第66話 勝負の見込み
「私は難しくて諦めたあの手順込み魔法。それを更に発展させて新たな理論を作るとは思いもしませんでした。正直アンフィ―サ様にはどうやっても追いつけないような気がいたします。それでも追いつこうと足掻くのをやめる訳にはいきません。私は負けるわけにはいかないのですわ。そしてこの御前試合も。
良い勝負にしようとは言いません。私達は全力で勝ちに行きます。リリア様達もそうであることを望みます。それでは今度は決勝戦で」
マリアンネ様達はそう言い残して去って行った。
「何かこう、格好いい方ですわ」
おい待てリリア、騙されるんじゃない。
「あの方の標的が自分になると大変なのですわ」
それだけ言って誤魔化す。
なお私の斜め前でエンリコ殿下が私の台詞にうんうんと頷いている。殿下も標的にされた事があったからな。その辺の気持ちはわかるのだろう。でも殿下とは思いを共有したくはない。だから無視する。
「それでは試合の準備をしましょうか」
今日は開会式も無いし、試合も準決勝からだから出番はすぐ来る。リリア達は第2試合と、最後の決勝戦だ。
テーブルの上を片付け、リリア達の服装を整える等準備にとりかかった。
◇◇◇
第1試合と第2試合、つまり準決勝はあっさり終わってしまった。
今は決勝戦前、
「魔力も体力も、ついでに筋肉や体調も魔法で整えたけれど違和感あるかな? 何かあったらすぐ言ってね」
そういった魔法はリュネットの得意技だ。これがあるから
「ありがとうございます。普段以上に調子がいい感じがしますわ」
「私もです」
ステータスを見てもMP、HPともに最大値になっている。
「それでアンにひとつ聞きたいのですが、いいでしょうか?」
何だろう。
「何でもどうぞ」
「今回は私が
「その通りだと思いますわ、リリア。マリアンネ様達も
マリアンネ様は今まで
「それでアンに聞きたいのはその次です。もしそうなった場合、私とナタリアは勝つ事が出来るでしょうか。どれくらいの勝率で勝てるでしょうか。それをアンの口から聞きたいのですわ」
なるほど。ならば答えてやろう。
「まずリリアの
リリアとマリアンネ様の魔力はほぼ互角。厳密に言うと
ですがリリアの
ですからリリアが
ですから勝負が決まるとすれば、ナタリアとアニー様の方です」
そこで私は一度台詞を区切る。よしよしナタリアも聞いているな。なら続けよう。
「ナタリアとアニー様では、ナタリアの方が明らかに魔力が大きいです。本来ほとんど魔法を使えなかったアニー様が今では学内の平均以上の魔力をお持ちになっている。どれだけの鍛錬を重ねられたのだろうと思いますが、それでも今のナタリアの方が魔力は上です。
更に言うとアニー様が第一試合で使われた
ここまでが順当に戦った場合の予想だ。この通りのシナリオになった場合はまず間違いなくこの結果になると思う。でも私が言いたいのはむしろこれからだ。
「ただし、試合が今の予測通りになるとは限りません。見る者が見れば互いの魔力の大きさ等簡単にわかるでしょう。
皆の顔を見てみる。うん、皆さんその可能性には気付いていたようだ。優秀優秀。なら続きを話そう。
「もし今話したのと違う展開になっても慌てないでください。私の計算では、リリアの
ですからリリアもナタリアも互いの魔法を信頼して下さい。何があっても防御はリリアに任せる、何があっても攻撃はナタリアに任せる。今までの立場や役割とは逆かもしれません。それでもそうやって互いを信じれば必ず勝つことが出来る。これが私の答えです」
「3倍魔力の
エンリコ殿下ががっくりしている。
「ええ。勿論いつまでも耐えるという事は出来ないでしょう。ですが
「あと質問なんだけれど、アンはいつの間に他人の魔力量をそんなに詳細に見る事が出来るようになったのかな。前から魔力探知は得意だったけれど」
あっ。そう言えば確かにそこまで魔力量、つまり最大MPがわかるというのもよく考えればチートなのだ。私は自分に限らず誰のステータスでも見る事が出来るけれど普通はステータスシートなんて便利なものを見る方法なんてものは無い。
「いつの間にかですわ。おそらく
「なら僕の魔力量は今、どれくらいだ。このパーティでかなり鍛えたつもりなのだが自分ではよくわからない」
「私も知りたいにゃ」
「私もですわ」
おいおいそういう方向に話題が行ったか。でもステータスシートの件を突っ込まれるよりはるかにいいな。
今の最大MPは私が1002、リリアが528、殿下が498、リュネットが489、ナタリアが246、ナージャが185。ちなみにマリアンネ様が532、アニー様が103だ。
「このなかで魔力が一番大きいのはやっぱりリリアですわ。今の1年生の平均の6倍強か7倍弱というところでしょうか。殿下がそれより少し低くて6倍強、リュネットが殿下よりほんの少し低いくらい。ナージャは平均の2倍という処でしょうか。
ただ同じ魔法でも個々の適性によって必要な魔力が違いますからあくまで目安という事で。例えばナージャは
「ならアンの魔力はどれくらいにゃ?」
おっとナージャに聞かれてしまった。
「だいたい8倍程度ですわ」
低い方にサバを読ませてもらう。
「そうかな。もっと高く感じるが」
おいエンリコ殿下、余計な事を言わないでくれ。
「そうですね。私から見るとちょうど殿下の倍くらいに見えますわ」
おいリリア、何気にかなり正確な事を言わないでくれ。本当はリリアにもステータスが見えるのか不安になってしまうではないか。
私はとりあえず笑顔で誤魔化す事にした。
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