第13話 家主


 知らない天井だ。小さなシャンデリアが吊り下げられいて、壁はきれいな白塗り。日本にいたときに写真で見た英国貴族の部屋そのものだ。


 「どこだよ、ここ」


 魔法の修業をいったん切り上げ、精神世界から戻ってきたと思ったら全く知らない場所にいる。異世界に転生したことは夢だったのか?


 視界に入ってくるシャンデリアを眺めながら考えていると、違和感に気づいた。よくよく見ると蝋燭やLEDライトで照らしいてるわけでなく宙に浮いている黄色の水晶が辺りを照らしている。前世では不可能な現象だ。やはりここは異世界なのか?


 不測の事態に頭痛がしてきたがいつまでも寝っ転がっているわけにはいかない。ひとまず起き上がろう。布団をどかしベッドのふちに腰掛ける。長時間寝ていたせいなのか硬直している筋肉をバキバキと音を立てながら解す。全身が痛い。特に肩、腰、首がびっくりするぐらい痛い。年寄りにでもなった気分だ。


 軽いストレッチをした後何かないかと辺りを見回す。だれか親切な人が魔法の修業をしていた俺を有難迷惑にもここに連れてきてくれたおかげで全く情報がない。早くここから抜け出したいのに。


 するとベッドサイドに置かれている机が目に付いた。机の上には紙切れと水差し、コップが置いてある。他にも何かないかと見まわしたがそれ以外何もない。高級そうな見た目のわりに物が少ない簡素な部屋だ。


 紙以外には目ぼしいものがなさそうなので、紙切れを手に取りそこに書いてある文字を見る。俺は日本語以外にも英語なら少し話せるし、一応ほかの言語も見たことはあるが、この紙に書いてある文字は見た事がない。法則性があるため辛うじて文字ということが分かるが内容の検討が全くつかない。


 まあ、よくよく考えてみれば使われている言語が地球の言葉だとかそんな都合のいいことがあるわけない。今の俺は、この家の家主を責めるよりも転生させた神様を責めてやりたい。


 「どうせなら文字ぐらい読めるようにしてからこっちに送れよ」


 言葉もわからないまま町の近くに転生したら人と会ったときに意思の疎通できない。最悪殺される。細かいところまで配慮したならここもちゃんとしてくれよ。と、ここにいない神様に悪態をつく。


『エリアス創造神の加護の効果により神位魔法言語を獲得しました』

『条件が満たされたためステータスの【言語】の項目が解禁されました』


 聞きなれた声が聞こえた。それと同時に頭の割れるような頭痛に襲われ視界がゆがむ。パチパチと目の前がはじけるような感覚に襲われる。


 それから一分ほどで頭痛が治まった。悪口を言ったから神様から天罰が下ったのかと思ったが、どうやら神様の加護の効果のおかげで文字が読めるようになったらしい。 頭痛は知識を脳にぶち込まれた時の副作用だったようだ。


 前言は撤回だ。神様はちゃんと配慮してくれたらしい。もしほかの人の前で、こうなっていたらどうするつもりだったのだろうとかの疑問はまた今度にしておいてやろう。


 まあそれはともかく、このスキル神様の加護だけあって効果がすごい。まるで昔から覚えていたかのようにこの言語を使うのに必要な知識を引き出すことができる上にそれを使いこなすことまでできるようになった。


 再び紙切れを手に取り文字に視界を落とす。今度は完璧に読むことができる。


______________


 体の調子は大丈夫ですか?まだつらいようでしたら、いくらでも滞在して大丈夫ですのでしっかり休んでください。

 万全になったら部屋を出て真っ直ぐ進んだところにある一番大きな扉の部屋に入ってきてください。


                                イリア


追記

 水差しの水はすきに飲んでかまいません。

______________


 きれいに整った字で書いてあった。ここの家に住んでいる『イリア』という人からの書置きらしい。一番大きな部屋にいると書いてあるのだからこの人が家主なんだろう。


 文書の内容によると、いくらでもここにいていいらしい。体が痛いくらいで体調に異常はないのでさっさとこの部屋から出ることにしよう。とその前に、水を飲んでいいとの事だったのでありがたくいただこう。のどが渇いていたので助かった。水差しからコップに水を移し3杯ほど飲み干した後、部屋を出た。


 扉を開けて、廊下に出ると紫色のスリッパが置いてあった。それに履き替えてこいということか。流石に裸足で廊下を歩きたくないので助かった。


 どうやらこの家は木造のようで丁寧に手入れされた調度品が豪華になりすぎない程度に置かれており、床には暗い青色の絨毯が敷いてある。ここの家主は豪華絢爛みたいなのは趣味じゃないようだ。


 色々と真新しいものが目に入る中あることに気づいた。この家というか屋敷は俺のいた客室からここにたどり着くまで結構な距離があったのに人影一つない。正直不気味だ。そう思うと怖くなってきた。他の部屋の扉や階段もあったが、俺は一直線に書置きに書いてあった部屋に向かった。


