血に支配された大地で

加藤ともか

血に支配された大地で ①

「おいおい、この国はどうなってしまうんだ。無防備むぼうび都市宣言だって? 軍は何をやっていた!!」

肝心かんじんな時に守ってくれないのね! 軍隊と言うのは!!」

「国王陛下ともあろう方が、国を捨てて逃亡するなんて!!」

「ああ、おしまいだ……。神よ……どうか我らを……」


 次々と聞こえてくる大人達の叫び声。絶望ぜつぼうに打ちひしがれ、どうして良いのか分からず阿鼻叫喚あびきょうかんの様相。

 敵は世界最強の陸軍と空軍を誇るトメニア帝国。陸から、空から、このバンドリカ王国は為す術も無く蹂躙じゅうりんされていった。言語を、民族を同じくする国であるにも関わらず!

 もはや王国は風前ふうぜん灯火ともしび。帝国はかつて、バンドリカがトメニアの領邦りょうほうだったという歴史的経緯を盾にバンドリカを併合せんとしている。首都、ビフレストが落ちれば王国は一巻の終わり。だが、その首都は……無防備都市宣言を発令した。軍は降伏した。王は外国へ逃げる為にビフレストを去った。もうダメだ、手遅れだ。バンドリカは滅びる運命だ。

 運命に抗いようも無い中、トメニア陸軍がビフレスト市内へゾロゾロと入っていく。剣を、槍を、魔杖まじょうをその手にたずさえて。

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