第35話 またとない機会
とりあえず新装した風呂は最高だった。
新しい風呂は半露天。屋根があり、壁も家のある南側と東側にあるが、北側と西側は柱が2本ずつあるだけ。だから湯気がこもることが無い。外もよく見えるので露天気分も味わえる。元々露天風呂があった場所なので覗かれる心配もない。
そうやって出来た場所に、寝湯、
屋内の風呂スペースも少し模様替えし、部屋の端にシャワースペースが設けられた。これで髪を洗うのもかなり楽だ。
まずはこのスペースで身体を洗うところから。
「これを今日で使えるのが終わりというのは悲しいです」
「帰る前に間に合っただけでもありがたいですわ」
「でもこのお湯が出る装置だけでも寮にあったらいいよね。髪を洗うのにも全身を流すのにも便利だし」
身体を洗った持ち、皆さんそれぞれの浴槽を試しまくり、結果的にそれぞれにあった浴槽へと落ち着く。私の場合は露天風呂のぬる湯。ここからは風呂施設のほぼ全体が見える。つまりあちこちを試している皆さんの裸体が見放題という訳だ。うん、実に良い。
「共同浴場に設置したらきっと評判になりますね。特にこの水流が出るお風呂、気持ちいいですわ」
リリアは中でもジェットバスがお気に入りのようだ。これは風魔法で空気を送り込むとしばらくの間、空気を泡として含んだお湯が前方の噴出口から出てきてマッサージ効果をもたらすというもの。これに使用する程度の風魔法はこの世界なら中等学生以上ならほぼ全員使える。
この仕組みはおっさん時代に見た水槽上部にろ過フィルターがあるタイプの金魚用水槽を思い出して考えたものだ。つまり基本的には空気の泡が上昇する際に水を押し上げる仕組み。送り込んだ後の空気を少しずつ出すようにしたので一度風魔法を使えば100数えるくらいの間は使えるようになっている。
「極楽だにゃー」
ナージャは寝湯で横になっている。ちょうどここから全身まる見えでご馳走様ですというところだ。
またリュネットはどうやらサウナと水風呂往復にはまっている模様。ナタリアは歩行湯メインで時々サウナ、水風呂、シャワーという感じで巡回している状態。
うんうん、いずれにせよ皆さんいい目の保養になる。ひひひひひ。
でもこの後、ムフフな事を楽しむ余裕もなく寝てしまった。どうやら私もリリアもかなり疲れていたようだ。
2時間を超える長湯をした結果か、気合の入り過ぎた
◇◇◇
翌朝。
「父からよくわからない連絡がきましたわ」
朝食前のお茶の時間、リリアがそんな事を言った。
「どんな連絡でしょうか?」
護衛とともにカーワモトへ帰れという話なら、よくわからないなんて表現を使う事はない筈だ。
「今日と明日はこの別荘から極力外に出ないように、そういう連絡です。なお既にこの別荘の周りに警備要員をある程度配置しているそうです」
もう警備要員を配置しているとは思った以上に措置が早い。でもそれなら今日の昼くらいまでには護衛付きの馬車くらいは用意できる筈だ。それを2日、あるいはそれ以上ここで待たせるのは何故だろう。
「明日か明後日にでも何かあるのでしょうか?」
リリアは首を横に振る。
「そのような予定は何もなかった筈ですわ。この夏の予定は陛下の夏の巡幸が8月にある程度の筈です」
王都カーワモトより東側にある伯爵以上の領地は夏の巡幸の対象。だからそれは予想の範囲内だ。私達に関係するとも思えない。
いや待てよ。まさかとはおもうけれど関係ないよな。確かにエンリコ殿下は一緒に来たがっていたけれど。まさかだよな……
「仕方ないよね。それじゃ今日と明日はお風呂と料理研究かな?」
リュネットの言葉で我に返る。うん、どうにもならない事は考えないようにしておこう。その方が私の精神安定上いい。
「そうですね。幸いお風呂も昨日完成した事ですし」
ナタリアの台詞に頷きながら付け加える。
「ええ。それに麺類も丼も試していないレシピがまだまだあります。その辺を試していけば2日なんてあっという間ですわ」
「外に出ないで美味しいもの三昧なのにゃ」
「でもそれだと太りそうで怖いよね」
「2日くらいなら問題ない、と思います……」
ナタリアの台詞の最後が微妙に自信無げなのは仕方ない。私達だって女の子なのだ。外見は重要! 結果的に交際相手は家の思惑で決まってしまうにせよだ。
「その辺についてはお風呂の歩行湯やサウナで帳尻をあわせましょう」
「アンはその辺いいよね。太らなそうな体形で」
リュネット、それは宣戦布告と受け取った。私にだって自分の体形に不満もあるのだ。そこを明らかにさせて貰うことにしよう。
私は立ち上がってリュネットの背後へと近づく。
「私としては一部太らせたい部分もあるのですわ。例えばここですの」
背後からリュネットの両胸をにぎっ、とさせて貰う。
「お風呂に入って気付いたのですわ。リュネット、印象とは違ってこの辺がかなり成長されているようです。本当に羨ましいですわ」
にぎっ、もみもみ。この機会にじっくりと感触を味わわせてもらう。
「確かにそうですわね。ナージャのも羨ましいです」
おっとリリアが私の真似をしてナージャを背後から襲ったぞ。リリアも私と同じで百合ビッチの素質があるいわば同志。当然この隙を見逃さなかったようだ。
「何なのにゃ一体!」
「やめてよ、変な気分になる……」
こっちはとっくになっている。いや元々ずっとか。取り敢えずこの機会をたっぷり味わわせて貰おう。ぎゅっ、もみもみもみ……
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