9 話聞いてなかった時に急に話振られると、つい「俺もそう思ってた」とか言っちゃう。
『イカイノコヨ ナゼ‥』ーーー。
俺が真っ黒な少年を見つめていると、ふと、扉の外から骸骨さんの声がして、俺はハッと今の現状を思い出す。骸骨さん!生きてたのか!?よかった〜!
少年から視線を外し、スクリーンを確認する。スクリーンには焼け跡がなくなった俺と骸骨さんしか映っていない。途中から見てなかったから状況は詳しく分からないけれど、あいつらファンタジーズは退散したようだ。
あの能力‥この子が、やったんだよな?恐る恐る少年に視線を戻し、真っ黒な顔で俺を見てニコニコしてる彼に苦笑いを浮かべる。はは、幼き俺?、かは分かんねえけど、少しは役に立ったなら、いっか‥。
『ナゼ タスケタ‥?』ーー。
骸骨さんが絞り出したような声でそう俺に問いかけてくる。
ええ!?それ聞いちゃう?恥ずいんだけど〜‥んー、えっとねー‥骸骨さんさ、俺のこと‥助けてくれただろ?すげえ‥嬉しかったんだ。本当にそれだけ。だけど、それだけが救いだった。この世界はさ、結構厳しいから。
『ナゼ‥ナゼ‥』ーー。
骸骨さんが苦痛の声をあげる。俺は頭に疑問マークを浮かべた。俺の声、聞こえてる?ん?あれ、俺もしかして声出てない?おーいおーい!あれ?まて、体が動かねえ?瞬きすら‥どうなってんだ?
途端、落書きだらけの部屋がぼやけて、小さな俺が、俺の背後を指刺した。
俺は彼が刺すその方向へと振り返る。
ーーいつでも呼んでね。
最後に聞こえたのは、そんな少年の言葉だった。
◇
刹那、ハッと意識が覚醒して視界が開ける。見えた曇り空と、骸骨さんに俺は困惑した。
あれ、なに?どうなってんの?さっきのは!?夢?だったのか‥?六つのドアと落書きだらけの部屋。幼い俺が笑っててそれで‥。
ヒュー、ヒューと、聞こえる自分の息だけ。体の感覚がなくて、指ひとつ動かすことができない。顔の神経も言うことを聞かないから、喋ることも瞬きすら難しい。これは、スクリーンの中の‥俺か?なら、戻ってきた‥?
俺は状況を整理できずに、ただ目の前の骸骨さんを見つめることしか出来ない。
『ふむ。これはよくないな、そう思わぬか異界より招かれざる魔の王よ』
『オマエ‥イヤ、アナタワ』
ふと、骸骨さんの反対側から声がして、また誰かが来たのかと身構える。まあ体は動かないんだけども。
『傍観するのも大変なのだぞ?我が直接始末できたらいいものを‥異界の者を他世界の神が干渉してはいけないだと?嫌なルールだとは思わないか?例えば、1人の人間に肩入れし、富と栄光を与えたいがために異界への侵入、異界人の殺戮を手助けする馬鹿な奴が現れた際はどう責任を取ってくれるのやらッ』
『イイノカ‥?』
何の話をしているのか全く理解できないし、その人がどんな姿をしているのかさえ分からない。でも、骸骨さんと話しているところを聞くに、敵ではないようだ。俺はホッとして大人しく待つことに専念した。大人の話に割り込んだらいけない。魔王?が敬語を使うなんて、それ相応の人物なのだろう。
あぁ、なんだろ。気が抜けたからなのか、何だか寒いし‥眠い、や。
『時間がない。どうせ、コレはもうじき死ぬ。だが、我は今からコレを助けようと思うておる。』
『ナッ』
『コレには才能がある。才能といっても表ではない、裏の才能だ。普段なら絶対に開花しないはずだった。だが、世界の理が貴様ら異界人に侵された今、閉ざされていた扉の鍵を強制的に解除したまでよ。この世界の生きる者は全て変化するだろう。いや‥もともとあったものを、使うだけさ。我は何も禁忌は破っておらぬぞ。神は神らしく手助けをしたまでだ。たとえ、それが原因でこの世界の‥主に人の世のヒエラルキーが変わろうと、この世界はもともと弱肉強食よ。時代は変わる。それが道理だ。いい考えだろう?異界の王よ。』
『‥‥ヨワキモノモ タスケアワネバ ナラヌ。アナタノ ソレガ タダシイノカ ハンダンデキナイ』
『ふん、つまらんな。ともかく、そやつにはお前を受け入れる空きが無い。そこらの裏の才能にすら捨てられた運のないガキ共の1人にでも憑依しろ。そしてお前はあのダ神を、管理人のひとりとして止められなかった責任を取るんだ。必ずあの忌々しいダ神と異界人共々を始末しろ。我の世界を困惑させた愚かな異界の神め。特定の人間に肩入れし、禁忌まで犯すとはな。コレは使える。神の使いとして、生かしておいてやるから、コレを使い、必ずや‥分かったな?』
『アア‥ショウチシタ』
『おい、人間。話は聞こえていただろう?そういうことだ。必ず、奴らをーーこれはこの世界の神である我が贈る、お前への使命であり神託だ。必ずやーーー。』
睡魔に襲われ、ぼーっとしてた俺。急に視界に光り輝く人物が出現して、ひゅっと息を吹く。びっくりしたじゃん‥なによもう‥。
つか‥超絶美人だ‥キラキラした白髪。澄んだ青色の瞳‥神々しい‥なんなんだこの美女‥いや、まて‥男か‥?中性的で分からん。なんだかまるで‥神話に出てくる‥
「‥かみ、さ、ま‥?」
みたいな。
俺は目を見開く。口が動く。喋れる。彼?いや、彼女?に見つめられた途端、身体から溢れ出す生命力。いやこれ、たぶん、本物の神様だーー。思わず頭を下げたくなるオーラ。この人に反してはいけないと、俺の本能がそう告げる。
『ふん‥言った通りにしっかり働けよ小僧。いや‥そうだな。望み通り、全てを他人になすりつけ捨ててやればいいさ‥根岸 環よーーー。』
「へ‥?」
神様が俺に何か言ってる。頼んだぞ、と言うように、骸骨さんが俺に向かって頷いた。
やべえ‥どうしよ。
話、全然聞いてなかったーー。
その言葉を最後に、
俺の意識は、途絶えたのだったーーー。
‥‥
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