休み」


「お休みなさい」


最後に軽く触れるだけのキスをすると私達は別れ、それぞれマンションへと入って行った。

自分のマンションの敷地内へ入り、部屋へ向かう為に念のため郵便ポストを開けてみると宛先も何もない白い封筒が入っている。


「手紙…?」


その場で開封して驚いてしまった。中には私のPASMOが入っていた―。


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