Passion

「好きだ」と言ってはいけないひとがいた。

言ってしまったらそこでおしまいだと思った。


あたしはその人と擦れ違うのを怖れた。

学校の廊下、階段、教室の中の狭い通路。

朝靄の通学路、夕焼けの帰り道。

視線を重ねることと同じくらい怖かった。

あたしの「好き」は重すぎる。

あたしの「好き」は、相手をダメにしてしまう。

でも、「好き」って気持ちを簡単に消すことは出来ないから。

せめて、あたしの胸の中だけで、「好き」を一杯にしていたい。


もしも視線が重なってしまったら、

きっとあたしはあの人を、


殴ってしまいたくなるから。

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