第26話 セレネに告白。この気持ちって何なんだろう。

よし、俺はネックレスから腐った玉ねぎを剥がすとそれをドームの中に入れてやった。


「でチュー 復活したでチュ」

おお 腐った玉ねぎを食べてサブロウが元気になったぞ。


「ヤッタでチュね。それに心配かけたでチュ。 

ボクたちはどうやら同口の入り口にいるようでチュね。

それなら コガネムシを使うでチュよ」


そうか その手があったな。


「セレネ 洞窟をでるぞ」


「でも さっきは行かなきゃって気持ちだけで行こうとしていたけど。

よく見たら暗闇なのよね。

洞窟に吸い込まれてしまいそう・・。

こんな真っ暗な洞窟じゃ 進めないわ」

「大丈夫 俺の手を確りつかんで付いてきてくれ」

「どうしたの?頼もしいわね」

さあ コガネムシ 頼んだぞ。

ぶ~ん ぶ~ん・・


洞窟の中は鍾乳洞で出来ていて、広い洞窟になっているようだ。

「きゃ」とセレネが声を出す。

声を出したからと言って別に何かがいたわけじゃないけど

真っ暗で何にも感じなくなってしまうと

踏み出す足はあっているのか?

今は少し上り坂だから どこかで下るのか?

小人が潜んでいて ぶつかったりしないのか?

などなど、気になる全てに、一つ一つと不安が積み上がってくる。

俺はコガネムシが見えているくらいに感じているから まだいいけど

視覚と聴覚を遮断されているセレネは 五感すべてを失ったような感覚になって未知の体験をしているはずだ。 

セレネ 俺はここにいるよ・・ 俺はセレネの手を時々 ギュ ギュっと握っているけど、これで伝わっているのかな?


ぶ~ん ぶ~んと飛んでいくコガネムシの後をついて行っているけど

今のところは小人に襲われてはいない。

もしかして、小人を避けてくれているのかな?それも わからない。

・・・。

・・。

真っ暗な世界は決して慣れることはないようで 

俺でさえ、心の何かを削られている感じがしていた。


そんなとき、セレネの足が止まった。

引っ張っても動かないけど、どうしたんだろう。

「セレネ?!」

「シー! ダメよ!声を出したらダメ!小人に気付かれちゃうわ。。」

セレネがピークのようだ。

「うわぁぁぁぁん! うわぁぁぁん!!」

大声で泣き始めてしまった。


これはマズイな、音を頼りに小人が来てしまう。

もしも違う場所に口元が当たっちゃっても不可抗力だろう。

とセレネの耳元に口を近づけて

「二人でなら何とかできるって。だから一人で悩まないで」というと鳴き声はすすり声に変わった。

「でも どうしたらいいの?」と聞いてきた。

確かにこの洞窟は明かりもないし、明かりをつければ小人も寄ってくるから

暗いまま進まなくちゃいけない。なあ サブロウ。助けてくれ。


「オーレンス そこはカッコいいところを見せるでチュよ」

「一緒に 泣いてあげるんだゲロ!シクシク」

「オンブ シロ ガハハ」

いやいや 全部却下だ。

カッコをつけたいところだけど、もしセレネを安心させてあげられる方法を知っているなら教えてほしい。

あとセレネをおんぶとか 俺が嬉しすぎるじゃないか。

出会ったばかりの頃ならともかく、今はな。なんだか恥ずかしくて頼めないわ!!


「もう オーレンスは仕方がないでチュ・・・」

俺はサブロウの言う通りにした。

しばらく経って・・・


俺たちはつないでいる手を左右に振る

「1.2.3.・・・・5」そして5歩目に到達したら

何かわからないけど両手を繋いで喜んでいるフリをする。

そんなゲームのようなことを繰り返していた。

俺にもセレネにも理解できない事だったけどサブロウの言う通りにしてみると 

どういうわけなのかこのミニゲームは続きに続いてレベルアップしていき、

最後には1ゲームあたり100歩を超えるまでになっていた。


「オーレンス 明かりが見えるわ」と嬉しそうな声を上げるセレネ」

「ふぅ~ 出られたな」

「やっと出られたわ」

日の光に照らされたセレネを改めて見つめると事に気が付いた。

「俺 気づいちゃった」

そして首をかしげて聞いてきた。

「何を気付いたの?」

「俺 セレネと一緒にいられたら幸せな気持ちになれるみたいなんだ。

情熱的な気持ちじゃないんだ。温めた石を握って温まっていくみたいに心が温まるんだ。

すごいだろ? だから セレネ。俺と恋人になろう 頼む!!」


「温かい気持ちね。そうね・・・。ん。。燃えるような情熱的な気持ちじゃないのよね?

そうだわ! それはきっと。

オーレンスに、私もいいことを教えてあげるわ。

温かくなる気持ちわね、、「愛」っていうのよ」


セレネは俺に抱き着いて耳元で「思いやりがね、きっとあなたの愛のカタチよ。好き・・」

と言葉をささやくと俺たちはギュっと抱きしめあった。

洞窟で遮断されていた五感が一気に解放されて味わった抱擁(ほうよう)は

一生忘れることはないだろう。


「じゃぁ 俺と恋人になってくれるのかな?」

「うん 私もあなたと恋人になりたいわ」


いつまでも いつまでも二人の時間が流れていた。

・・・。

・・。

・。

「コルビン」

「フロン」

ガシ・・ガチガチ・と二匹は抱き合ってみた。 

「やっぱり 木と石だと硬そうでチュね

オーレンス、卵を拾って村へ帰るでチュよ」


そうだったな。

きっと みんなも心配しているだろう。戻らなくちゃな。

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