第33話依頼魔物の子守3


あれから十日が経った。最初のうちは凄く気まずい雰囲気が流れてしまったが、赤ちゃん達の世話に没頭することでなんとか過ごす事が出来た。最初の三日はミルクをあげて、仮眠をしあげては仮眠というサイクルの連続だった。


三日も経てば一時間に一回位ミルクをあげれば良くなり少し余裕ができた。今では目を開け、可愛らしい瞳を覗かせている。


昼間はミルクの時間以外を薪割り等の時間にあて、残った時間は

コノハが使っていた魔物の生態について書かれている著書を読み更けていた。著書の名に記載は無いが、

内容は詳しく深掘りされている。魔物の生息地から始まり、気温や環境等による進化。魔物はどの様なルーティンで行動し、何故この世界に存在するか等

何が本当なのか分からない現状ではあるが、とてもロマン溢れた書籍だった。



魔物の進化は生きている環境や経験に左右されるのは勿論の事だが、その魔物自身の求める姿に近づくと言う。知識を求める魔物はそれを活かす頭脳を、何者にも負けない力を欲する者には力を。段階的に得る事それすなわち進化と言う。


この著書はシリーズものらしく魔物シリーズと名をうたれていた。最後のページに著者からメッセージを記されている。


『この本を読んでくれてありがとう、とても面白い内容ではなかったかな?この世の全てを知りたくないかい?この私を見つけられたら教えてあげてもいい、私はそう思っている。ただ何もヒントがなければ私を探し出す事は不可能だろうね。もし興味があるのならば私が書いた著書を集めたまえ!私のシリーズ全てだ。

それじゃあ頑張ってね〜!』


とても興味深い内容なのだが、いつの年代の物かも分からず生きてはいないだろうと思った。しかし、内容はとても面白いので集める事にするが。最後の一文がとても読者をモヤモヤさせている。


「面白いは面白いんだけどなんか最後の一文がイライラすんだよなコレ」


本を読んでいると、コノハが下から上がってきた。

昼ご飯が出来たと言うので、居間へ向かった。

昼食は肉と野菜のサンドイッチだった。オウカの分にだけ野菜が入っていなかったがルシウスが自分の野菜をオウカのサンドイッチに挟んだ。



その行為に涙目になったオウカはだったがルシウスの説得により口に運ぶ、涙が溢れた。嬉しさ、悲しさ、不味さ等色んな感情が渦巻く。食事を終え不憫に思ったコノハはオウカ達にホットミルクを振舞った。


「ぶほぉ?ぶふぉぉぉ!」


「にゃぁぁぁぁ!」


オウカはミルクを飲みながら貴方は神ですか?神なのですね?と言った表情を見せた。反対にクロは熱い物が苦手らしくルシウスの見つめ、フーフーしてくれにゃいの?と言わんばかりにしおらしく優しいタッチで猫パンチをしていた。


「分かったよ!ほら!アーンして!」


「にゃーーーん」


「ルシウスくん今日の夜で依頼はお終いだ。いやー、とても助かったよ。今日の夕方には息子も帰ってくるから一緒にご飯を食べて帰って欲しい息子も喜ぶと思うよ」


「じゃあお言葉に甘えて頂きますね!いやーコノハさんの料理が美味しすぎて帰りたくないです」


ルシウスの一言が嬉しく、今日の晩ご飯はとびきりの一品を用意しようと意気込む、オウカもクロもこの十日間でとても成長した。クロはルシウスの膝上少しまで大きくなり今では抱っこするのも一苦労だ。


最近はあまり抱っこをしないのだが、甘えてくるので

膝上に乗せる事にしている。オウカはと言うとルシウスと同じ位の身長まで成長していた。腕周りも太くとても迫力があった。


ただ、運動不足のせいかお腹がだらしなくなっており

コノハの依頼が終わったら運動させなければなと思った。この十日とても充実した日々を過ごしていた。


赤ちゃん達を裏庭にて日向ぼっこさせてる間オウカは薪割りに精を出した。最初はルシウスがやっていたのでがやりたそうにしていたのでやらせてみると、これがとても様になってた。様になっているだけではなく斧の使い方が上手いのだ。


「これならオウカの武器は斧が良いかな?」


「ぶほぉ!ぶふぉぉぉぉ!」


この振り下ろすとスッキリする感じが好きなんだよね

とでも言う様に、汗を流しながらも楽しそうにしていた。クロはというと、爪が発達し日頃は肉球の間に隠しているが鋭利な爪がたまに主張してくる。


「これは切った方が良いのか?お爺さんに聞いた方が良いかもな」


置いてある薪を粗方片付けると自分達が使った部屋の掃除を始めた。掃き掃除から拭き掃除まで隅から隅まで作業をする。そうこうしていると下の階から子供の声が聞こえた。


「父ちゃんただいま!!会いたかったよー!」


「おかえり私も会いたかったよ!修行はどうだい?」


「うんっ!頑張ってるよ!皆んな良い人ばっかりで優しいお兄ちゃんもたまに来るんだー!」


久し振りにあった親子は抱き合い近況を話す。

コノハの息子が帰って来たのを察して揺籠を持ち下の階に降りて行った。


「!!あれ?ヒイラギ君?」


「あっ!ルシウスお兄ちゃんだっ!なんでここにいるの?その揺籠はなに?」


「二人とも知り合いだったのか?」


「うんっ!優しいお兄ちゃんって言うのはルシウスお兄ちゃんだもん!」


「これはヒイラギ君のお父さんコノハさんからヒイラギ君へのプレゼントだよ!見てごらん」


「うわぁ……可愛い、ルシウスお兄ちゃんがお世話してくれたんだね父ちゃん!ルシウスお兄ちゃん!僕嬉しいよ!ありがと」


ルシウスが居た事にビックリしたヒイラギだったが

ルシウスとコノハが自分の為にここまでしてくれて事を喜び、自然と涙が溢れた。依頼した日から今日までの話を聞きとても喜んだ。魔物牧場で鍛えられたからか帰って来た日からヒイラギが率先してお世話をやりだした。


この日の夕食はとても豪華だった。裏庭でバーベキューをしたのだ。ビッグボアを丸焼きにしオウカに食べさせ他の者は鉄板焼きを楽しんだ。ルシウスが明日出て行く事を告げるとヒイラギが寂しそうな顔をしていたがたまに遊びにくる事を約束すると納得してくれた。

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