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一足一刀の間合いを取り、互いに深く腰を落とす。
気分は、さながら西部劇の決闘シーン。
風に吹かれてタンブルウィードでも転がって来れば、更にそれっぽく──ならんか。こんな鳥居だらけの斜め上に和テイストな景観じゃあ。
「弾いたコインが落ちたら、合図だ」
スカルマスクを閉じ、懐の金具に挟んだ古いハーフダラーを摘む。
こういう小道具の準備には余念が無い。いつ如何なる時、映画みたいなワンシーンを演じられるかなど分からんからな。
小気味良い高音と併せ、銀色の硬貨が宙を舞う。
「しいいぃぃぃぃ」
「ぅるるるるるる」
双方、添える程度に柄を握り、静止。
張り詰めた空気が、尚も重圧を増す。
あらゆる音が失せて行く。あらゆる色が抜け落ちて行く。
「豪血──」
ああ。心臓の鼓動が邪魔だ。
糸で縛って、黙らせよう。
「──『深度・弐』──」
完全索敵領域のリソース全てを、眼前の剣士にのみ集約させる。
「──『深度・参』──」
コインが、石畳を跳ねた。
二筋の閃光。
広大な階層内を、奔り抜ける。
半ばより断ち折れた転生刀の刀身が、墓標の如く、突き立った。
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