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…………。
十秒。アラームが鳴る。
横並びで、何本目かの鳥居を抜ける。
――案の定と言うべきか、懸念通り腕輪型端末が有する各種通信機能は用を成さなかったため、こうして古典的手法を取ってる次第。
別に構わんけど。レトロは嫌いじゃない。
しかし。
「どういう意図の組み合わせだ、これァ」
ちらと隣に目を遣る。
不満の色で満ちた、絵に描いたような仏頂面の灰銀女史。
余程、キョウ氏とグループを分けられた現状が気に食わぬ模様。
「月彦くん、月彦くん。駄目ですよ、灰銀ちゃんの方を見たら。シャーってされますよ、シャーって」
俺の背中に張り付いた二頭身形態のカルメン女史から、小声で忠告を受ける。
いや自分で歩けよアンタ。
およそ四十回目のアラーム。ぼちぼち折り返し地点。
にしても気まずい。灰銀女史の機嫌は歩を刻む毎、悪化する一方だ。
アラーム準拠で進まねばならん故、急ぐことさえ出来ん。
まさかu-aの奴、このために俺とコイツを混ぜたのか。カルメン女史はペストポジション捜索中とか宣い、人の背中を這い回るばかりで役に立たんし。
ちくしょう、地味に鬱陶しい嫌がらせを。
「――おい」
「あァ?」
こまっしゃくれたロボ子への復讐計画を立てていたところ、きつい歯軋りで閉じられていた灰銀女史の唇が、長く静かな吐息と共に開かれる。
なんだよセンセー。こちとら、あんにゃろうの右手と左手、どっちをロケットパンチにしてやるか決めるので忙しいんだぞ。
換装式のパイルバンカー及び大型機関銃でも可。背面にはバーニアも欲しい。
「私のキョウに『死神』が手を出したりしないだろうな」
「…………はァ?」
まさしく藪から棒。ツッコミ所満載な問い掛け。
リゼとキョウ氏。およそ想像の範疇を外れた組み合わせだ。不覚にも内容を理解するまで、幾らか間が空いてしまった。
「おい、足を止めるな。質問にも早く答えろ」
「……あー。大丈夫、じゃね? アイツ割と身持ち固いし、そも優男は好みじゃねーし、一応は俺と結婚もしてるし」
知らんけど。
「本当だろうな。命を賭けるか?」
小学生かよ。
けど小学生と違って、この女の場合、マジで命を獲りに来そう。
今も歩きながら、俺の喉笛にカランビットナイフ突き付けてるし。
「赤い目の女は信用に値しない。偽れば貴様諸共、殺すぞ」
そう言えばハガネも赤眼だったな。
つーか奴さん、そのハガネと籍入れてる妻帯者だろ。アラサーの娘を筆頭に四人の子供まで居るし。あ、いや、もうすぐ五人か。
どちらにせよ、そいつを「私の」呼ばわりは、流石に語弊を感じる。
「月彦くん、月彦くん。駄目ですよ、灰銀ちゃんに本当のことを言ったら。フシャーってされますよ、フシャーって」
俺の頭上に陣取った二頭身形態のカルメン女史から再度、小声で忠告を受ける。
いや、だから自分で歩けよアンタ。
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