第76話「三大戦力・ヴァリシア」
華やかなお茶会が終わって、本日最後の授業。
「最後に戦闘訓練かあ」
と嘆く同じクラスの生徒たちの気持ちもわからなくはない。
俺だってこのまままったりした気分で一日を終えたい気持ちがないわけじゃない。
訓練場に行くとそこには知らない四十前後の銀髪男性と、若い男性戦闘教官のふたりが立っていた。
ネフライト先生はどうしたんだろう?
「魔族は気持ちがゆるんだタイミングを狙って仕掛けてくると思え!」
いきなり銀髪男性が大きな声で一喝し、みんなの背筋が伸びる。
「名乗っておこう。俺はヴァリシアだ。陛下の命により、ネフライトと交代で貴様らの面倒を見る」
と銀髪男性はあいさつをした。
「ヴァリシア? まさか、【三大戦力】のヴァリシア様ですか?」
男子生徒のひとりが大きな声で問いを放つ。
「いかにも」
レーナ・フィリス殿下だけはまったく驚いていない。
「たしかに彼がヴァリシアよ。陛下が帝国との防衛線から呼び寄せたの」
それどころか説明を補足する。
「レーナ様、お久しぶりですな」
ファーストネームのみで呼びかけるあたり、王女とはかなり親しいようだ。
「もっとも俺はあなた相手でも手は抜きませんが」
ヴァリシアは生真面目な表情で言う。
「当然でしょう。魔族の標的になる可能性が高いのは王家か貴族の子女。だからあなたが選ばれたのでしょうし」
レーナ・フィリスの返事から、ヴァリシアは誰が相手でも忖度はしない性格であるらしいと推測する。
ネフライト先生もしてなかったと思うんだけどなあ。
「あの、ネフライト先生はどうなったのですか?」
ひとりの女子生徒が挙手をして質問する。
女性同士のほうがやりやすかったのかもしれない。
「彼女は俺と入れ替わりで北部戦線に配置された。帝国相手に油断はできないからな」
と答える。
三大戦力のひとりが常に張り付いているほうがよいと判断されるくらい、帝国の動向は不穏であるらしい。
「陛下は魔族対策とおっしゃっていたが、俺に言わせれば帝国も同じようなものだ。両方の対策をやるつもりでいてくれ」
とヴァリシアは言うと、多くの生徒が「うへー」という顔をしている。
「そのほうがお前たちの生存率が上がるというものだ」
と言われてようやく当事者意識を持つようになったようだ。
話せば通じるあたり、やっぱり優秀な人が多いんだろうか。
「気が引き締まったようだな。俺の役目は魔族の襲撃と帝国の侵攻が重なったとしても、お前たちが生き残れるようにすることだ」
とヴァリシアは言い放つ。
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