第44話 バカンスの終わり
それからの
レベルもかなり上がったし、魔力も体力も他の能力もだだ上がりした。私のMPはもうすぐ4桁だ。転生当初は130だったのだからもうとんでもない。
「それにしてもレベルもそれ以外の能力も上がり過ぎですわ。普段は感じませんけれど魔物を相手にすると自分がかなり強くなった事がわかります」
確かにリリアの言う通りだ。最近レベルが妙に簡単に上がる。クーザニ
「多分僕のせいだ。王家の者は成長2倍の祝福を教会から受ける。同じパーティという事でそれが全員に適用されているんだろう」
おい待てそこのエンリコ殿下。何だそのチートは。そう思ってステータスをよくよく見てみたら、確かに殿下のスキルに『能力値成長2倍』なんてあった。
「もうエルダーオーク程度なら何頭出てきても負ける気がしないにゃ」
エルダーオークはB級冒険者でも単独討伐はなるべく避けるように指導されている大物だ。おいおいと思いつつ見るとナージャの戦闘力は3桁突破している。
更に称号に妙なのが追加されていた。何でも『強獣戦士』という称号で、その効果は『接近戦の場合、敵に与えるダメージ2倍、かつクリティカル率10倍』だそうだ。勿論ステータスの事は他の人に言えないのだけれど、これってもうチートだなきっと。
ただよくよく見ると称号付きはナージャだけではない。リリアは『黒魔術師:攻撃魔法の効果範囲2倍+魔法攻撃力2倍』。ナタリアは『聖騎士補:補助魔法及び回復魔法に必要な魔力が半分、直接攻撃に対する防御力5割増し』だ。
リュネットは更にチートで『聖女候補:聖属性魔法に必要な魔力が半分、聖属性魔法の効果2倍、範囲魔法の効果範囲4倍』なんてのがついている。
でも一番チートな称号持ちはやはりエンリコ殿下だろう。何だよその『勇者候補:全魔法に必要な魔力が半分、直接攻撃及び魔法攻撃に対する防御力5割増し』という称号は。魔王でも倒しに行くつもりだろうか。
それにしてもエンリコ殿下、成長2倍も含めて何と便利かつチートな奴なんだ。ますますパーティから外せなくなったじゃないか。責任者出てこい! いや責任者というと陛下か。出てこなくていい! 今のは取り消しで! これ以上親密になどなりたくないやい!
なお私にも称号がついた。ただし他の皆さんに比べるとかなりショボくて悲しい称号だ。その名も『器用貧乏:全ての魔法属性に適性が出来る』。これだけだ。他の人にあるような増しとか倍とかの文字は一切無い。
何だこりゃ。やはりゲーム上での悪役として差別されているのだろうか。責任者出てこい! 国王陛下ではなくゲームのプロデューサー!
ただこの『器用貧乏』も悪い称号ではない。おかげで従来ほぼ適性が無かった金属性もかなり使えるようになった。具体的に言うと魔砲少女ユニットの作成改造について、かなり自力で出来るようになったのだ。弾の方に至っては砲弾も銃弾も自由に作成可能。
まあそんな感じで主に第21階層から第23階層まででガンガンと魔獣退治。レベル上昇だけではない。小遣いも大分復活したし材料購入で更に私の魔砲少女ユニットも充実。飯も更にラーメンや冷やし中華など作って楽しんでいたのだけれども……
8月も半ばになった頃、露天風呂で殿下がぽつりと言った。
「父から手紙があった。今週で戻ってくるようにという事だ。こんなに充実した夏休みだったのにと思うと残念だが仕方ない」
そうか。なら1人で帰れと本当は言いたい。だがここで平穏に楽しめるのは殿下がいるおかげだ。厳密には殿下を陰から護衛している皆さんのおかげなのだけれども。
「仕方ないですわ。私達も楽しかったのですけれど」
そう言ったリリアは水着もやっぱり可愛い。近づいてすりすりハアハアしたくなる。夜まで我慢だけれども。
「そうだね。でもこれだけやれれば満足かな。お小遣いも結構稼げたしね」
「そうなのにゃ。あとは仕方ないから自主練なのにゃ」
「私もおかげでかなり実力がついたように思います。感謝です」
殿下以外水着を脱がしてハアハアしたい、そう思っても言わないのが淑女のたしなみだ。だから、
「私も本当に楽しかったですわ。こうやって此処での活動を続けさせてくれた陛下や殿下、ここに招いてくれたリリア、一緒に過ごしてくれた皆さんに感謝ですわ」
と言っておく。
実際収穫はかなりあった。魔砲少女ユニットも出来たし基礎的な実力も大分底上げした。リリアとハアハアもできた。ああこれが帰ると出来なくなるというのが悲しい。何としても機会を作りたい。あと出来ればリュネットとナージャ、ナタリアも。ハーレム作りたい。私を含め全員女子で。
煩悩が思わず炸裂しかけたので殿下の方を見て心を落ち着ける。
「それではいつくらいに帰りましょうか。勿論マノハラ伯とも相談ですけれども」
「父の方は明日午後以降なら準備が出来る筈ですわ」
確かにこの時期は特に出来事などないだろう。だから馬車と護衛を仕立てるくらいそれほど手間はかからない筈だ。領都も近いし。
「本当はぎりぎりまでここに滞在したいが、それも父らに悪いだろう。明後日くらいが無難な線だろうと思う」
エンリコ殿下の台詞は極めて常識的なので反対できない。
「なら明日にでも父に連絡致しますわ。あとはワレンティーナさんにもご挨拶した方がいいですわね」
そんな感じで私達のバカンスは終わりを告げることになったのだった。
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