間違えられて超嫌われてる魔王に転生してしまった。
愛崎楽太
第1話「俺、魔王に転生?!」
「えーと、
「は、はい…」
俺はさっきまでベットでゴロゴロしているいつもの休日を過ごしていたはずだった。
なのに今、目の前に知らないおじさんがいて、しかも辺りを見渡す限り、只々白くて何もない空間が広がっていた。
「すまないね、いきなりの事で戸惑っているじゃろう」
「まぁ…」
「今から話すことに驚くとは思うが、落ち着いて聞いてくれ」
なんだか物凄く嫌な予感が脳裏をよぎる。
「実は…」
「ゴクリッ…」
「間違えて君を死なせてしまった!」
「えっ…」
「本当に申し訳ない…!」
「えええっ!」
この話に動揺が抑えきれない。だって俺、死んじゃったってことで、しかもこのおっさんに間違えて殺されたってことだよね?!
「すまなかった!本当にすまなかったーっ!」
おっさんは地面に頭を打ち付けて土下座しながら必死に謝ってきた。
いや、謝られてもどうしようもないでしょ…
詳しく理由を聞いてみると、このおっさんはいわゆる神様らしく、今日、命日を迎える人を天国へと送る仕事をしていたのだが、その際に間違えて俺を天国へ送ってしまったという。
「いやー、またやらかしてしまったよ。今度から本当に気を付けんとなぁ」
まさかの前科持ちかよ!
「じゃあ、俺はこれからどうなるですか?」
「そうじゃった!君、別世界に行って、また生きてみはせんか?」
「異世界転生ですか?!」
「まぁそうとも言うな。どうじゃ?行くか?ちなみに魔法とか使える世界じゃぞ?」
まさかの異世界転生!しかも魔法が使える世界にだと?!それはもう人類のロマンだろ!そうなったら答えは決まってる!
「はい!異世界行きます!」
「よしわかった!では早速行うとしよう!」
すげー興奮してきた!どんな感じの世界なんだろう?もう考えただけでワクワクしてくる。
「死なせてしまった詫びに、あちらの世界では何不自由なく快適に生きていけるようにしといたぞ」
「ありがとうございます!」
これ、死んで良かったのかもしれないな。このおっさん…神様に感謝だな。
「では、始めるぞ」
「はい!」
神様が俺に手をかざすと俺の体が光り出す。
「おぉ!」
「では、楽しい人生を送り給え。さらばじゃ」
そして、俺の意識は遠のいていく…。
…
…
「…っん」
気が付くと俺は薄暗い部屋のベットの上にいた。
「あれ、てっきり赤ちゃんからやり直すのかと思ってたけど違うのか。さっきまでと同じ服着てるし…あ、鏡あった。…うん、見た目も変わってないし、そのまんま異世界に来たって感じだな」
まぁでも、赤ちゃんからやり直すより、最初から自由に動けた方がいいし、何気に助かるな。
…まぁ欲を言えば、ちょっとだけでも見た目を良くしてもらいたかったな。
「ていうか、ここどこなんだ?建物の中っていうことぐらいしかわからないけど」
外の様子を見るために俺は部屋の扉を開ける。
ガチャ
「えっ…」
扉を開けると目の前には、大草原が広がっていた。
そして、それ以外は何もなかった。
「いや、ホントにどこだよ?!」
…
~一方その頃の神様~
「さぁて、転生はうまくいったかのぉ…あれ?なんで赤ん坊になってないんじゃ?…ん?んん?!んんん?!!」
…
「さて、俺は一体どうすりゃいいんだ?」
そう困っていた時、突如部屋にあった鏡が光り出す
「な、なんだ?!」
「おーい聞こえるかー?!おーい!」
鏡から聞き覚えのある声がしたので恐る恐る近づいて返事をしてみる。
「は、はい…?」
「おー良かった良かった!聞こえておるな。さっきの神様じゃぞー」
「あぁ…で、どうしたんですか?」
「いやー、ちょっと問題が起こって、話しておかないといけなくなったんでな。落ち着いて聞いてほしいんじゃが…」
またこのパターン…しかし、今回はその問題に何となく予想がついた。
「まさか…」
「実は…」
「ゴクリ…」
「すまない!転生先を間違えてしまったーっ!!」
やっぱそうかーっ!だって全然快適そうじゃねぇもん!
「二度も本当に申し訳ない!」
「ちなみに、俺はどこの世界の何者に転生したんですか?」
「世界はさっき言ったところで合ってるんじゃが…その…」
なんだろう…すごい嫌な予感しかしない。
「…ま…う(超小声)」
「はい?」
「…魔王じゃ」
…
「はぁあああ?!」
おいおいおい、よりにもよって魔王かよ!いや、確かに強くて何不自由なく生きていけるかもしれないけど!
「すまない!本当にすまない!」
学習しろよこの神!
「それで一体ここはどこなんです?辺り一面大草原なんですけど」
「そこは人っ子一人いない辺境の地で…」
この野郎…!
「じゃが、山を一つ越えればいくつか町がある!」
「そこまでどう行けばいいんですか?!」
歩いて行けとかだったら最悪だ!
「この世界では魔法が使える!じゃから魔法で空を飛べることができるぞ!そうすれば、走るより数倍早く移動できる!」
なんと!空を飛べるだと!
「魔法はどうやって使うんですか?!」
「どうしたいかをしっかりイメージして念じればできるぞ」
意外とあっさりしてるんだな。いや、できるのに結構時間かかったりするんじゃないか?
「全然難しくはないぞ?ほれ、一度やってみ」
じゃあそうだな…とりあえず浮いてみるか。
…
浮くことをイメージして、念じる!
「浮け!」
すると俺の足が床と離れていき若干だが浮いている状態になった。
「おぉ!浮いたー!!」
「な?簡単じゃろ?そんな感じで魔法は使えるからいろいろ試してみるといい。それに君は魔王じゃから今存在する全ての魔法を使えるのとオリジナルの魔法なんかを作れたりもするぞ」
「そんなこともできるんですか?!」
「その世界の魔王は魔術師の頂点という意味もあるからの」
じゃあつまり、俺がこの世界で最強の魔術師ってことか!おおおっ!
「まぁ、なんじゃ。魔王でむしろ良かったんではないか?ほほっ」
「いや少しは反省した方がいいと思います!」
「はい…」
そのあと神は伝えたいことは伝えたということで仕事に戻っていった。
「さて、じゃあまずは話にあった山を越えて町へと行ってみますか」
こうして、俺の理想とは違った異世界ライフは始まったのであった。
…
一方でその頃、とある王国の大聖堂では騒ぎがあった。
「魔王が復活しただと?!」
「はい、間違いありません!ここまで強大な魔力は魔王しか考えられません!」
「魔王が復活?!そんな…!」
「あぁ、世界の終わりだわ…」
「あ、あきらめるでないっ!こういう時のために勇者様がいらっしゃるのだ!すぐさま勇者様をお呼びしろ!」
「は、はい!直ちに!」
俺はこの時まだ知らなかった。かつて災いをもたらし、この世界を支配しかけ、人類から途轍もなく恐れられている魔王として転生してしまったことを。
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