レモン

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白くあかるい死の床で

わたしの手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ



学校で読んだの。

亡くなるまで、奥様は何も分からなくなっていて。

もしね、

もし私がそんなことに。

……



大丈夫。


そっと涙を拭う指が、私を正常に戻してくれる。

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