ドライアース — 瞼の向こうの太陽 ―
びしゃご
プロローグ 『永久』と『真』の「聖騎士伝説」
永遠に語り継がれる邪悪な女スフィアと、
それを討伐した赤い髪の聖騎士メロディとブロディの物語。
――――――――――――――――――――――――――――
26歳の若さで死に『アナの赤い髪』と呼ばれた、世界最大アナ帝国17代女聖騎士メロディの壮大な葬儀が終わった1年後。
この星の南にある、ならず者国家のルーベラの街の書屋の店頭に、
『永久聖騎士伝説』というベストセラー本が置かれていた。
その街の、古い小さな借り家一室で、女と男の幼い二人が、
「わたしはメロデーよ! お前は邪悪なスフィア!」
「お姉ちゃん! せめて雷神にしてよ! ボクは男だし」
「だめ! お前は邪悪なスフィア! わたしは正義のアナの聖騎士!」
盲目の母は、子供たちを叱りつける、
「あなた達! 静かにしなさい! 父さんが書き物してるのよ! また父さんにゲンコツされたいの!」
家族の騒然さを他所に、ひたすら文を書いていた夫は、大きく息を吐いた後に…
力が抜けた様に言った。
「やっとできた… 『真』の聖騎士伝説はここにある」
机の隅に置いていた、『永久聖騎士伝説』の本を手に取り、睨み…
「これはド素人が書いたんだろうな? 偽書といえども幼稚なうえ内容がひど過ぎる…だから俺が「スフィア編」も書き足して事実に近いモノを書き上げた」
夫は書き上げた『真』聖騎士伝説の本を手に取り、妻を呼び、少し不安な顔で、
「本がやっと書けた…最初に聞いて欲しいんだ?」
盲目の妻はにこりと笑い、両手で椅子を探しながら、
「ワタシに読み聞かせしてくれるの? もちろん聞きたい。 最近、仕事や家事の間に、あなたがずっと何を書いていたか知りたい」
夫は優しく、椅子を妻の後ろに置き座らせ、
「これを読んで…俺を嫌いになるなよ? なにせ初めて書いたんだから」
座った妻は、優しい顔を、夫の顔へ上げて、
「聖戦で…天に召されていった人達に誓って嫌いになりません」
夫は対面に座ってから1ページ目を開いた
「夕方くらいまでかかるかも…
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