異宇宙転生した俺は宇宙エルフのお姫様や宇宙勇者、宇宙奴隷の少女たちと共に宇宙冒険を駆け抜けてチート宇宙魔力で銀河帝国で成り上がる!

十凪高志

第1話  宇宙エルフの星を燃やせ



「ヒャッハァアーーー!!! 宇宙エルフの星を燃やせぇえーーー!!!!」


 地表からでもわかる、宇宙空間に響き渡る宇宙オークの怒号。

 宇宙オークの宇宙船からせり出した巨大な宇宙バリスタから離れた火矢が宇宙空間を飛び、大気圏を貫いて地表に突き刺さっていく。

 大地に突き刺さった火矢から燃え上がった炎が森を飲み込んでいく。


「キャアアー!! 宇宙オークの宇宙山賊が攻めてきたわー!」


 宇宙エルフたちが悲鳴を上げて逃げ惑う。

 地面に刺さった宇宙火矢の一部が展開し、中から豚を擬人化したような宇宙人が出てくる。宇宙オークだ。

 宇宙火矢はただのミサイルではなく、襲撃用宇宙ポッドの機能も兼ね備えており、中には宇宙オークたちが収納されていたのだ。


「燃やせ燃やせぇー!! 男は殺して食糧だ、女は犯して奴隷だぁー!」


 下品な叫びをあげながら、宇宙オーク達は飛び出してくる。


「ヒャッハァー!!」


 刀身に稲光をまとわせた電磁斧を振りかぶる宇宙オークは、近くにいた宇宙エルフの少女へと電磁斧をたたき降ろす。

 つい先ほど自分が言った言葉すら覚えていないのか、その電磁斧が命中すれば宇宙エルフの少女は確実に即死するだろう。

 考えが至らないのか、それとも代わりはたくさんいるから見せしめのつもりか。

 何にせよ――

 そんな暴挙を、許すわけにはいかないのだが。


「なっ!」


 宇宙オークの驚いた声が響く。


 俺が突き出した光の刃――【勇者の杖(アエティルケイン)】が宇宙オークの電磁斧を受け止めていた。

 通常のただの斧なら、アエティルケインの刃で逆に焼き切れているだろうに、そこはさすが電磁斧と言ったところだろう。


「! ショウゴさん!!」


 俺に助けられた宇宙エルフの少女が、俺の名を呼ぶ。しかし本当に、よくピンチになる女の子だ。まあその職業、立場上仕方ないとも言えるのだが。

 だったら、それを守るのが宇宙勇者――見習いだけど――の俺、ショウゴ・アラタの役目だ。

 そう、きっと俺は、この宇宙を守るため――ではなく、彼女を守るために、はるばる21世紀の地球から、異宇宙転生してきたのだから。


「大丈夫か、スノウ。

 早く立って、みんなと一緒に逃げろ」

「は、はい」


 宇宙エルフの少女、スノウは俺の言葉に素直に従い、立って逃げる。


「ブヒャァー! なんだてめぇ。蛍光灯振り回しやがって!」

「蛍光灯じゃねぇよ」


 宇宙オーグが電磁斧を押し込んでくる。俺は力を入れ、それを押し返す。


「勇者の杖だ」


「んだとてめぇ。

 ……まさか、宇宙勇者か! 宇宙冒険者の中でも選ばれた者しかクラスチェンジを許されないという、最上位冒険者にして銀河帝国の調停者!!

 てめぇみたいなガキが、そんな宇宙勇者のはずがねぇ!!

