411・Rize






 今の今まで忘れてたけど。そう言えばu-a以外の、私を欲しがった奴等にも、何度か似た質問を受けたことがあった。


 分からない。なんで、どいつもこいつも、明確な答えを欲しがるのだろう。


 例えば漫画や小説だと、窮地を救われたヒロインが主人公に、みたいな展開が王道だけど……正直ああいうのは滑稽に映る。

 だって。そうしたアクシデントでも起こらなければ有り得なかったと、声高に吹聴してるようなものだし。

 

 私は、異なる二人が隣り合って足先を揃えるために、何かしらのが必要不可欠とは思わない。

 そんなものに頼らなければ成立しない関係が、長続きするとは思えない。


 …………。

 確かに月彦は頭おかしいし、細かいデリカシーに欠けてるし、栄養バランスに煩いし、三本に一本は意味不明なゴミ映画観せてくるし、なんなら女の趣味も悪い。


 でも。一緒に道を歩く時は必ず車道側に立ってくれるし、私に重い荷物を持たせたことも無いし、寝起きに髪を梳いてくれるし、甘いココアやホットミルクも淹れてくれる。


 ――それで、十分。


 生家では得られなかった、穏やかで心地良い日常。

 取るに足らない些細を積み重ねて行く、緩やかな作業。


 u-aの言う通り、選べる相手なら、幾らだって居た。

 でも。これと言える理由なんか無いけど。他の誰かじゃ駄目なの。絶対。


 だから。時折、一方的にドキドキさせられるのは、腹立たしいけれど。

 目を離せば今日か明日にでも死んでしまいそうなアイツとの、溶けかけたアイスみたいな日々を護るためなら、私は。






 ――命だって、懸けられる。





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