Qphone片手に異世界相談
イ九ラ
第1話 出会い
「いらっしゃいませ。お弁当温めますか?」
コンビニの店員がオレに聞いてきた。
「いや、大丈夫です」
「一点のお買い上げで¥720になります」
そう言われると、レジの台に¥720を出した。店員はレジをピピピッっと打ってレシートとお弁当をオレに渡した。
「ありがとうございましたー」
店員の声を聞いてコンビニの自動扉を潜った。
「あれ? 佐野じゃね? 久しぶりー」
そこには大学の同期の森崎がいた。
「おー、森沢じゃん」
「そこにあるのは今日の晩飯か?」
「あーそうだぜ。コイツはオレの好きな具材しか入っていないオレのための弁当だ」
オレは、飯を作ってくれる人などいない。オレも結婚してたら三十前半でコンビニ飯を食わなくても済むのに……。
「まぁ、今度一緒に食いに行こうぜ。奢ってやるよ」
森崎はかわいそうな子犬子見るような顔をしていた。
でもオレはそう言う些細な事が嬉しかったりするヤツだからな。こう言うのやっぱ支えになるって言うか……まぁそんなとこだ。
その後少し森崎と話をしてまっすぐ家に帰った。
日付が変わり今日になる。また明日と同じことを繰り返す。そう思うと人生ってなんなんだろうと、考える。いつも行き着く先はない。考えるだけ悲しくなるかだ。
「……‼︎」
オレは声も出なかった。
「え! ……ん!? ……オレの家……?」
オレはまだ寝ぼけているのか? これ、俺の家じゃないし——明晰夢ってやつか?
オレはほっぺをつまんだ。
「イテテテェ……いや! オレの夢じゃない、マジのリアル……!!!!」
意識がハッキリしだした。オレはいつも寝ているベッド、朝日が差し込む窓、着ている服すらも違うことに気づいた。
これはマジで意味わからん。は? いや、落ち着け。まずは状況整理だ。まずここはオレの家ではない。さらにこの部屋はオレの家より豪華だ。
「あ、目が覚めましたか」
そこにはコーヒーを飲んでいる男の人がいた。
「すみません。勝手に連れてきちゃいました」
そう言うと、ニコニコした若い男の人が近づいて来た。
「あんた、誰だ? ここはどこだ? てかオレは何をされるんだ!?」
オレはベッドから立ち上がり手のひらを上にして意味が『分からない』と言わんばかりのポーズをとって聞いた。
「申し遅れました。私は加藤仁。ここは、私の家です。目的は今から説明します」
どうやらオレは悪事を……していない。
「ちょっと待ってくれ。てか、何もしてないんだが」
本当にわからん。
「そうですね。私が勝手に担いで来ました。まぁ目的と一緒に説明しましょう」
コーヒをオレに渡してくれた。
「あなたはこの多くの人類からただ一人選ばれた人間です」
「えーっと……はい?」
オレは選ばれた……。てか、そんじゃぁ、これスゲーなんか起こるんじゃないか? ゲームとかアニメ、マンガ、ラノベ的なヤツ! いや現実を見ろ。実験台とか普通にあるだろ。
しばらく加藤の目はPCと紙を往復していた。
「今から一つ面白い話はをしましょう。やるかやらないかは佐野さん自身が決めてください」
面白い話? 俺自身が決める?……ってこれマジであり得る——絶対面倒い話だ。早くアミューズメントカジノで遊びたいわ〜。今日は休日だから森沢とポーカーで勝負するって言ってるのに。
「私たちは、新たなスマホを開発しています。そこでいろんな事を考えて一度試作品を作ることになりました。そこで出来たのがこのスマホです。まず、コレは店で売る事は出来ないので失敗ということです。では、何故このスマホとあなたが関係するかと言うと……あなたはこの近くで建築業してますよね。その姿を見てこの人ワンチャン提案してみたら凄いことしてくれそうって思ったからです」
「おい! なんだよその決め方!」
「まぁまぁ、コレはなにかの運命なのかも知りません。普通にカッコいいっスよ。毎日疲れた後のコーヒー飲み姿とか」
なんか普通に恥ずかしいな。
「……続きをまぁ聞かして欲しい」
「このスマホは服装を変身される機能を搭載しています。これを持っていれば毎日新品の服が着れます。まぁコレは元々目標にしてたで成功はしたのですがここが問題で異世界に行き来する事が出来きます。また、異世界から事件や悩みがメールとして受信される事がわかっています。つまり、異世界の事件や悩みを乗ってあげると言う事ができることになります。言いたいこと分かります?」
「まぁ要するにオレは事件や悩みを乗ってあげるって事だな?」
「はい! 理解が早くてありがたいです」
「そしてそのスマホです。事件や悩みを異世界っぽくクエストと呼びます。名付けてQuest phone通称Qphoneです」
「面白そうじゃね? でもオレがそれで死んだらどうなるんだ?」
「それは分かりません。でも、死ななかったら良いことの話です」
加藤はニコッと笑った。オレは顔が青ざめた。
「佐野さん、するかしないかはご自身でお考えください。後コレは極秘なので他言はダメですよ」
「……」
服は無限。異世界からのメール。Qphone。……マジか。ガチ話だったらやべーわ。マジでアニメの主人公だぞ。
「てか、オレが得することある?」
「そうでしたね。言い忘れてましたが、報酬は1クエスト100万円」
「はい?」
「1クエスト100万ですが? 何かありましたか?」
おいおい意味がわからん。ニコニコして100万とか意味わからん。そんな鬼畜クエストなのか!?
