第31話 関連夢:愛紗のみた夢(3)
凍えるような寒さを感じながら目を覚ます。
「ここは?」
気が付くと、黒い炎に囲まれた、灰色の世界にいた。
ふと、夢にみた白い髪の少年と黒い髪の少年がいた世界を思い出す。
「……ツヨ? ツキカゲさん?」
見回すが二人の姿が見えない。
多分、激しい地震で気を失ってしまったのだろう。なんとなく、ここが夢の中だということが分かった。
「フンッ! フンッッツ!!!」
身体を動かしたり、意識を集中させるが、目を覚ます気配が全くない。
……まぁ、起きたところで、役に立てることもないかもしれないけど……。
「……誰かいるのか?」
「ッ?!」
目の前の炎の奥から声が聞こえた。
「誰かいるんですかぁ?!」
思わず大声をあげる。
「ッ?! 当り前じゃないか! 今は俺の時間なんだから」
「俺の時間?」
「そうっ!」
――コツコツコツ。
足音がした方を見ると、炎の中から赤い目をした黒髪のポニーテールの美少年が姿を現した。
少年は私の姿をみると、呆れたように溜息をつく。
「また”霜辰”(そうしん)の嫌がらせか……お前も大変だなぁ」
「え?」
「あぁ~、もう何も言わなくていい。俺と会話したらお前の存在が消えてしまうかもしれない……俺の姿を見られるだけでも大したもんだ。今から俺との会話には身振りで反応しろ、いいな?」
少年は高圧的な口調だが、真剣な顔で私を見る。
その言葉に私は理解ができないが、ひとまず静かに頷いた。
「よし、言葉は通じるようだな……で? どんな罰でこの世界に来たんだ? 俺はお前を裁かないといけないようだからなぁ」
「!!!」
少年は面倒くさそうに頭をかきながらそう言うが、その目は笑っていない。
……逃げるか?
――ボワッ
だが私の行動を予測したのか、私の周りは黒い炎に囲まれた。
「俺の担当の時に来たお前も悪いっ! まぁ、お前の罪なんて大したことじゃあないとは思うけどな」
気が付くと、少年は私の背後に立ち、私の顔や身体を触りながら何かを探し始めていた。
「……これだな」
少年は私の背中に手を当てると、もう片方の手で”死の契”(しのちぎり)の紋様を宙に浮かび上があがらせる。
「っ?!」
私が驚いている様子には興味がないのだろう。
少年はその紋様をじっくりと見つめていた。
「お前……相当悪いことをしたんだなぁ……」
これはバレたら不味い状況なのだろうか?
「っっつっつつっっかあぁあけぇえええなああぁ!!!」
「?!」
……”カッコイイ”と言った気がする。
どうやら反応は好感触のようだった。
「そうだよなぁ、ここはロクな奴しかいないもんなぁ」
少年は私の背中を軽く叩きながら満足そうに頷く。
「……」
「なんだ? お前も何をしたか分かってなさそうだな……でも記憶を消されるほどの神罰か、ますます何をやったか知りたいもんだぜ」
少年は両手で紋様の細部を一つ一つ拡大したり縮小させたりしながらブツブツと何かをつぶやき始める。
「術の系統は”宙の法”(そらのほう)……いやいや、これで大きな悪さはできない。でも俺の”理の法”(ことわりのほう)にも精通するような気もする……だから俺の姿を見れるのか」
「……」
「ん? お前は何も言わなくていいからな」
少年は偉そうな口調で軽く言い放つ。
「……まぁ、とりあえず俺の”理の法”を書き込んでやるから。それで様子を見ろ、な? それがお前への罰とする」
少年はそう言うと、赤い目を光らせ、宙の紋様を金色に輝かせた。
「~~~~っ!」
――突然、背中の”死の契”からはヒリヒリとした激痛が走り始める。
顔を歪ませるほどの激痛。だが、少年は悪びれる様子が微塵も感じられなかった。
「どうせお前はもうすぐ死ぬんだ、これはお前にとっても損はしないはずだ」
「あ?! ぐううううううぅ?!」
その思いやりのない身勝手な言動には腹立たしさを感じてしまう。
「君……友達少ないでしょ?」
かろうじて声を出すが
――瞬間、体中から血の気が引くような虚脱感に襲われる。
「へぇ、すごいや。俺と話しても存在が消えないなんて。気が強いのも気に入った」
少年は不思議そうに私を見つめる。
「そうだなぁ、また会うことがあれば巫女姫として相手してやるよ」
少年はケラケラと豪快に笑った。
「……その時はお前。きっと後悔するんだろうなぁ」
……なんか、これヤバイ感じだ。
意識は次第に遠のいていった……。
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