4-4.『皆がいれば無敵だった』
「母親に
――エーデルワイス・ウルフェンシュタインは、物心つく前に両親に捨てられ、流れ着いた
「じゃあワイスは……
「“家族”がいたよー、四人。みんな孤児で、肌の色もバラバラだけど、大切な家族。……血が繋がってるだけの他人なんかより、ずっと」
エーデルワイスというファーストネームは、彼女が“家族”と呼び慕う
一方でファミリーネームは、彼女を保護したブレンダンが雰囲気で付けたものだ。
「そうなんだね……どんな人たちなの?」
問われたワイスは、天井を
「
「一番年上の
「歳はあたしより一個下だけど、
あたしによく
「あ、
不意に寂しげな溜め息が漏れる。白銀に色づいたそれはカウンターの上に
「あぁ、シルヴィのことも忘れてないよ。んぁもー、ごめんて」
前肢を持ち上げてぽかぽかと
「シルヴィはね、同じ日に拾われた野良犬だったんだ。あたしによく
「
「他の
「家どころか毛布もないから、
思い出を
表情を
「そっかぁ。家族の人たちは今も元気にしてるの?」
「みんな死んだよ」
口調はそのままに、告げられたのは非情な現実。
絶句するアナスタシアを尻目に、ワイスは首から下げていたチェーンネックレスを引っ張り上げた。
極小の鎖に連なっていたのは、短辺が丸く削られた小さな鉄板――
おそらく
数は五枚。ワイスも含めれば、話に出てきた孤児たちの数と符号してしまう。
アナスタシアはいよいよ色を失い、自らへの
「ごめん、なさい……」
「え? なんで謝んの?」
「な、なんでって……私、貴女に嫌なこと思い出させたのに……」
「いや、ナターシャが殺したわけじゃないじゃん。悪いのは『
「……『
『そう。あたしの家族はみんな、そこで殺された」
音立てる鎖は、怒りを噛み殺す
『
『インキュナブラ』の衰退と崩壊は、五年前に起きた唯一の医療事故が原因とされている。
だがそれはあくまで表向きの話で、ただのきっかけに過ぎない。
その裏には、隠された真の理由があった。
「あたしらは
「最初は、ちょっと喜んでたんだ。屋根のある場所で寝れるし、食事も
ワイスは口の端を吊り上げる。出来上がった笑みには、彼女にしては珍しい自嘲の色があった。
「部屋にいる他の奴らが段々減っていってるのも、孤児院とかに送り出してくれてるんだと思ってた。……でも違った。『
――『〈
世界各地の
『老いと死の存在しない
〈
一部の出資家や
医療神話もろとも島内の統治機構は崩壊し――その後の
ワイスもまた臨床試験の被害者であり、そして数少ない生存者。
今や島中に
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