冬の浜辺で

勝利だギューちゃん

第1話

冬の浜辺。


彼はひとりで、絵を描いていた。

他にはだれもいない。


イーゼルを立てて、キャンバスに筆を走らせていた。


「寒くないのかな」


遠くから見て、気になっていた。


ある日、そっと覗き込んでみた。

私はそれを見て、驚いた。


キャンバスには、水平線の上に、人魚の妖精が描かれていた。

何だっただろう・・・

子供の頃、絵本で見たことがある。


でも、私には見えない。


「・・・ねえ・・・」

彼に声をかけてみる。


彼はクラスメイト。

見知った仲だ。


ただ、会話をした記憶はない。


「それって・・・確か・・・」

「・・・ネリス・・・」


そうネリスだ。


でもネリスは・・・


「見えない?」

「何?」

「君には、見えない?」


彼が尋ねる。


私は頷くしかなかった。


「僕には見える。聞こえる。彼女の姿が。歌声が。それを絵にした」

「・・・お話は・・・できるの?」

「・・・できる・・・」

「私も話したいな」


冗談半分、本気半分で言ってみた。


「君には無理だ」

「どうして?」

少し、ムッとする。


そうだ。

四つ葉のクローバー。

あれを、頭の上に乗せたら、妖精が見える。

そう、聞いたことがある。


・・・って、ここにはないか。


「悪い意味ではない」

「じゃあ、どうして?」


彼は私の顔を見つめ、真顔で答えた。


『君の人生は、まだまだ続く。妖精とお話するのは、終焉の時を迎える前でいい』

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冬の浜辺で 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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