第4話 ニーマン召喚【ドームの中の仲間たち】2

辺りを見渡したけどモンスターと言われても何もいないぞ。

音もしないし近くに洞窟でもあるのだろうか?風の音だけがヒューヒューと鳴っていて

もしかして どこかの穴から飛び出してくるのかな?


初戦闘なだけにドキドキする・・と身構えてみたけどイヤちょっと待て! 

コブシサイズのニーマン二匹でどう戦えるのか??


二匹をみると「ゲロゲロ! でシュー!でシュー!」と

パペット人形のように右に左に体を動かしたり、

サブロウは木の小枝を持ち上げてブンブン振り回したり、

フロンは小石を積んでバリケードを作り始めたぞ。超小っちゃいけど。

でも こいつらじゃ、一撃で潰されちゃうだろう。


そうこうしているとシダの葉っぱが持ち上げられて居酒屋のノレンを潜るように

ひょっこりと現れたのは木製のおっさんの小人。


無表情のお面を被ったような木製の人形だった!

身長が80cmくらいでこん棒を持っていた。


「ボクは戦闘タイプじゃないでチュ~ 」

「ゲロゲロ 強敵ゲロ!オーレンス、助けてほしいゲロ」


助けてほしいって?さっきまでの軽いフットワークはどうした?

ニーマンは戦えないのか?

ふふふふ・・!でも 大丈夫だ。


今回だけは、今回の敵は、どう見てもこん棒を持った木製のおじさんだろ?

キノコまで生えていてボロボロじゃないか。

運がよかったぜ、任せろ!楽勝だろう!!

「げ!ゲロゲロぉぉ!!」


俺にはさらに秘策もあった。あの呪われたリングには 重さがある。

つまり武器になる!

俺は フロンの前に出ると格ゲーのように小人に回し蹴りを入れた。

回し蹴りの遠心力と重りが釣り合った、この一撃!!


「うりゃ!・・バキ!! あ!!」


あ! こいつ固い!蹴ったことを後悔した。

バットは蹴ったことはないけど、空手のパフォーマンスでバットを折り損ねた人が悶えていたな。

その光景を再現してしまった。

あっ、あしが・・足が腫れあがっていく、折れてないよな・・。



のたうっても、でんぐり返ししてみても痛い物はいたい。

小人は俺に歩み寄ると、能面のような無表情の顔は

愚か者を歓迎するようなニヤニヤ・・とした感じに見えた。


もう終わったか?とばかりに、小人がこん棒を振り下ろした。

所詮は80cmの小人から繰り出される攻撃だろ?

よける必要はなさそうだけど

みすみす殴られるわけには行かないな。


俺は後ろにでんぐり返しした。

「ドッガガガガガン!!」

ウソでしょ?! 

振り下ろされたこん棒はすごい破壊力だ。地面の石が砕かれていた。

後ろに転がらなかったら 俺が砕かれてたわ。


なんだ 鳴き始めたぞ。

「ヒューヒュー ヒューヒュー」


すると

「ガサガサガサ」

シダの葉っぱが持ち上がって「よう やってるかい?」とのれんでも潜る様に

もう一匹の小人が出てきた。

なんでこんなときに 出てくるんだ?

足もしびれているし、さらに俺の足をリングが地面へと引っ張っている

この状況でもう一匹の小人は早速フロンとサブロウにこん棒を振り上げた。


ニーマンがやられる。ついでにコイツに俺もやられる!

根性のでんぐり返しだぁぁ!

逃げることはできないならと 

でんぐり返しをすることでサブロウとフロンの上に覆いかぶさることが出来た。


さあ! 殴れ!殴れ! 俺は目を閉じた。


お腹の下ではフロンとサブロウが

ゆさゆさと動いている感触がくすぐったかった。

さよなら。せっかく出会えたのに短かったな・・

だけど 


「ポチャん。。。。」


小人が俺に殴り掛かろうとした瞬間、地面が水たまりのようになり俺はその中へ落ちた。

上を見上げると小人の足の裏が見える。

向こうからこちらは見えていないのか、小人はキョロキョロと俺を探してあっちこっちに走り回っていた。

このままやり過ごしたいな。とホッとして

はぁ~と息を吐いて吸おうとしたけど、今度は、う・・い・息が出来ない・・。

頭がしびれたようにちょっとだけ キーンと音が鳴った。


「落ち着くでチュ、オーレンス。戦闘にはフロンを使わなきゃ勝てないでチュよ」

「オーレンスお前はニーマン使いなんだから 殴るなんてゲロゲロ」

どうやら俺は、サブロウの能力で水たまりのような影の異空間の中にいるらしい。

そしてフロンを使えってサブロウは言ってたけどフロンは戦えるのか?


「フロンはできる子でチュよ」

「やっぱり戦わなくちゃいけないゲロか?」

俺のナイトは 戦闘が嫌いなようだった。でも そんなことは言ってられない。


「そろそろ息も続かないので そこを 何とか お願いします・・」

頼み込むとフロンは乗り気じゃないけど 渋々した感じに

「せめてあの石像がいいゲロ・・」と

道にあったカエルの石像のところへ行ってほしいと説明をしてくれた。

サブロウ!よしやってくれ!


