552・閑話29
「これは、あなたが、やったの、ですか?」
死屍累々と積み重なる、人、人、人。
いずれも直視し難い重傷を負った、息をするだけでも五臓六腑に苦痛が募るだろう、惨憺たる有様。
「まだ、おさないのに。たいしたもの、ですね」
「……あァ?」
彼女に対し億劫げな反応と視線を向けたのは、齢十を幾らも回っていない灰髪の少年。
赤い返り血と、青く酸化した己の血に塗れた姿。
周りに倒れた者達と比しても劣らぬ、半死半生の容態。
にも拘らず、まるで痛みなど感じていないかの如く、片方が折れ曲がった脚で平然と立っている。
常識的なタフネスの域を遥かに通り越した、異端極まる光景。
「んだよ。誰だか知らんけど、見せモンじゃねぇぞ」
「ああ。ああ。これは、しつれい」
神事で鳴り渡る鈴の音に似た、穏やかな声。
「ただ。いまから、すでに、そのときが、たのしみ、で」
けれど声の内に秘められたものは、清廉と呼ぶに程遠く。
「いつか。あなたの、もつ、すべてが」
邪悪と呼ぶには、無垢が過ぎて。
「わたしの、ものに、なる、ときが」
根の部分より、人を大きく外れていた。
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