 さてはその剣盗んだか何かだな!!」

「残念、本物だよ」


 俺は力を抜き、アエティルケインから光の刃を消す。柄に刃が収納されたそれは、手に収まる懐中電灯のようだった。

 急に拮抗していた剣が消えたことで宇宙オークはバランスを崩し前のめりになる。俺は当然、片足を軸に一回転し、その場からずれ、そして――

 再びケインを作動させ、光の刃を灯し、回転にまかせて宇宙オークに斬撃を浴びせる。


「ぶひぃゃー!!」


「……まあ、確かに借り物だってのは否定しないけど。見習いだし」


 宇宙勇者にとって勇者の杖アエティルケインは唯一無二の相棒だ。

 宇宙勇者見習いは、自分のケインを持たない。故に宇宙勇者ギルドから貸し与えられたケインを携行するのだ。


「隊長がやられたー!」

「落ち着け、奴は我らの隊長の中でも格下だ!」

「いくら宇宙勇者と言えど、囲んで撃てば!」


 宇宙オーク達はそう言うと、腰に下げていた宇宙レーザーガンを構える。


「死ねぇ! ヒャッハー!!」


 宇宙オークたちが次々と宇宙レーザーガンを撃つ。

 幾条もの光が俺を襲うが、しかし。


「んなっ!?」


 宇宙オークたちの息をのむ声が響く。


 俺の持つアエティルケインの光刃が、そのすべてを弾き返したからだ。

 それどころか、


「ぶひっ!」「ぐぎゃっ!」


 弾き返されたレーザーが次々と宇宙オーク達を貫いていく。


「な、なんて奴だ……!」


 宇宙オーク達が恐れおののく。

 彼らは知らないが、このアエティルケインは宇宙レーザーガンなどのエネルギーに磁石のように引かれる性質がある。そして触れたエネルギーには反発する。

 それを活かせばこのような芸当も可能なのだ。といっても、ケインを持てば誰でも出来るものではなく、やはり天性の勘や訓練が必要だが。


「さて……」


 宇宙オーク達が倒れ伏したのを確認して、俺はスノウが走りさったほうを向く。

 そこには……


「おいおい……勘弁してくれよ、この展開」


 宇宙オークに捕らえられているスノウがいた。


「ショウゴさん……!!」


 宇宙オークに羽交い絞めにされているスノウが悲痛な声をあげる。

 あっさりと捕まってるし!

 ……いや、見ると他の宇宙エルフも捕まっている。年端もいかない子供たちだ。まあ、子供と言っても確実に俺より年上だろうけど。13、4歳にしか見えないスノウも百歳は越えていてるというし。

 おそらくは子供たちが人質になっていて、それを見たスノウも隙が出来て捕まってしまったのだろう。

 子供を見捨てられないのは立派だけど、少しは自分の事を優先して欲しいと思う。

 まあ、ここで見捨てて逃げられないのがスノウだし、仕方ない。俺だってそうする。



「ぶひーっひっひ!! 宇宙勇者だかなんだか知らんがこれで我らが勝ったも同然だオ~~ク!!」


 今まで語尾にオークってつけてなかったじゃねぇかお前ら。とったつけたようになんだよそれ。


「くっ……!」


 俺の歯ぎしりに、宇宙オークは気を良くして言う。


「ぶひっひっひ、その光る棒を捨てな宇宙勇者。この娘がどうなっても知らないぜぶひ……知らないオ~クよ」


 言い直しやがった。

 そしてこの豚は、スノウの首もとに突きつけたナイフを、胸元に動かし、そして一気に下へと降ろす。

 てめえ!!


「ぶひゃひゃひゃ!!」


 スノウの服が引き裂かれ、肌が露わになる。幸いにも控えめなスノウの胸は、それによってぼろんと丸出しにはじけて先端まで周囲の視線に晒される、ということはなかった。

 谷間にもなっていない、白い柔肌の胸元が見えただけだ。スノウの胸がもっと大きかったら宇宙の真理たる斥力とか引力とか弾力とかそういうのの作用によって全部見えていただろう。そういう意味では救われた。

 だが、こいつはぶっ殺す。全殺し決定。宇宙の意思が俺にそう語りかけている。


「さあ、この娘の生まれたままの姿を衆目に晒したくなかったら今すぐそれを捨てろオ~ク。

 といっても最後にはみんな俺らに美味しくいただかれるんだがオ~ク!!」

「……わかった」


 俺は黙って、ケインの刃をしまう。


「それじゃだめだ。投げ捨てな!!! こっちに向かって高く投げ捨てるんだオ~ク!!」


 スノウを羽交い締めにしている宇宙オークが下品に笑いながら言う。


 ……仕方ない。


 俺は素直にそれに従う。

 宇宙オークの命令通り、俺は素直に手に持っていた勇者の杖アエティルケインを投げ棄てる。

 その光景を見て、スノウを捕らえている宇宙オークは勝利を確信してにたりと笑う。


「あっ」


 しかし、「それ」を知っていた宇宙オークがいたらしい。声をあげる。


「まずいブタ、隊長。

 宇宙勇者の武器って確か……」


 そう宇宙オークの言葉が終わるか終わらないか。

 俺は黙って目を閉じて、心の中で手を伸ばす。


 この宇宙には、万物に宿るエネルギーか存在する。

 俺のもと居た世界では、創作や伝説において魔力とか気とかオーラとかそんなふうに言われていた力と、だいたい同じと思っていいだろう。

 その力……エーテルと呼ばれるものを使い、まさしく魔法や超能力のようなものがこの宇宙には存在した。

 俺の借り受けている勇者の杖、アエティルケインもそのエーテル力を以て起動する、いわば魔法の武器だ。

 そしてそれがどういうことかといえば。

 アエティルケインは、所有者として登録されたものがエーテル力によって遠隔操作が可能ということだ。


 空中で弧を描くアエティルケインが、誰もこ触れていないのに、その光の刃が起動する。

 そしてそれは、


「あっ」


 スノウを羽交い締めしていた宇宙オークの脳天を見事に貫き、尻まで串刺しにした。


「ぎゃあああああオーク!!」

「だから言ったのに!!}

「言ってないし!!」


 そしてそのまま、ケインはさらに弧を描き、子供たちを羽交い締めにしている宇宙オークのもとに飛ぴ、そのまま連中の腕を貫く。


「ぶぎゃこぃいい!!!」


 宇宙オークが悶絶する。そして宇宙エルフの子供たちが宇宙オークの手から放れる。スノウがすかさずその子供たちを抱き抱えた。


「てめえ!!」

「遅い」


 スノウに手を伸ばす宇宙オークだったが、そこにすべりこんだ俺が、すかさずその顎を蹴り上げる。


「ぷぎゃひぃーっ!!」


 倒れ込んだ宇宙オークの眼前に、俺はアエティルケインをつきつける。


「勝負ありだ」

「くっ……かくなる上は」


 ケインを突きつけた宇宙オークとは別の宇宙オークが叫ぶ。


「ヤツを囮にして逃げるぶひーー!!」

「あばよ勇者!!」

「ヒャッハァー!! 逃げるのに荷物になるから獲物はおいてくブター!!!」

「これで勝ったと思うなよー!! 我々は先遣隊にすぎぬのだぁー!!」


 一目散に逃げ出す宇宙オークたち。

 宇宙火矢の中に逃げ込み、ドアを閉める。

 そして、宇宙火矢が逆噴射を行い、次々と宇宙へと飛び立っていく。

 その姿を見ながら、俺は、


「あーあ。逃げない方がまだマシだったろうに」


 非殺傷のエーテルスタンモードに設定していたアエティルケインで眼前の宇宙オークにとどめをさして、言った。


 そして、宇宙に――地表から見たら青空だが――大量の輝きがともる。真昼の星と言ったところか。

 あれは攻撃だ。

 俺の師匠である宇宙勇者、【星空の勇者】の称号を持つ少女の必殺エーテル攻撃。

 次の瞬間。


「スターシュテルン……グリッター!!」


 微妙に頭わるそうな、重複してそうな必殺技名が宇宙に響く。

【星々の煌光】という意味の師匠の技だが、別に星々というのは星という単語を二つ並べるものではないと思う。

 突っ込んだらへそ曲げそうなので黙っておくけど。

 そして大輪の光の花が咲き乱れ、宇宙オーク先遣隊の宇宙船は、まさしく空の星となり散った。

 うん、師匠って手加減しないからなあ。さすがに宇宙空間でやられたら、みんな死んだな。

 合掌。


「また……助けてもらいましたね」


 子供たちをつれたスノウが礼を言う。子供たちも無事だ。

 人質にされているのに平然とケインを振るったのは、絶対に当てない自信があったから……ではなない。

 もし間違って当たっても、非殺傷のエーテルスタンモードのケインの刃なら。対象のエーテルにダメージを与え、気絶させる。死ぬことはないということだ。もっとも衝撃はすごいし痺れるし痛いので、当たらないに越したことはないけれど。


「おやすいご用ですよ、お姫様」


 俺はおどけて言う。

 しかしこの言葉は、まさしく事実でもある。

 彼女は、とある星の……宇宙エルフの正当な王女殿下なのだ。

 この星へは、親善大使として訪れていたのだ。

 宇宙エルフは単独の惑星人種ではなく、銀河全体に広く分布している。近隣の星は同盟を結んでいることが多いが、星域が離れていると交流も無いことも多い。

 そこで銀河帝国に所属している宇宙エルフ星系団の代表として、他星系の宇宙エルフたちと交渉を行っている……ということだ。

 若いのに仕事熱心な事。いやまあ俺より遙かに年上だけど、それでも宇宙エルフとしてはまだ少女だ。それなのに本当に立派だと思う。

 

「もう。それはやめてくださいショウゴさん」

「わかってますよ、でも一応これは公の場みたいんものなので」


 子供たちもいるし。

 彼らは。伝説の宇宙勇者の存在に、その剣に目を輝かせて見ている。

 うん、気恥ずかしいな。俺はまだ見習いで、そんなに尊敬されるほどの人間じゃないんだけど、まあここで変に口に出して謙遜する事もないだろう。


「公務の方は?」

「正直芳しくないです。ここの宇宙エルフたちは友好的なんですが、差し迫った問題があってそれどころではないと。

 ですから、ショウゴさんたち――宇宙勇者の方に来てもらったわけです」

「そしたらそのタイミング宇宙オーク襲撃と」

「はい。というか、その宇宙オーク襲撃こそがこの星に差し迫っている問題なんです。

 今、この星は宇宙オークの宇宙山賊たちにねらわれていて……」

「なるほど。そりゃ依頼も来るわな。

 俺たちの仕事は、交渉を上手く進めるための障害となる宇宙オークどもの対処、か」

「はい。頼りにしています、勇者様」

「そう呼ばれるとこそばゆくて嫌なんだけど……」

「おかえしです」


 そうスノウが笑う。


 宇宙オークの山賊船の残骸が大気圏に突入し、流れ星となって消えていく。

 その光景を目にしながら、俺は思い出す。

 あれからもう一年か……



 あの日、俺がこの宇宙に、異宇宙転生した日から。

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