第22話 お風呂あがりの作業
そんな訳で風呂からあがったら早速お絵かき作業だ。
なお中のおっさんは前世で萌え絵、厳密には萌え系エロ絵を描くのが得意というか趣味のひとつだった。エロ系に走り過ぎて何処ぞからBANを喰らった事すらある。それくらいなので今のアンの身体で道具をペンタブからつけペンに変えてもお絵描きは出来るのだ。人物を描くと全て萌え絵になってしまうけれど。
そんな訳で寝湯、歩行湯、ジェットバス、サウナ、ミストサウナ、壺湯と思い出すままにスーパー銭湯の施設を描きまくる。サイズの参考用に入っている人のイラスト入りで。
サウナについては入り方と整え方までイラストと言うか漫画で説明入りだ。
「なるほど、こんなに様々な種類のお風呂がありうるのですね。これは確かに楽しそうですわ」
「でもアン、絵がお上手ですね。こんなかわいい絵は初めてみました」
それは昔取った杵柄で……なんて事は勿論言わない。代わりに、
「ちょっと癖が強すぎる絵なので普段は控えているのですわ」
と謙遜をまじえつつ本当の事を言う。
「それでは早速この絵のお風呂を試してみましょう。あと身体を洗うのに使った雨のようにお湯が出る装置やお風呂の椅子、あれもお願いすることにして」
「でも浴槽を増やすとお湯の量がその分必要ですけれど、大丈夫でしょうか」
寝湯とかミストサウナ、壺湯はかけ流しにするとかなりの湯量が必要となる。その辺が大丈夫なのかが少し心配だ。
「今でも出てくるお湯のかなりの部分は使わずそのまま流しているくらいです。ですので問題はありませんわ」
リリアがそう言ってくれて一安心。なら温泉プールなんてのも欲しいかなと一瞬思ったが流石にそれはやめておいた。もし作るにしても温泉プールは次の段階だろう。まずは風呂施設を充実する方が先だ。
「それでは早速これをワレリーに説明してきますわ」
私が描いたメモや図を持ってリリアが消える。なおワレリーとはあの出迎えてくれた中の男性。奥さんのカーチャ、娘のニナと家族3人でここを住み込み管理しているそうだ。
「あのお風呂が出来たらと思うと楽しみだね」
「本当ですわ。お風呂では身体を洗うと湯に浸かる以外、考えた事が無かったです」
「どれくらいで出来るかにゃ?」
「職人さんや材料を手配できるかどうかですわ。ただ街がそれほど大きくないのですぐには難しいかもしれませんわね」
取り敢えずそう抑えた意見を言っておく。本当は出来るだけ早く出来て欲しい。そうすればより目で楽しめる。でも此処は自分の家の領地ではないし、内なるおっさんの存在に気づかれても困る。だからここは控えめに。
「あとは明日からの
私が風呂関係の絵や説明を描いていた時間、他の4人は
「第5階層までだと魔物で注意が必要なのはゴブリンとコボルトで、第5階層ボスはコボルトリーダー。クーザニ
「クーザニ
「アンデットが出ないのは嬉しいです。私はアンデッド系の匂いが苦手で」
冒険者ギルドは既知の
つまりミセン
「それでは第6階層以降はどんな感じでしょうか」
「階層が広くなって一気に難しくなるみたいです。出会う魔物もアークコボルトやメイジコボルトが複数で出たり、オークが出たりとか」
「冒険者ギルドの攻略難易度では2、私達がまだ戦った事がない難易度だよ」
それでも2-と2の違いだからそう差がある訳でもない。ただ油断は禁物だ。
「第6階層のいつでも逃げられるような場所で慣れるまである程度訓練した方がいいかもしれませんね。クーザニ
「私はガンガン行きたいにゃ」
「駄目だよ。私の治療魔法も絶対という訳じゃないから」
「でもリュネットがいるおかげで安心して戦えます。大抵の怪我は治してくれそうですし、魔力が切れそうでも補充してくれますから」
「でも攻撃にはあまり役にたたないけれどね。むしろ誰かに守って貰っている分お荷物かなあ。今回はアンデッドがいないから余計そうなるよね」
「でもナタリアが言った通り、リュネットがこのパーティの生命線ですわ。今は攻撃魔法以外の攻撃役がナージャだけですから、魔力切れが即パーティ全滅に繋がりますから。ですのでリュネットは後方の安全な場所にどんと構えていて欲しいのです。そうすれば皆、魔力切れも怪我も心配しないで済みますから」
「何かそれって偉そうだよね。家柄的にはこの中で一番下なのに」
「それはそれぞれの役目というだけですわ」
今のパーティでもナージャが
リリアは典型的な攻撃魔法専門タイプで、雷撃、火炎、寒冷の3属性を使いこなす。代々リリアの家で伝わっているという寒冷系最強魔法、
ナタリアは万事がそれなりに優秀。良くも悪くも突出した能力は無い。たとえば剣技は男子を含めた生徒のなかでは優秀な方だが、ナージャのような速さや殿下のような防護力はない。回復系魔法も使えるがこの分野では天才に近いリュネットにはかなわない。攻撃魔法も持っているがそれぞれの威力は私やリリアほどではない。
結果的に魔法で援護しつつ、戦況によって役目を変える
リリアが奥から戻って来た。
「至急木工所に御願いするそうです。まずはこの別荘で試してみて、良ければ共同浴場にも設置するそうですわ」
なかなか話が早いが、疑問点もある。
「お父様、伯爵にはご相談しなくていいのでしょうか?」
「この程度でしたら私の独断でも問題ないですわ」
リリアはそうはっきり言い切る。
私の場合だと何事もオルネット経由で父に報告し、父が家の為になると判断しなければ実行される事はない。その辺リリアはかなり自由と言うか権限を持っているようだ。この別荘も自由に使わせてもらっているようだし。
その辺はきっと家の中での立場の違いだろう。私は家の中ではそれだけ低い扱いをされているという事だ。まあそれだからこそ出ていく事に躊躇いを感じないで済むというのもあるけれど。
それにしても風呂の改良か……ああ楽しみで仕方ない。
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