魔物テイマー強い魔物がほしいけど癒しも必要だよね

夜風甚助

第1話成人祭

「ルシウスとメアリー成人おめでとう」


 今日はルシウスとメアリーの成人祭が開催されている。

 この世界では成人すると神様の加護【スキル】を取得する事が出来る。十五歳で成人とするこの世界は成人になるとスキルを取得出来るのだ。今後どのように生きて行くか身の振り方を決める大事な日である。


 この小さい辺境の村ではどんなスキルを得たとしても暮らす事は出来る、村の裏手にある山【通称虹山】には七色に輝く神々しいドラゴンが住んでいるこのドラゴンは過去に勇者の相棒として名を馳せた。


その名をクレイクと言うクレイクはその背に勇者を

載せ敵陣深くまで追撃すると四方八方にブレスを放った。


クレイクの凄い所は、七つのブレスを使い分けた所だ。アンデットには浄化のブレスを、多数の群勢には

闇のブレスで視界を奪いその副次効果で毒に陥れる、

炎のブレスで敵城を燃やし尽くすと、氷のブレスで湖を凍らせ味方の進軍を助けた。風のブレスで敵陣を崩し、雷のブレスは視界に捉えた者は全て無に返す。

残り一つのブレスは情報が錯綜しており詳しくは分かっていない。


 そのクレイク一族の末裔が虹山には住んでいると言われておりその膨大な魔力により周辺に存在している果実が突然変異し後に七色に輝く果実が出来た。

 これをドラゴンフルーツと呼ぶ。村人達はこのドラゴンフルーツを商人に売却しているお陰で辺境ながらも豊かな暮らしをしているのだ。


 今日成人したルシウスとメアリーは幼馴染みであり互いに良き理解者だ。村の中央にはキャンプファイアに使うような形で木をで枠組みし、火を焚いていた。


 成人した二人はこれから自分はどのような人生を歩み、何処を目指すのか決意表明が行われる。この村は皆アットホームで家族の様な温かい村で、何処に誰が住んでいて、誰それと誰それがどうのと言う話はその日の夜には皆んな知っている程だ。


まず最初にルシウスから決意表明が行われる。


「皆今日は集まってくれてありがとう」


 ルシウスが話始めると、村人達は指笛を鳴らしメアリーとルシウスの関係を茶化してくる、村人達はルシウスとメアリーが友達以上恋人未満な事を知っているのだ。


「皆そんなに茶化すのは辞めてくれよぉ! もう良いや、俺はテイマーのスキルを得たんだ。テイマーがどういうスキルなのか父さんと話をしたんだけど、それで今後どうするのか決めた。 俺は色々な魔物をテイムして共に旅をし色んな景色を見てみたい、 それで最終的には虹山のドラゴンをテイム出来るような凄腕のテイマーを俺は目指す!」


 テイマーというスキルを聞いて村人達はルシウスの事が心配になっていた。スキルの件はこの成人祭の時に初めて村人に宣言する為、成人した子の家族以外はこの時迄知らないのだ。そういうしきたりなのだ。


 何故テイマーが心配になるかと言うと直接的な戦闘では無く、魔物をテイムする時や魔物を従えてる時にのみ恩恵を受けられるスキルであり、魔物と言うのは色々なパターンがあるが基本的には強さで従えると言うのが一般的で、その際戦闘力は必須なのだ。


 戦闘力が無い金持ちなんかは護衛の冒険者等を雇ったり、魔物屋と言われる魔物を売買している牧場等で購入するのだが、実力が無ければ金が掛かるスキルで、金が無い為にテイマーになる事を諦める者も多いと言う。 その為テイマーというスキルをルシウスが授かった事に村人達は心配になっていた。


「そうか凄腕のテイマーになるか、精進するが良い村の者もルシウスに協力出来る事はしてやってくれ次はメアリーだ」


 村長がルシウスの決意を聞き村人達に協力を促すとメアリーに話を振った。村長は元冒険者の者で村長と言ってもまだ若い屈強な男だ。名をドレイクと言う


「私は料理人のスキルを授かりました。 そして今後の目標ですが……」


 メアリーが溜めを作ると村人達はニヤニヤし始める、今日は良い酒が飲めると男共はメアリーとルシウスを肴に酒を煽っていた。


「ルシウスのお嫁さんになって、美味しい御料理を毎日食べさせたいです」


「えっ?」


 ルシウスは初耳だった。 村人達は良いぞ良いぞと言う者や、でかしたと踊り出す者、お年寄り達は「若いって良いわね、まぁた、じいさんが踊っとるわいありゃ明日寝たきりになるじゃろう」

 と皆思い思いに言葉を発したり踊り出した。


 渦中のルシウスはと言うと、目が点になり微動だにしていなかった。衝撃が強すぎて魂が抜けかけてるのかもしれない。メアリーはそのルシウスを

 揺さぶり意識を覚醒させようと頑張っていた。


(まったくぅ……頑張って皆の前で告白したのになんでこの男は固まってるのよ)


「ねぇルシウス! ねぇルシウスってばぁ!」


 耳元で叫ばれた為ルシウスはビックリした。その反動でなんとか正気を取り戻す。


(耳元で叫ばなくても良いじゃないか、そんな事急に言われたら俺だって魂抜けかけるわ!)


「おぉ、悪いな急だったもんでビックリしたわ」


「もう」


 メアリーが頬を膨らませると村人達は和み、酒を飲み干し、あるものは嫉妬の炎に狂っていた。それは男だけでは無かった。

 ルシウスは何時もメアリーと行動を共にしているから見飽きてるだけで、他の男達にとっては高嶺の花なのだ。ルシウス自身も村の女達には人気で美男美女と言った所だ。 どちらかが釣り合って無いのなら

 今の様な事になった場合周りの者はもっと嫉妬するだろう。

 二人とも美男美女だと諦めもきくと言うものだ。


 ルシウスは頬を膨らませてる状態のメアリーを可愛いと思いながらも、何を言えば良いのか分からなくなっていた。


(俺旅に出る予定だし……連れていく? しかしなぁ、何があるか分からない訳だしメアリーのお母さんも心配するだろう……)


 一通り考えている時ドレイクが口を開いた。


「まぁルシウスも成人したばかりで若いし、やりたい事もあるだろう。メアリーも、もう少し待ってあげたら良いんじゃないか?」


「待ちますよ! 料理の腕をあげて帰って来たら美味しいもの沢山食べさせてあげるんだからっっ!」


 ルシウスが返事を返す前に話は纏まったみたいだ。ルシウス自身もメアリーの事を好いては居るので後で結婚と言うのも選択肢としてはありだろう。話が落ち着いたと同時に乾杯が始まる。ドレイクから言葉が一言。


「若い二人の幸せを願って……カンパーイっっっ!」


 


 乾杯を合図に食事が始まる。

 今日は宴なので猪形の魔物を丸焼きにしたものやドラゴンフルーツ、そしてこの日しか呑めない村秘蔵の名酒が振る舞われた。

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