 少しの間早歩きで移動していると、目的の場所らしき所にたどり着いた。この部屋の扉は一番大きいし他のところと違って鍵付きの扉になっている。ここであっているだろう。


 俺は扉の前に立ちノックをした。すると、どたばたと物音がした後扉がひとりでに開いた。


 「どうぞ」


 若い女性の声が聞こえた。入室の許可が得られたようなのでそのまま部屋に入ると

椅子に座っている女性と目が合った。


 「そこにすわって」


 その女性は自分の座っている椅子の正面、机を挟んだ反対側にある椅子を指さした。


 「では、遠慮なく」


 俺は指示されたとおりに椅子に座り、改めて女性を見る。物静かで落ち着いた印象で、歳は18~20ぐらいだろうか肩までの長さくらいの短髪で髪色は明るい青色をしている。コスプレのような違和感があるものではなく自然な髪質だ。流石異世界。


 そしてとてつもない美人だ。きれいというよりは可愛いといった感じで、翡翠のような目は透き通っていてとてもきれいだ。


 俺が観察をしていると彼女は話を始めた。顔をまじまじと見られていることに若干戸惑っているようだ。


 「えっと、まず、体調は大丈夫?」


 大丈夫というか、体調が悪くなった記憶がないので返答に困るがひとまず、話を合わせておく。


 「大丈夫です、部屋を貸していただきありがとうございました」


 「そっか」


 なぜか安心したような顔をした後、言葉をつづけた。


 「あ、そうだ名前おしえてなかったね。私の名前はイリアといいます、君の名前は?」


 やっぱりこの人がイリアだったか。


 「カイヤです」


 「分かったカイヤ君ね、よしじゃあ、お互いの名前もわかったことだし君がなんでここにいるかを説明するね」


 イリアさんは確認するようにこちらを見てきた


 「わかりました」


 そうして、イリアさんは状況を簡単に説明してくれた。


 簡単に整理するとイリアさんは、魔神という魔法と魔力の神様だったらしい。ただ神様といっても創造神みたく日々仕事に追われていて、休む暇もないわけではなく1年に一回やるかどうかの頻度でしか仕事がない。要は暇をしていたらしい。


 そんなある日、ぼーっとしながらエリアスの世界を神界から見ていたらえぐい密度の魔力を無差別にまき散らして修行している俺を見つけたらしい。ただ、そのこと自体は悪いことではなく今の世界には魔法の修業をそんなに熱心にしている人が珍しくみえたので感心していたらしい。


 それから俺の様子を度々の見ていたらしいが一週間たっても一か月たっても同じ場所で休憩もなく修行していることに気づき心配していたらしい。


 そして見始めてから三か月たったある日急に俺の魔力の反応がなくなったのに

気づいたイリアは焦って、ここに呼び出してしまったと。これが俺がここにいる理由らしい。


 魔法の反応がなくなったのは修行を切り上げたときだろう。ちゃんと確認してから呼び出してほしかった。俺を心配してくれてやったことなので気にしてはいないが。


 そんなことよりも三か月も修行してたのか。没頭しすぎだろう。体調に問題はないし、いいか。


 頭の中、ひとりで問答をしていると。黙っているのを、怒っていると受け取ったのかイリアさんは申し訳なさそうな顔をして聞いてきた。


 「ごめんね、勝手に呼び出して怒ってるよね」


 確かにわけのわからないところに何の確認もせずに呼び出されたことは迷惑以外の何物でもない。それにしても何故この人は神様なのに、こんなに下手したてなのだろうか。


 「ああ、考え事をしていただけです。怒ってませんよ」


 「そっか、よかった」


 「それより俺はエリアスに帰れるのでしょうか」


 「うん、今日はむりだけど明日は大丈夫だよ」


 安心した。ちゃんと帰れるらしい。


 「今日は泊っていきなよ、ご飯もちゃんと出すよ?」


 そういうことならと俺は明日までイリアさんの家に泊ることになった。








第13話の最終ステータス

_______________


 【名前】カイヤ

 【年齢】18

 【種族】人族【亜種】

 【Lv】62

 【HP】640(640)

 【MP】970(970)

ー【能力値】

 【筋力】840+6000

 【魔力】980+6000

 【知力】1010+6000

 【幸運】1000+1000

 【防御力】800+6000

 【精密性】780+6000

 【敏捷性】920+6000

ー【スキル】

  中級蹴術Lv5

  初級蹴技Lv6

  初級基礎能力強化Lv6

  身体強化Lv5

  探索Lv5

  精神統一Lv10(MAX)

  明鏡止水Lv10(MAX)


  炎魔法Lv1

  氷魔法Lv1

  嵐魔法Lv1

  金魔法Lv1

  聖魔法Lv1

  闇魔法Lv1

ー【ユニークスキル】

  魔人Lv2

  幸運

  解放

  異常進化

  融合

  分解

  早熟Lv3

  慧眼Lv1

  大器

  調教

  掌握

  教祖Lv1     

  作成Lv1

  魔力覚醒

  魔力支配

  魔力回帰

ー【加護】

  運命神の寵愛

  エリアス創造神の加護

  地球創造神の加護

ー【称号】

  亜種

  進化の系譜

  転移者

  魔王

  教祖

  運命の覇者

ー【言語】

  神位魔法言語

ー【能力開放】

  魔術

  魔法

ー【職業】

  修練者

  初級万魔導士

_______________


・・豆知識・・


創造神と魔神は同格の神様

魔神の部下には魔法神や魔力神がいる



(2021.1.24 改稿)



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