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 只今戻りましたよ、と。


 朝早く発ったが、もう夜中だわ。流石に十七階層まで行くと往復に時間食うな。

 日帰りメインのビギナーや兼業の探索者シーカーが攻めるには少し遠く、泊りがけ前提のベテランは桁ひとつ多く稼げる二十番台階層に向かうため素通り。

 よくよく考えると山岳エリアは立地が悪過ぎる。道理で俺しか居なかったワケだ。






「すいません。帰還報告と入手品の買取を」


 丁寧な仕草で受付嬢が差し出した魔石計量用のボウルにリュックを引っ繰り返し、戦利品を流し込む。

 ロックマン及び往復の道中で倒したクリーチャー、累計約百体分。


「ええと……」


 計量器の数値を空間投影キーボードに打ち込み、買取額を計算する受付嬢。

 魔石は大きい物ほどグラムあたりのエネルギー貯蓄量が増すため昔は各サイズ毎に細かく値段設定されてたらしいが、十年くらい前に纏めて溶かし固める技術が確立して以降、完全な量り売りとなった。

 俺としちゃ査定が早く終わるので、今のシステムの方が有難い。


「全部で八万七千円ですね。よろしければ此方にサインを」


 カウンターテーブルに乗せられるタブレット、表示された電子書類。

 思ったより五千円ばかり多いな。レート変わったのか。


 ……まあ、こんなもんは幾らでも構わん。

 は、こっちだし。


「悪いんですが、これも頼みます」


 魔石と混ざらないようポケットに入れてたブツをテーブルに並べる。


 大きさは小指の爪ほどの、七色に輝く石。

 それを見た受付嬢の目が、ゆっくりと見開かれた。


「……ロック、オパール……? しかも、も……!?」


 買取価格三十万円。ドロップ率およそ千分の一。

 さりとて俺にかかれば、この通り。


 ――全く以て、を手に入れたもんだ。





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