第28話 結婚式
ユウキとステラは帰還して、直ぐに宮殿に趣きアトリア議長を訪ねた。
「お姉さま、只今戻りました。ネーロ軍を、せん滅することが出来ました」
「ステラ、ユウキ殿、ご苦労様でした。兵士達にもよろしく伝えて下さい。それから、お母さまとも検討して、貴方たちの結婚式をすることが決まったわ。この戦争の終結宣言も兼ねてね」
「お姉さま、ありがとうございます」
二人が、笑顔を見合わせた。
「これで僕も、晴れてこの星の住人になれるのかな?」
「あら、もうみんな認めているわよ」
「そうだっけ」
ユウキが嬉しそうに微笑んだ。
「ところで、サファイヤはどこにいるの?」
「家にいるわ。お母さまが、陣頭指揮して面倒見て下さっているはずよ」
「じゃあ、姫様のご機嫌うかがいに帰ろうか」
二人は、いそいそと家へ帰っていった。
本当の平和が約束されたサファイヤ星は、都市も田舎もその喜びに満ち溢れていた。
初夏のある日、ユウキとステラの結婚式が宮殿で盛大に行われた。純白のウエディングドレスを身に纏ったステラが、ユウキのエスコートで会場に現れると、その美しさに、ため息と歓声が上がった。実際ユウキ自身も、その姿を見た時は見とれてしまって言葉が出てこなかった。
会場には、世界中から五百名、と国内から七百名の来賓が祝いに駆けつけていて、この模様は全世界に中継されていた。
「こんな大げさな事になるとは思わなかったな」
こういう事が苦手なユウキが、緊張した面持ちでステラを見た。
「あなた、落ち着いて。サファイヤが笑っているわよ」
ユウキが、おばあちゃんに抱かれたサファイヤの方を見ると、ご機嫌のようで確かに笑っていた。ユウキは、緊張している自分が何だかおかしくなってきて、気持ちが落ち着いた。
ファンファーレと共に、アトリア連邦議長夫妻が入場し式が始まった。最初にアトリアがあいさつに立った。
「長い戦争が終りました。亡くなった方も含め、この戦争で戦ってくれた全兵士と、そのご家族に、この場を借りて心よりお礼を言わせていただきます。ありがとうございました。我々は勝ちました!!」
アトリア議長が、拳を上げると、怒涛の歓声が室内を揺るがした。
「本日は妹のステラの結婚式に、世界から多くの方が駆けつけてくれました。家族を代表して皆様にお礼を申し上げます。大変にありがとうございました」
アトリアは、簡単に挨拶し、中央に座った。
続いて、二人がアトリア議長の前に立ち、誓いの言葉を述べると、議長から「夫婦であることを認める」との言葉があった。二人が指輪を交換し誓いのキスをすると、会場から歓声と拍手が沸き上がった。
式は、披露宴へと移り、連邦の副議長が、挨拶に立った。彼は、目に涙をいっぱい貯めて、静かに話し出した。
「ステラ様、ユウキ様、ご結婚おめでとうございます。私共の為に、今日まで、この星の為に戦って頂いたお二人に、この場を借りて心よりお礼を申し上げます。ステラ様に至っては、十四才の頃から、女性としての幸せも、青春も、全てをなげうって、戦いの先頭に立って頂きました。いつの日にか、結婚し、お子をなして幸せに暮らしてほしいというのが、私共、全世界の民衆の想いでありました。この度、如何なる縁か、銀河を超えてユウキ殿という良き伴侶とめぐり会い、愛を育まれ、サファイヤ様が生まれました。私達の願いが現実のものとなったのです。そして、私たちが待ちに待った平和が、ついに訪れました。これ以上の喜びはありません。誠に誠に、おめでとうございます。又、有難うございました」
スピーチが終わると、全員が、スタンディングオベーションで、涙を流しながら大拍手をステラ達に送った。彼の言葉は、そのまま全世界の人の思いを代弁していたのだ。ステラとユウキは起立し、深々と頭を下げて皆の真心に感謝した。
感動の結婚式が終わり、二人は、広場が見渡せるバルコニーへと向かった。宮殿の広場には、ステラの花嫁姿を一目見ようと、数万の人達が集まっていた。天空には、巨大な、立体映像が投影され、遠くからでも、ステラ達の顔が見えるよう配慮されていた。二人が、バルコニーに姿を現すと、
「ステラ様、ユウキ様、お幸せに」
「ステラ様万歳!」
あちこちから祝福の言葉が飛び交い、今まで抑えてきた歓喜が爆発して、万歳の歓呼が鳴りやまなかった。
ステラが、深くお辞儀をして話し始めた。
「皆さん、今日はありがとう、待たせてごめんなさい。……ステラは今、世界で一番幸せです。ほんとうにありがとう」
短い言葉だった。だが、彼女の幸福を、心から願っていたサファイヤ星の人達には、それ以上の言葉はいらなかった。それは、彼女と彼らの勝利宣言に他ならなかった。
ステラはユウキの腕を取り抱き寄ると、片手でⅤサインを高々と青空にかざした。期せずして、
「ステラ様、万歳、ユウキ様、万歳」
みんなの声が、勝鬨が天に響いた。
次に、ステラに促され、ユウキが挨拶に立った。
「私は、このサファイヤ星の平和のために地球からやってきました。その使命が終わったなら、ステラと共に地球に帰ろうと思っていました」
一瞬どよめきが起こった。
「ところが、私の妻は、こんなに綺麗なのに、怒ると非常に怖いんです。あまり我儘を言うと、何をされるか分かりません」
広場にドッと笑いが広がった。
笑いが収まるのを待ってユウキは話を続けた。
「今は、この星の為に生涯尽くすことが私の使命だと思っています。私は、ステラが、この星が大好きです。皆さんと共に、もっともっと幸福な星を築いて行きたいと思っています。若輩者ですが、どうぞよろしくお願いします。サファイヤ星万歳!」
ステラとユウキが手を繋ぎ高々と上げると、賛同の拍手が歓声が轟いた。感動冷めやらぬ彼らは、歓声を上げたり踊ったりして、いつまでも帰ろうとはしなかった。
この後、二人はオープンカーに乗って、市内をパレードした。沿道には、数十万という人たちが待ち受けていて、祝福を受けた。ユウキとステラは、懸命に手を振り、声をかけ、皆の真心に応えた。
すべてが終わった時には、既に夕暮れになっていた。
「疲れていないかい?」
「大丈夫。かえって元気をもらったわ」
二人は、関係者にお礼を言って、帰宅の途に就いた。日は既に落ちて一番星が輝いていた。ステラは車の中で心地よい疲労を覚え、ユウキの胸でスヤスヤと寝入ってしまった。ユウキは、「よく頑張ったね、ご苦労様」と彼女の幸せそうな寝顔を見ながら、ユウキもまた満足感に満たされていた。
空には、二つの月が煌々と輝き、二人を優しく包んでいた。
完
スーパースーツ 安田 けいじ @yasudk2
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