第19話新人冒険者


「ん? 何か俺に用かな?」


「私達新人って言ったじゃん? その……人脈って大切だって聞いてね……ルシウスさんはテイマーなんだよね?」


「あぁ、テイマーっちゃテイマーだけど戦力にはならないよ! 俺自身多少剣を使えるけどクロはまだ子供だから」


「ほらみろっ! テイマーなんて使いもんにならないんだからそんな奴ほっとけよっ!」


 ルシウスとセラが話している時、横からライズが現れてルシウスを馬鹿にした。ルシウスを馬鹿にされたクロは勝てる筈も無いのに噛み殺してやると言わんばかりに姿勢を低くして低い声で唸る。


「クロ落ち着いて!」


 このままだとクロが怪我をすると思い落ち着かせる為にクロを抱き寄せ撫でる。


「こんなちっこいモンスターなんて居てもなんの意味も無いだろう? 穀潰しだ」


 ライズはルシウスがセラと仲良くする事が許せないらしく余計に突っ掛かってくる。


(なんなんだコイツ……人の事舐めすぎじゃないか)


ルシウスとライズが睨み合って居るとセラがライズを平手打ちした。


「私達だって新人の冒険者じゃないっ! なんであんたは何時も偉そうにするのよ! ルシウスさんだって新人なんだから私達とそう変わらないじゃない」


「いってぇな、何すんだよ!」


 セラに平手打ちされたライズは憤って居た。だがそんな事を気にする事も無く憤って居たのはルシウスも同じだ。


「なぁ……お前ちょっと人の事舐めすぎじゃないか?

お前は偉いのか? 何様のつもりだ。そんな強いのなら生命草なんてちっぽけな依頼なんてせずに、ドラゴンの討伐でもしてきたらどうだ? 出来るならだがな、俺は帰るから好きにしろ」


 ルシウスはクロを肩に乗せると来た道を戻る。


(冒険者ってあんなのばっかなのか? 今後冒険者と関わることは無いな)


「ちょっと待てっっ!」


 帰ろうとするルシウスをライズは怒鳴り付けるそれでも関わる必要が無いと思い歩くが、ライズはそれをよしとしなかった。


「人の事をこけにして逃げるのか?」


 ルシウスは逃げると言う単語のせいで頭に血が上りライズに詰め寄った。


「こけにするだと? 何回も言うがお前は何様だ? 人の魔物をこけにして俺が事実を言ったらいけないのか? 大体初対面の人間にそんなふざけた事言う神経を俺は疑うね、逃げる? 俺はお前に興味が無い逃げるも何も宿に帰るんだ! ほっといてくれ」


 言うことを言って少し発散したルシウスはそのまま帰ろうとした。


「ちょっと待て! 俺と決闘をしろ!」


「なんでそんな事をしないといけない? 俺になんのメリットがあるんだ?そんな無意味な事してる暇なんてない」


 ルシウスはそのままつばを返し歩き出した。


「銀貨だ! 銀貨三枚出す。お前も金が無いんだろ?お前は何も出さなくて良い、俺が負けたら銀貨三枚出す。これなら受けてくれるか?」


 銀貨三枚、そのお金は凄く魅力的な話だった。受けても万が一負けた場合こちらが損をする事がないからだ。


頭の中でテイマー協会のテイマー用品が浮かぶあそこには櫛があるクロの為にテイマー用品は買い揃えたい所だ。


「その話乗った!」


 ルシウスが了承するとライズはニタっと笑みを浮かべた。


「それじゃあ今からギルドに行くぞ」


「あんたお金どうするの? そんなお金無いでしょ?大体施設を借りるのだってお金掛かるのよ?」


勝手に話を進める事に苛立つセラ、この問題はライズが悪いのが明白な為それにルシウスを巻き込んでしまう事に申し訳なさが込み上げていた。


「施設代はテラ! 悪いが出してくれ、後で返すから」


「僕ですか? まぁしょうがないですね……出しますよ」


「テラまで……分かった。私も少し出すよ……」


 ライズ達も話を纏め終わったのでルシウスと共にギルドを目指した。道中セラとテラがルシウスに謝罪して居たが、ルシウスもライズも自分の世界に居た為気づくことは無かった。


ギルドに着くとライズだけが受け付けの為に受付嬢と話をしていた。


「あの……ルシウスさんすみません……私のせいで」


「いや、別に良いよ俺もカッとなったからあんな事言ったんだしセラさんは悪くないよ」


「僕が言うのもなんですが、ライズは良い奴なんです。ちょっと脳筋で拗らせてるだけなんです……これがどんな結果になったとしても良ければ仲良くしてあげて下さい」


 テラは必死にライズをフォローしていたが今のルシウスが聞き入れる訳も無かった。


「考えておく」


 一言言うとギルド内を見渡した。酒場とセットになっているギルドは柄の悪そうな者達が凄い勢いで酒を消費していた。


(見た目野蛮な奴ばっかりだなフリーダムの人は普通な感じなのにな)


 一瞬フリーダムの面々が頭に浮かんだがここに居る人間と同じ職業とは思えない程にここに居る人間が出す雰囲気は最低な物だった。


受け付けを終えたライズを先頭に地下に降りた。そこは何もない空間が広がっていた。


「ここは一応修練場だ。 立て掛けてある木剣があるだろ? あれで勝負だ。 決着は気絶するか負けを認めるかのどちらかだ」


「分かった」


 木剣を取るとライズと向かい合う、クロはトコトコと端の方に歩いて行った。審判はテラがする様だ。


「始めっ!」

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