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「ツキヒコ。僕、考えたんだ」


 くそったれ。この鎖、樹鉄刀でブッ壊そうにも気勢を削がれる。

 さては前に果心が持ち出した奇剣シリーズの一作だな。


「銘は……あー、なんだったか」

「第七子『ソードライン』って呼んでたわよ」


 そうそれ。音にソードと入ってるだけで、もはや剣の意味を含んだ名前ですらねぇ。

 そして御教授ありがとうリゼ。出来れば撮った写真をSNSに載せないでくれたら、もっと嬉しい。


「『新種の動物発見ぴょん! 体長一九〇センチ以上、髪も目も灰色、手を出したら噛まれる系!』」


 時既に遅し。広大な電子の海で人を見せ物にしやがって、ネット弁慶め。

 誰が新種の動物だ、誰が。噛まねぇよ、失敬な。


「……ねぇツキヒコ、聞いてる? 僕、考えたんだよ?」

「あァ? 吉田と同レベルのアホが脳みそコネ回したところで疲れるだけだぞ。下手の考え休むに似たりってな、やめとけやめとけ」


 純粋な親切心からアドバイスを贈ったのに、ピンハイヒールで頭を踏み付けられた。

 惜しい。あと三センチ右に足が来てりゃ、踏まれ際アキレス腱を噛み千切ってやったんだが。






「考えた。僕は考えたんだ。ナンパを邪魔された報復の内容を」


 色鮮やかに火花が散り、ヒルダの双掌へと顕れる一対の石剣。

 併せて燐光が渦を巻き、仄かに脈打つ黒い装甲と成る。


「そして妙案を思い付いたんだ。凄いだろう褒めて」

「あー駄目だ『双血』を使う気にならん。やっぱ関節外して抜け出すしかねーか」

「壊さないでよね。私のなんだから」


 鼻面の一ミリ先に石剣を突き立てられた。

 間近で見ると刃ぁガタガタ。格好だけで評価するなら、およそまともな武器とも呼べん。

 こんな有様で、どうやってあんな斬れ味を出せるのやら。


「褒めて」

「……思い付いた内容次第だな」


 余程に自信があるのか、不適な様相で微笑むヒルダ。


 そして、この場所――男鹿鬼ヶ島七十階層の中心にて座すフロアボスを指し、高らかに宣言した。


「キミが狩る予定だったアイツ。僕が貰っちゃうね?」

「成程」


 そりゃ大した嫌がらせだ。見事なアイデア。

 叩きのめすぞ貴様。





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