「100万ってすごい額だぞ。白い帯付くやつくらい凄い。そんなムズイのかそのクエスト」
「今のところMAX星10としたら星1と星5の2つですかね」
えーー。わからん。でもやっぱりこの話乗った方が良いかもな。
「まぁ、面白そうだし……やってみるか。最悪今の仕事で給料もらったら良いし」
オレは立ち上がってそう言った。すると加藤は「待ってました」と言わんばかりの顔をする。なんか腹が立ってきた。
「言うのを忘れていましたが、今の仕事を辞めていただきます。コレが一番の条件です。副業扱いされたくないので」
あらかじめ言わなかった感が凄かった。
まぁ、要するにつまりひたすらクエストを受けまくれってことか。1クエスト100万だろ。ハイリスクハイリターンってことか。
「わかった」
「ありがとうございます」
「では、このQphoneのもっと詳しく説明しますね」
「さっきので全てじゃないのか」
「まぁ、さっき挙げた機能は特に凄い事ですね。では、1つ目、電話がまず出来ません。何故か三秒しか通話が出来ないのです」
「おいおい、それってそもそもの機能が終わってんじゃねーか」
オレは早口で喋った。
「大丈夫です。異世界に行ったらそもそも電波が届かないので必要ないです」
「じゃぁなんでメールは来るんだ?」
「それは分かりません。しかしSOS信号を出しているんだから良いでしょう」
もうこのQphoneが何なのかわからなくなってきたぞ。
「次にどうやって異世界に行き来するかです。このメールの画面を見てください。このような、URLをタップすると行けます。また、帰ってくる時は、このQphoneの電源を切れば帰ってくる事が出来ます」
「ん?……何で、行きはわかるかもしれないけど何で帰り方がわかったんだ?」
「それは実際にに私が一回異世界に行って帰ってきたので」
オレは口を手で覆った。動揺を隠せなかった。加藤は自慢げな顔をしていた。
「加藤さん……それマジ?」
オレは恐る恐る聞いた。
「マジですよ!」
オレはそんな事できないな。マジで加藤さんスゲーな……。
「普通のスマホと違うところはそこくらいですかね」
加藤はPCを片付けながら言った。
「あ、あとクリア条件はみんなで写真を撮ってきてください。じゃないと証明にならないですから。クエストをクリアしてみんなの笑顔いっぱいのヤツ頼みます」
加藤は右手を前に出し『グッド』のポーズを向けた。オレも『グッド』をした。
「じゃぁ早速2通来ているので相談事を1つやって頂いても良いでしょうか?」
加藤は笑顔で告げた。
「いやオレ、ワンチャン死ぬんだろ。そう簡単に来られても困るんだけどな」
苦笑しながらそうオレは告げた。
「では簡単そうな悩みの相談にしては? 野菜をおいしく食べたいから調味料が欲しいとか」
「そんな依頼がいているのか。よし! それをしよう」
「じゃぁこのURLでお願いします」
オレはそのURLをタップした。するとオレの体は一気に光を出した。
「何だ何だ‼︎‼︎」
眩しすぎて何も見えない‼︎
Qphone片手に異世界相談 イ九ラ @okranoharumaki
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