かたつむり

紗里菜

第1話 昼休み

 学校生活の中でも一番楽しい時間と言える昼休みなんだけど、あちらこちらから「藤原ふじわらさんがね…」とか「信じられる?藤原ふじわらさんたらね」と言う声が聞こえてくる。


 まぁ毎度のことで慣れているといれば慣れているし、ほって置こうかなぁと思ったその時、幼稚園時代から親友の一人の河合未央かわいみおが呆れたように言った。


 「みんなは、由依に嫉妬してるのよ。今朝由依U校の二年生から告白されなかった?しかも、いつものように振ったでしょう?何しろその人うちの学校愛女でも近隣の学校でも人気投票すれば常に一位の人物で、このクラスにはファンは多いはずだわ」とここで、一旦いったん言葉をきって、コーヒーのペットボトルに口をつける。


 そして、やめればいいのに、先程噂話していた人たちのグループに聞こえるよいにまた話しだす。


「確かにルックスがいいのは認めるけど、そいつすごい女たらしで、何人かこの学校でも被害に遭っている人はいたはずだから、今回だけは由依に感謝してる人はいるわよ。男嫌いで良かったったね。それに、私もし由依がなびいたら親友やめてたわ。普段はやきもきしてたけど、今回だけはせいせいしているわ」


 澄ました顔で、これだけの長ゼリフをよどみなく言いきった。


さすが、弁論部と感心しながらも、余計うちらをみるクラスメートの視線が厳しくなっているのを感じる。私のことを庇ってくれる気持ちは嬉しいけど、未央がクラスで浮いたら嫌だと思って、「未央。私のこと庇ってくれるのは嬉しいよ。けど、少し言いすぎだよ」と耳打ちした。


「言っておくけど、私由依のためじゃないよ。ああいう男はまた次の犠牲者を出すと思う。女の子をかけの対象にしたり、どうかと思うのに、ひっかかる子はあとをたたないんだもん。みんなにも少しはわかってほしかったんだぁっ」とため息つきながら、自分の正義感を振りまわすいつもの未央だった。


 そして、私に耳打ちして、「だいだい、いいたいことがあるのなら影でこっそり言わないで直接面と向かってはっきりと言えばいいじゃない?」と呆れた声でつぶやく。


 内容は聞こえていないはずだけどクラスの空気は静まる。未央の場合、ああ言えばこう言う性格だし、口達者で敬遠ケイエンされているだけならいいけど、この娘、いつか刺されたり、精神的に潰れてしまうんじゃないかと友達として不安になる時もある。

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