28 説明

次に公任は筆記具を拾い、説明を始めた。


「レベルリオンには、一般人の所属者が存在しません。結成時の構成は五人でした。」

公任は、白板に人名を書き連ねた。

「まず首領。依頼者との交渉に当たっていた人物です。元は貴人らしく、『院』と呼ばれ、象徴的な存在でした。実際に犯行に及んだのは在原業平と高階貴子の二人。それぞれ火と物の怪の使い手です。ここ迄は御存じでしょう?」

衛士達はうなずいた。

「加えて、作戦と事務を一手に引き受ける兄弟がいました。これで五人です。例の兄弟は、貴子を実行犯とする初めの一件で作戦を授け、成功を見届けた後、大化へ籍を移しました。この移籍を発端に大化は二派に割れ、要警戒状態です。近々朱衛府に鎮圧要請が来るでしょう。ともかく、帝は私に命じました。レベルリオンに潜入し、頭脳部を掌握せよ、と。私は二件目以降、全ての作戦を担当しました。故意に弱点を付与した作戦を立案し、また電子関係の主導権を得て組織内で情報を統制しました。それらも二ヶ月前、彼らが大学寮大火を計画する迄は上手くいっていた」

「大学寮大火に公任さんは関与してないんだね?」と篁。

「ええ。その頃私は乎国との調整を行っていました。いえ、話を戻しましょう。レベルリオンの結成一周年を前に、私は乎への移転を提案しました。私達にこの国は小さ過ぎる、と。乎は異能大国ですから、認識もこの国より進んでいるだろう。私はそう言ったのです。彼らも乗り気だった。しかし私の真意は...もう一度言いましょう。乎は異能大国です。対異能犯機能も我が国より遥かに進んでいます。タクセンを御存じですか?乎の大規模異能機関です。擁す異能者数は、我が国の全異能者を軽く飛び越えるでしょう。国家に属する公的機関ではありません。ですが、乎国の異能社会は彼らが仕切っている、そう言っても過言ではない。彼らは秩序を好み、またその守護を大義としています。当然、乱賊に手加減などあるはずもない。この強大な力と道義に我が国は頼るべきなのだ、そう考えて乎国上層部との調整を進めていました。面目ない事にその間、私は潜入先の変化に気付けなかったのです。乎との交渉を終えた頃には、レベルリオンでとんでもない計画が持ち上がっていました。実行犯格の二人が移転記念にと独走したのです。時は実行前夜、私に止める事はできませんでした。」

公任はうつむき、話続けた。

「二人はその後、手配通り乎に渡り、既にタクセンの射程に入っています。」

「待って。首領は今どこに?」鸕野は問う。

「業平・貴子渡乎の際に、理由をつけて引き離しました。象徴の喪失により、レベルリオンには若干の弱体化が見られますね。よって今、彼は我が国に留まっています。勿論監視付きなので、位置は把握しています。ですから、朱衛府に首領確保の協力を要請します」


「最後の後始末と云う事じゃ。総員、早急に仕度せよ!」

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