追放されたスパイは世界最強 ~大戦が終結して用済みだと組織から追放されたので、故郷の幼馴染と気ままに暮らす~

@knight-one

プロローグ

「お前は確かに、世界最高で最強のスパイだ。だが、時代が変わったんだよ」



 その男――諜報機関の最高権力者は、俺に向かってそう告げた。


 銃口とともに。



「これまでお前に与えられていた超法規的特権は、すべて剥奪。すでに財産も凍結した。もうお前の手元に残るものは、何もない」



「……さあ、どうかな」



「はっ、信じられないか? だが事実だ。


 この世界に――もはやお前の存在は不要だ」



 男が撃鉄が起こす



「最後に、言い残すことは?」



 俺は男の言葉を黙って聞いていた。



「弾の重さを、忘れたのか?」



「……なに?」



 男がはっとし、慌てて引き金を引く。


 だが何も起きない。


 どうやら男は、椅子に座ることに慣れ過ぎていたらしい。


 青ざめた男に、俺は代わりに銃口を向けた。



「残るものは、あるさ」



 俺は男の額と胸に銃弾を叩き込み、その場を去った。



 たったひとつだけ、俺に残されたものがある。





 ――スパイとしての技能だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る