第2章 8 昨夜の事
ピピピピピ・・・・・
う~ん・・・煩いなあ・・・目覚ましの音だ・・・。私はベッドから右手を伸ばし、手を動かして目覚まし時計を探していると四角い手のひらサイズの何かが触れた。
よし、これだ。
目を閉じたままバチンと目覚まし時計を止めて、布団を被りなおし・・。
「あーっ!!今日も仕事だったんだ・・・っ!」
ガバッと飛び起きた途端、ズキリと頭が痛んだ。
「う・・あ、頭が・・・。あれ?そう言えば私いつの間にかベッドで寝ているけど・・どうやって家に帰ってきたんだっけ・・?」
ガンガン痛む頭を押さえて、ベッドから降りるとかろうじて部屋着には着替えていたようだ。だけど・・。
私は自分の身体の匂いをスンスンと嗅いで、顔をしかめた。
「う・・お酒臭い・・・。」
チラリと目覚まし時計と見ると時刻は6:10。今からすぐにシャワーを浴びて、髪と身体を洗って、濡れた髪をタオルで巻いて・・牛乳にシリアルならすぐに朝食を食べ終える事が出来るっ!頭の中でざっとシュミレーションを立てた私は箪笥から下着を引っ張り出すと急いでお風呂場へと向かった。
シャワーでお湯を頭からかぶり、身体を洗いながら?髪も洗う。泡をよーく洗い流した後はバスタオルで身体を拭いて頭にタオルを巻き付けると下着を身に着けた。
そしてお風呂場から出た私は、そこで亮平と遭遇した。
「あ・・・。」
亮平は下着姿の私を上から下までじっくり見渡し・・・。
「な、何で亮平がここにいるのよ~っ!!」
私は絶叫していた・・・。
「つまり、亮平はお姉ちゃんに私の事を頼まれて、ここへいると言う訳ね?」
夏物のカジュアルスーツに身を包んだ私は器に開けたシリアルに牛乳を注ぎながら亮平を見た。
「あ、ああ・・・。そうだ。忍さん・・・彼氏と泊りで家に帰れないから、代わりにお前の様子を見て貰いたいって・・・頼まれて・・・。」
明らかに元気なく答える亮平。う~ん・・・思いを寄せる女性からの、彼氏とお泊りデートの報告を受けるのは・・・確かに痛い話かもしれない。
だけど・・・。
私はチラリと亮平を見た。私だって・・・ずっと亮平の事・・・好きなのに・・。
その時、亮平が声を掛けてきた。
「おい、鈴音。お前・・・朝飯それだけで行くつもりか?」
「うん・・駄目かな?」
「いや、駄目って言うか・・あっ!それよりも鈴音!お前・・・昨夜はよくも何回も人の髪の毛抜いてくれたなっ?!ものすごーく痛かったぞっ?!」
「え?髪の毛?抜いた?何回も?」
私はこめかみを押さえてみたが・・・駄目だ。昨夜の記憶・・綺麗さっぱり抜けている。
「おいおい・・お前・・・本当に覚えていないのかよ・・。だが、鈴音。安心しろ。」
亮平は急に真面目な顔つきになると言った。
「あいつには・・・田代には昨夜電話しておもいっきり文句言ってやったからな?!」
「え・・?田代さんに?何で?」
私はシリアルを口に頬張りながら言った。
「あのなあ・・・昨夜田代に酒と一緒に睡眠薬を混ぜて飲まされただろう?」
「え?誰が?」
「お前だ。」
亮平は私を指さした。
「だから、人を指さしちゃ駄目だって・・・・え?ええ~っ!う、嘘っ?!」
思わずガタンとのけぞると亮平が言った。
「やっぱり・・・何も気づいていなかったのか・・。全く・・・もう少し危機管理意識を持てよ。俺がいなかったら・・・お前、田代にお持ち帰りされていたぞ?」
お持ち帰り・・・お持ち帰りかあ・・・。それってアレの事だよねえ・・。
あれ・・・そう言えば・・・。
「ねえ、ねえ。ひょっとして亮平が私を連れ帰って来てくれたって事だよねえ・・?」
「ああ、そうだ。」
私・・・いつの間にか部屋着に着替えていたな・・?何でだろう?
「そう言えば私・・・家に帰っていた時眠っていたんだよね?着替えはどうしたんだろう?」
すると途端に亮平が激しくむせ込むと、ガタンと席を立って、隣の部屋へ行ってしまった。その時、私は見た。
亮平の横顔が耳まで赤く染まっていたと言う事を。
うん・・・亮平の為に聞かないでおこう―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます