鳩は平和を、雲雀は何を?~見習い君主の行軍録~
@H_hisakata
Introduction 世界に秩序を敷く者達
あらゆる法則を歪めるもの、
それが現れたことで、世界は姿を変えた。
太陽と月が天地を巡った数は最早数え切れず。
長きにわたり乱された秩序の中、人々は苦難の中にあった。
時に黄金は朽ちて輝きを失い、恵みの雨は刃と変じて心身を引き裂く。
神を名乗る傲慢は気ままに世界を弄び、歓迎されざる隣人と手を取り合う術はない。
たゆまぬ探求は再演しえぬ詭弁になり果て、寄る辺たる文明は崩壊した。
それでも、人はこの世界を生きていた。
混沌を見出す霊感をもって、現れる異界の理を調律する魔法師。
混沌をわが身に刻みねじ伏せ、己の願いを世界に押し付ける邪紋使い。
彼らの庇護の下、しかし混沌を消し去ることが叶わぬまま、ただ生きのびていた。
だが、ある時混沌を消し去ったものがいた。
混沌を消し去る唯一の存在―
初めに聖印を作りだした始祖君主は、その一片を同士に分けて願いを託した。
託された一片は同士の願いに応え、それぞれの
今や
いずれの有り様に優劣はなく、ただ各人の心を映して聖印は天恵を授けるのみ。
それはただ、この世界に秩序を取り戻すために。
視界ぼやける千里の先に、致命の一射を放つは
献身厭わぬ愛騎とともに、縦横に駆けるは
ただ漫然と駆けまわるに非ず、止まらざる
得物を振るいて肉薄し、如何な敵をも征すは
練達の
混沌に由来する万象を標的とし、一切を挫くは
あらゆる暴威を前にして、いずれも阻むは
万民を背に背負えども、万難が降り注ごうとも、
身の丈超える得物を背負い、一騎にて万兵に抗すはこれ
精兵に非ずんば疾く退くべし、
時に請わねば治らぬ傷を、刹那に癒すは
高みに届かぬ凡愚の一手、神域に導くはこれ
君主の掲ぐ
多くの混沌が払われ、竜の巣から人類は再び歩み出した。
だが、混沌は未だ世界に満ち、今や我欲の為に君主同士が相争う時代。
それに終焉をもたらすはずの婚礼さえ、
今再び、世界は疑念に包まれ、秩序が失われんとしていた。
・・・・・・
空の青、雲の白。
海の青、飛沫の白。
大地を離れ、琥珀の目に映るのは同じ光景ばかり。
風と波に亜麻色の髪を揺らし、照り付ける陽光に白磁の肌は朱が浮かぶ。
暁の牙、鋼球走破団が一員アルエット。
彼女が向かうは暗黒大陸―未だ秩序回復を求め苦闘の続く地。
人間による戦火の燃え上がる故郷を離れ、混沌とせめぎ合うある街に彼女は赴いた。
これは、
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