「でチュー!!」


サブロウの能力は異空間収納だけじゃないようだ。

むしろ 水たまりの様な平面に見える異空間は色々な性質に

変化させることで 空間に隠れること以外にも

トランポリンのように跳ねたり、人間大砲のように打ち出したりできる!

こんな風に!!


「ドーン!!」

ドサ!

石像の手前か?でも 十分に意表を突けているぞ。

キョロキョロしている小人が地面に落ちた俺を見つけてこん棒を振りかぶってきた。

足がしびれて使えないならこれしかないだろう。

秘儀! でんぐり返しだぁぁぁ うりゃぁぁぁぁ!!

1日にこんなにでんぐり返しをする社会人はいないと思った。

たどり着いたぞ!カエルの石像だぁ!


「オーレンス、石像に触るゲロゲロ。怖いけど、どうにでもなれゲロ!! 」

よしこうか!

タッチした瞬間、石像は動き出してベロを伸ばした。

「ゲロ ベローチェ!!!」

大きくあけられた口から伸びる石のベロは

石なのにムチのように伸びていって小人を直撃!!


「バキきききぃぃ!!!!!」

一体の小人に当たり その反動でさらに

「バキきききぃぃ!!!!!」ともう一体も倒してしまった。


「当たったぁ・・ 当たったゲロ ・・げろ げ・・」

初戦闘で勝利できてそんなに嬉しかったのか?

ずっと泣いていた。

あんなに硬かった小人の胴体を砕いてしまうなんて、

石像に宿るとフロンはこんなに強くなるのか!やったぞ!!


小人を改めて見てみると造りが職人並みでいい出来だ。

一体は派手に壊れちゃっているけど 

もう一体はおっさんがモデルじゃなかったら高く売れそうだ。

「オマエ ツヨイ ナカ・・」

なんだ? 何かの声のようなものが頭の中に響いたけど途中で途切れたな。

声の感じはサブロウたちとよく似ていたけど・・


「でチュー」

サブロウは 影のような平面な空間の入り口を伸ばして小人を中へ入れてしまった。

別にいいけどサブロウ、それは売れないと思うぞ。

酔っぱらって路地で寝ていたら顔からキノコが生えてました!

って感じのおっさんだからな。

そういえばサブロウは瓶の中に色んなものを集めるのが好きだった。


そしてフロンは相変わらず、泣きながら勝利を喜んでまた泣いていた。

こっちは泣き上戸だ。


「パリン!!」

足にはめられた重いリングはしばらくすると砕け散って消えた。

消えたときの音はレベルでも上がったかのような爽快感のある音だった。


ニーマンのおかげで村へは行くことが出来そうだけど問題がある。

「俺は所持金が銀貨5枚しかないんだよなぁ。」


財布に入っていたお金と同額だと考えると一泊するのが限界だろう。

魔法も習わなきゃいけないし、

なんでー なんで 死神は電子マネーを銀貨に換金してくれないんだよぉ!

とぼやいたけど、死神のばばあが「ひゃっひゃひゃ」と

笑うイメージが浮かんでくるだけで何も起きなかった。


ん?花か。

シダやカヤの草が減っきて少しずつ見通しがよくなってきた気がする。

さっきは 花なんて咲いてなかった。

そしてこれは 蜜のある花だ。

胸に付けているバッジのコガネムシが気になった。

実際には光ってはいないけどコガネムシのブローチが

光る様に合図を送ってきている感じがする。


「オーレンス~ コガネムシを召喚するでちゅ」


コガネムシ?

三匹目の俺のニーマンか、どんな能力か楽しみだ。

俺はコガネムシを召喚してみた。


すると 胸に付けていたコガネムシのバッジが飛び始めて俺の手に持っている花に止まった。

これもニーマンだったのか、色々なところにニーマンがいそうだな。

コガネムシは花の蜜を飲み終わると 今度は 飛び始めてある場所で

ブンブンと旋回をして俺たちを呼んでいるようだ。

そこに何かあるのか?


ん? 何か落ちている。近寄って見ると なんと銀貨の入った革袋が落ちていた。

袋は風化してボロボロで 長い間、放置されていたことがわかる。

もったいないから もらっておこう。ラッキー!


この後もコガネムシの反応があって銀貨や何かを見つけることが出来た。

だけど 中には蜜が飲めそうな花や木の樹液のお宝に案内されることがあって

お宝の基準は人間のものだけじゃないようだ。

「オーレンス お宝でチュよ」

ああ これガマの穂じゃないか?


子供の頃に集めたわ。確かにこれもお宝だな。バラしたら綿毛みたいになるんだよ。

「オーレンチュ。 持っていくでチュよ」

と言われたのでサブロウに放り込もうとしたら「アイテムはドームに入れるでチュよ」と言われた。

ドームはアイテム収納ができるのか?

ガマの穂をドームに入れると ガマの穂は小さく縮小されていき、

ログハウスの前に置かれるようだった。


ドームといい、ニーマンの便利な能力はこれからの旅に役立つものばかりだった。

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