【百合】同級生のふわふわ美少女に陰キャな私が迫られる話

昨日のメロン(きのメロ)

突然の告白

「好きです、付き合ってください」


人生で初めて、告白された。


……女の子に。




■■■


「出席とるぞー。赤松ー、伊藤ー、」


いつも通りの日常。

担任が教室に入ってきて出席を取り始め、皆が気だるげに返事をする。


「…松尾ー、本村ー、森丘ー、」

「は〜い…」



例に漏れず、私も聞き取れるか聞き取れないかのビミョーなラインで返事をした。

そもそも席に座っていることを目視して確認すれば、点呼なんて要らなくないか?


つまらないなぁ、と思いながら窓の外を見た。

飛行機が、青空に映える白い一筋の雲を残している。


もう、夏も終わりだ。


森丘もりおかさん」


隣の席の中尾くんが、声を掛けてきた。

メガネに黒髪の、ちょっと冴えない男の子。


「何?」

「今日の古文って、誰から当てられるか覚えてる?」

「あー…」


そういえば、今日の1時間目は古文か。

あの先生、席順に当てていく人だからなー…。非常に面倒くさい。


赤松あかまつさんじゃなかった?」


正直、あんまり覚えてないけど。

出席番号1番の、赤松さん。出席番号40番の私とは正反対。


中身も正反対だ。明るくて、ふわふわ茶髪のロングヘアーが可愛くて、なんかキラキラしてる。

身長が低いから、小動物みたい。


対して私は_割と1人が好きで、休み時間はスマホか読書。髪型はストレート黒髪ショートで、女子にしては高身長。170は無い、ってくらい。


「そっか、ありがとう」

「あんま信用しないでね」


丁寧にお礼を言ってくれる中尾くん。

これで間違ってたら申し訳ない。




放課後。


今日も寝てたら授業が終わった。


あーあ、中間テストが近いの本当にダルいな。

授業中の睡眠学習の余韻で、ふあぁと欠伸が出る。


眠いけど、テストはマジでやばい。

この前数学赤点だったし。勉強しなきゃなー…、自分の家じゃ集中できないし、図書室でも行こうかな…。



ガラガラ、と図書室の引き戸を開ける。

入口付近に本棚がズラーッと並んでいて、その奥に4人掛けの大きい机が幾つか並んでいる。先客は、1人。


誰もいない机を選んで、椅子に座って荷物を床に置いた。

図書室、案外いいかもしれない。静かだし。


参考書を開いて、勉強を始める。

まずは今日出た課題から。えーっと、問1は……あ、やばい。1問目からサッパリわからないことが、解く前からわかる。


選択肢は、二つ。

諦めて答えを写すか、なんとか自分でやってみるか。

いつもだったら前者だ。ただ今の私は、数学赤点マン。


……やるしかないよなぁ……。


だるさにめげそうになりつつも、課題に取り掛かった。


_ふと集中力が切れて、参考書から顔を上げた。

1人だけいた先客が、私が使っている机より1つ前の机に座っている。


……赤松さんだ。


さっきは目が合わないようにチラッと先客の存在を確認しただけだったから、気づかなかった。


彼女は私の存在に気づいているのかは知らないけれど、真剣な面持ちでノートに向かっている。

いつもの、友達と一緒にいる時とは違う表情。

集中してんなー、すごいなー、と思っただけだった。



……その時は。




次の日。


「森丘さん」


昼休み。

突然話しかけてきたのは、なんと赤松さんだった。


「な、なに?」

「ちょっと話があるんだけど、いいかな」


赤松さんが少し首を傾げたから、彼女のふわふわロングヘアーも横に流れる。

犬の毛みたいでかわいい。犬飼ったことないけど。


「う、うん」


やばい。いきなりすぎてどもる。


「そしたら今日の放課後、屋上でいい?」

「は、はい……」


ビビる私をものともせず、サクサクと進んでいく話。


「じゃあ、待ってるね」


ひらり、とスカートを翻して去っていく赤松さん。

え、赤松さんってこんな積極的なタイプだったっけ?

てか私何かした?


頭に?マークを大量に並べ、首を傾げつつ私は先程まで読んでいたミステリー小説に目を戻した。






__さて、放課後の屋上。向き合う私たち。



ここで、冒頭に戻るわけである。


「好きです、付き合ってください」


人生で初めての、告白。…女の子からの。


意外と、落ち着いた顔をしている赤松さん。

なんか小動物っぽいから、頬を赤らめてもじもじしながら告白するタイプかと思ってた。


……なんて、現実逃避はよそう。


「えーっと…あの…」

「罰ゲームでも、人違いでも無いよ」

「あ、はは……そうですか……」


先回りした回答。違うんか。

じゃあ何、マジなの?


「そのー…申し訳ないんだけど、私は女の子が恋愛対象じゃないので…その…」

「知ってる」

「なら、どうして…?」


問うと、赤松さんはスゥと息を吸い込んだ。

そして、真っ直ぐ私を見つめ直す。


「好きだから」

「そんなことじゃ諦められないくらい」

「……。」


真摯な瞳に、息を飲む。

屋上に、風がサァと吹き抜けた。

揺れる、赤松さんのふわふわロングヘアー。


「森丘さんが私を振る理由って、性別だけでしょう?」


赤松さんが、可愛らしく小首を傾げた。


「ま、まぁ……」

「だったら性別なんて関係ないくらい、私を好きになれれば良いんだよね」

「え、」


え?!そういう展開?!


「3ヶ月、私と試しに付き合ってよ。返事はそれから。ね?」


ね?って。そんなこと言われても。


「いやいや……3ヶ月って流石に長いって……」


たじろぐ私に、赤松さんは更に追い打ちをかけてくる。


「じゃあ1ヶ月。それなら良い?」

「わ、わかった……」


ガンガン攻めてくる赤松さんの勢いに気圧されて、思わず頷いてしまった。


「よし、決まり」

「今日から1ヶ月、私と森丘さんは恋人ね」


駆け寄ってきた赤松さんに、きゅ、と右手を両掌で包まれる。

上目遣いで私を見上げる赤松さんは、とてもかわいい。可愛いけど……けど……。


「はい……」


流されるままに、私は頷くことしか出来なかった__

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