(元)義理の娘が家出してきた。〜俺と一緒にいても楽しくないはずなのに、何故かずっといる

とろにか

第1話 プロローグ


ーーー人生、誰もが上手くいくものではない。


誰かのために生きたいという願望は、とても簡単なことのようで、それを一生継続することは不可能だと知った。


俺は、望月隆太。38歳、独身。


10年前、シングルマザーを助けた俺は、この家族を幸せにしてやると意気込んだものだ。だが、それも2年前、突然終わった。


相方に新しい彼氏ができたのだ。相手は金持ちだった。それからはあっと言う間に1人になった。


それまでの絆が、無かったかのように。


最初から、俺がいないことのようにされ、相方が出て行った。虚しい8年だった。


事実婚、というのは響きはいいが、最初から、俺と幸せになる気はなかったらしい。


それからの俺は荒れた。自棄になって仕事も辞めて、バイトしかしてない。もう、どうでも良くなってしまったのだ。


俺には、今現在、友人がいない。


昔はいたさ。でも、を持つと、疎遠になるものだ。


だから、ピンポーンとチャイムが鳴った時、俺は新聞か、宗教の勧誘が来たと思った。


おそるおそる、扉を開けた。すると、見知った顔がそこにはあった。


川瀬楓。


元相方の娘だ。


中学校の制服を着たこいつは、14歳だ。黒髪が腰のあたりまで伸びている。


「りゅーた、久しぶり」


「楓か。なんでここに?」


「家出。もう、家には帰らないから」


2年ぶりに再開した元義理の娘が、家出してきた。


俺はその事実を飲み込むまで、数十秒かかった。


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