ホワイトホール

勝利だギューちゃん

第1話

☆ホワイトホール


クラスに、不思議な男の子がいる。

エスパーとか、宇宙人とか、そういう意味ではない。


なんていうか、こう・・・

雰囲気が、他の子と違うのだ。


見かけは、ごく普通の男の子。

でも、なんていうか・・・

彼の周りだけ、違った空気が流れている。


なので、誰も彼に興味を持たない。

彼も、周りに興味がないようだ。


でも、私は気になった。


ある日、教室に彼しかいなかった時、思い切って声をかけてみた。


「こんにちは」

「・・・ちは・・・」

蚊の鳴くような声で答える。


「私の名前は、わかる?」

彼は、首を横に振る。

わからないみたいだ。


「私は、わかるよ。菊池くんだよね?」

彼は頷く。


でも、それっきり反応はない。


「ねえ、何見てるの?」

私は、彼の視線が、ある一点を、見ていることに気が付く。


その先に眼を向けると・・・

何もない。

ただの、教室のホワイトボードがあるだけだ。


以前は黒板だったが、最近変わった。

少し、遅い。


でも、そこには何も書かれていない。


私は何を言っていいのか、わからなかった。

悪い意味ではない。

何だか、彼の世界に入り込むのが、いけない気がした。


罪悪感を感じてしまう。


「・・・ねえ・・・」

「えっ」

彼に声をかけられる。


「どうしたの?」

間をおいて、彼は答える。


「ホワイトホールって、知ってるよね」

「うん。ブラックホールと反対で、全ての物を吐き出すという・・・」


彼は続けた。


『もし、あのホワイトボードがホワイトホールなら、何を取り出したい?』

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ホワイトホール 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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